離婚

「長男の嫁だから」「キミの実家でしょ?」50代が“墓じまい”で熟年離婚の危機に直面する理由

50代で直面する墓じまいは、夫婦間の不満や老後の価値観のズレを浮き彫りにさせます。相談実績4万件の離婚カウンセラーが、熟年離婚の危機に陥った3つの事例をもとに、夫婦の対話法を解説します。(※画像:Shutterstock.com)

岡野 あつこ

岡野 あつこ

離婚 ガイド

夫婦問題を解決に導くライフアップカウンセラーのパイオニア。特に離婚問題においては28年間で35,000件以上の相談を手がけ、どうしたら幸せになれるか親身にアドバイス。的確で歯切れのよいコメントは、テレビ番組・ラジオ・講演などでも、多くの人の共感を得ている。元祖・離婚カウンセラー養成講座を開講中。

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墓じまいは熟年夫婦にとってセンシティブな話題の1つ(※画像:Shutterstock.com)
墓じまいは熟年夫婦にとってセンシティブな話題の1つ(※画像:Shutterstock.com)

「まさか、お墓のことで離婚話になるなんて思いもしませんでした……」夫婦問題の相談を受けているなかで、そんな声を聞くことが増えてきました。

お彼岸やシルバーウイークに実家へ帰省し、久しぶりに両親やきょうだいが集まる機会。そこで突如として持ち上がるのが、「ところでこの先、お墓どうする?」という話です。

夫の両親、自分の両親、そして自分たち夫婦……。50代になると、これまで親任せだった「家のお墓」が、急に自分たちの問題としてのしかかってきます。

実は、ここで揉めているのはお墓そのものだけではありません。長年夫婦の間に眠っていた家族観、役割意識、老後への考え方のズレが「墓じまい」をきっかけに一気に噴き出すのです。そこで今回は、熟年離婚寸前までいった3組のケースをご紹介します。

目次

事例1.「長男の嫁なんだから」で30年分の不満が爆発

56歳のA子さんは、夫の実家へ帰省した際、義両親から「そろそろお墓のこともお願いね」と頼まれたといいます。

戸惑うA子さんに対し、夫は「俺は長男だし、おまえも分かっていたことだろ? ちゃんとやってくれよな」としれっと言い放ちました。その瞬間、A子さんの中で何かが切れました。「どうして私まで、当然のように背負わなきゃいけないの?」と。

お墓のことだけではありません。義父母の世話、親戚付き合い、法事……。「長男の嫁だから」と引き受けてきた30年分の不満が一気にあふれ出し、「だったら離婚したい」とまで思ったといいます。

【アドバイス】「墓じまい」の前に夫婦で話し合う

まずは「長男だから」「嫁だから」ではなく、これから誰が、何を、どこまで担えるのかを夫婦で話し合う必要があります。

そもそも親世代の常識と、自分たち夫婦の常識は違って当然。「墓じまいをどうする?」の前に、「私たちは老後、どんな家族でいたい?」という問いから話し合うことで、「だったらどうするのが一番いい方法か?」を探るヒントが見えてくるでしょう。

事例2.「キミの実家のことでしょ?」に絶望する妻

53歳のB美さんが悩んでいたのは、自分の実家のお墓でした。父親はすでに他界し、高齢の母もお墓参りが難しくなっている現状でした。B美さんは夫に「将来、墓じまいも考えないとね」と相談しました。

ところが夫から返ってきたのは、「それはキミの実家の話でしょ? 僕が口出すべきじゃないから」という冷たいひと言だったのです。夫からの言葉にB美さんは愕然としたといいます。

「義両親のことで困ったことがあった時は、私もそれなりに協力してきたはず。それなのに、私の親のことは“キミの問題”で放置されるのは心外です。こんな思いやりのない夫と老後を助け合っていける気がしません」と、夫婦関係そのものに疑問を持つようになったのでした。

【アドバイス】夫の親と妻の親を分けて考えない

大切なのは、「夫の親」「妻の親」と完全に分けて考えないこと。まずは、それを夫に理解してもらえるよう話し合いを進めます。

例えば、「あなたのご両親は、私にとっても大切な親だと思っているわ」「この前、私がご両親にして差し上げたのも、あなたと同じようにご両親を大事に思っているからよ」というように、具体的に言葉にして伝え、「だから、あなたも私の親のことを自分ごととしてとらえてほしい」ということに気付いてもらいましょう。

「それはあなたの問題」ではなく、「自分にできることは何だろう?」と考える。この姿勢があるかどうかで、夫婦が互いに感じる孤独は大きく違ってくるのです。

事例3.「子どもに迷惑をかけたくない」は同じなのに大げんか

58歳のC代さん夫婦は、2人とも「子どもにはお墓のことで迷惑をかけたくない」という考えだったといいます。だったら話は簡単……と思いきや、実はそうではありませんでした。

妻は「自分たちが元気な今、墓じまいをして整理しておきたい」。一方、夫は「先祖代々のお墓を今すぐなくすなんてできない。せめて両親が亡くなった後にしたい」。そんなふうに意見が違ったのです。

妻が「あなたは古い」と言えば、夫は「先祖を大事にしないのか」と反発。いつしかお墓の話を超え、「昔からあなたは私の話を聞かない」「おまえこそ勝手だ」と夫婦喧嘩になってしまい、離婚の危機にまで発展してしまいました。

【アドバイス】夫婦関係を修復する話し方を心掛けて

こんな時は、「墓じまいをするかしないか」という結論から話さないことです。まずは、「なぜ、そうしたいの?」を互いに冷静に話し合いましょう。

例えばこの事例では、夫は「先祖を大切にしたい」という思い、妻には「子どもを困らせたくない」という思いがあり、それぞれ最優先としていることが異なるのだと気付けるはずです。だとしたら、夫婦は敵同士ではなく、「だからこそ、自分たち夫婦でどうすべきか?」という同じ目標に向かっていることが分かるでしょう。いつ、どんな方法で墓じまいをするかを決めるのは、その後じっくり話し合っても遅くはないのです。

お墓の話は「これからの夫婦関係」を話し合うチャンス

墓じまいには、誰にでも当てはまる正解はありません。だからこそ、お墓の話が出た時に、夫婦でこんなことを話してほしいと思います。

  • 「私たちは、これから何を大切にして生きたい?」
  • 「親たちに、どこまでしてあげたい?」
  • 「子どもには何を残し、何を残したくない?」

そして、「これから夫婦で何を背負い、何を手放していこうか?」についても考えてみることをおすすめします。

お墓について意見が違ったからといって、「夫婦としてやっていけない」と決めつける必要はありません。50代になれば、親の介護、お墓、自分たちの老後など、若い頃にはなかった問題が次々に出てきます。

そのたびに大切なのは、夫と妻のどちらが正しいかを決めることではなく、「あなたはそう考えていたんだね」と、互いの人生観を改めて知ること。墓じまいをきっかけに夫婦喧嘩になってしまったとしても、それは必ずしも夫婦の終わりのサインではありません。むしろ、これからの人生を夫婦としてどう生きるのかを話すいい機会にしてみませんか?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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