生命保険にも「金利」がある
生命保険には「予定利率」というものがあります。保険会社は契約者から受け取った保険料の一部を運用します。その際、「これくらいの利回りで運用できるだろう」とあらかじめ見込む利率の1つが予定利率です。

一般に予定利率が高くなれば、同じ保障を得るために必要な保険料を抑えられたり、貯蓄性のある保険では受け取れる金額が増えたりする方向に働きます。実際、金利上昇を受けて生命保険の予定利率も上がっています。
例えば、日本生命は2025年9月、一時払終身保険の予定利率を年1%から年1.5%へ引き上げました。
死亡保険金500万円の場合、60歳男性の一時払保険料は427万7200円から384万4250円へ、約43万円安くなりました。60歳女性では412万2550円から362万3200円へ、約50万円安くなっています。
同じ500万円の死亡保障を用意するために必要なお金が少なくなったわけです。
さらに2026年7月には、住友生命が一時払終身保険の予定利率を年1.75%から年2.25%へ引き上げています。
このように、金利上昇は生命保険にも波及しています。ただし、予定利率は商品によってかなり違います。
予定利率が3%を超える保険も登場
明治安田生命では、円貨建ての一時払養老保険について、2026年9月16~30日の予定利率を7年で年3.12%、10年で年3.45%、15年で年3.4%としています。
ここで興味深いのは、期間が長くなるほど予定利率が高くなるとは限らないことです。この例では15年の年3.4%より、10年の年3.45%の方が高くなっています。
また、同じ明治安田生命でも、一時払終身保険と一時払養老保険では予定利率が異なります。
つまり「予定利率3%の商品がある」という数字だけを見るのではなく、まず、どのような保険なのかを確認する必要があります。
「3%を超えるなら、定期預金よりかなり有利なのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、ここにも注意が必要です。
「予定利率3%=預金金利3%」ではない
生命保険の「予定利率」と銀行の「預金金利」は、同じものではありません。例えば、100万円を年3%の定期預金に1年間預ければ、税引前の利息は単純計算で3万円です。
一方、予定利率3%の生命保険に100万円を支払ったからといって、1年後に103万円になるわけではありません。
保険会社は、契約初期費用や保険契約関係費用などを差し引いたうえで積立金を計算します。明治安田生命も、一時払保険料や積立金が予定利率でそのまま複利運用されるものではないと説明しています。
予定利率3.3%でも、実際の利回りは約2.9%の例も
この違いを数字で見てみましょう。明治安田生命が2026年8月に公表した一時払養老保険の例では、予定利率が年3.3%の場合、10年後の満期保険金の受取率が133.2%となるケースがあります。
例えば男性50歳、女性60歳などの例です。仮に100万円を支払ったとすれば、10年後に受け取る満期保険金は約133万2000円というイメージです。これを10年間の複利利回りに換算すると、年約2.9%になります。
つまり、予定利率が3.3%だからといって、支払った100万円そのものが毎年3.3%で増えていくわけではありません。受取率は年齢や性別などによっても異なります。
私は、ジャンルが異なる金融商品を確認する際、「○%」という数字だけを比べないようにしています。預金なら預金金利を見る。一方、保険なら予定利率だけではなく、実際にいくら支払い、最終的にいくら受け取れるのかを見る必要があります。
「普通預金は0.5%、保険は3%だから、保険の方が6倍お得」といった比べ方はできないのです。
途中で解約すると元本を下回ることも
もう1つ、預金との大きな違いは途中で解約した場合です。生命保険は途中で解約すると、解約返戻金が支払った保険料を下回ることがあります。
さらに、市場金利の変動を解約返戻金などに反映する「市場価格調整」がある商品では、契約後に市場金利が上昇すると、途中で解約した際の受取額が減る場合があります。
例えば、「金利3%台」という数字だけを見て預金の代わりに加入し、数年後にお金が必要になって解約すると、想定していた金額を受け取れない可能性があります。
長期間使わないお金なのか、途中で必要になる可能性があるお金なのか。ここは加入前に確認しておきたいところです。
昔の保険を解約して入り直した方がいい?
新しい保険の予定利率が上がってくると、「昔入った保険を解約して、新しい保険に入り直した方がいいのでは?」と思う人もいるでしょう。
しかし、これは慎重に考える必要があります。
生命保険の予定利率は基本的に契約時に決まり、その後、市場金利が動いたからといって同じ契約の予定利率が次々に変わるものではありません。
過去には現在より予定利率が高かった時代もあります。そうした時期に契約した貯蓄性のある保険は、いまでも有利な条件が残っている場合があります。一度解約してしまえば、その条件には戻せません。
また、新しい保険に入り直す場合は現在の年齢で保険料が計算され、健康状態によっては加入できない可能性もあります。
「新しい保険の予定利率が上がった」という理由だけで、現在の保険を解約するのは避けた方がいいでしょう。
保障を減らしたいのであれば、契約内容によっては全部を解約するのではなく、「減額」や「払済保険への変更」といった方法を選べる場合もあります。まずは、現在の契約の予定利率、解約返戻金、将来受け取れる保険金や満期金を確認することが先です。
金利上昇で「新しく入る保険」の条件も変わる
日銀の利上げというと、預金金利や住宅ローン金利に目が向きがちです。しかし、金利上昇によって生命保険の条件も変わっています。
特に、一時払終身保険や一時払養老保険など、貯蓄性のある商品では予定利率が上昇しています。
ただし、「予定利率が高い=必ず有利」とは限りません。
途中で解約したらいくら戻るのか、満期まで持てばいくら受け取れるのか、死亡保障はいくらなのか。さらに、預金利息とは税金の扱いも異なります。
生命保険の満期保険金や解約返戻金にかかる税金は、契約者と受取人の関係などによって変わるため、単純に預金の税引後利息と比較することもできません。
金利のある時代には、生命保険でも「○%」という数字を見る機会が増えてきます。だからこそ、予定利率だけで判断せず、「いくら支払い、いつ、いくら受け取れるのか」まで確認することが大切です。
※日本生命の一時払終身保険の予定利率・保険料は2025年9月1日改定時点、住友生命の一時払終身保険の予定利率は2026年7月改定時点、明治安田生命の一時払養老保険の予定利率は2026年9月16~30日の適用利率を参照。予定利率や受取額などは商品、契約時期、契約年齢、性別などによって異なります。







