お金の悩みを解決!マネープランクリニック

55歳、1人暮らしの会社員女性、貯蓄3900万円。職場でパワハラに遭い早期退職を希望しています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は55歳、女性会社員の方です。職場でパワハラに遭い、早期退職を考えています。ただし、住まいが社宅のため、退職後にマンション購入を検討中。それを実現するために、早期退職は可能か。退職後、どの程度の収入を得ればいいのか。あるいは購入ではなく賃貸を選ぶべきか……。ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします。※サムネイル画像:PIXTA

あるじゃん 編集部

あるじゃん 編集部

1995年に創刊し、2012年に休刊した月刊の投資情報誌『あるじゃん』をルーツに持ち、ファイナンシャルプランナー、税理士、社会保険労務士などマネーの専門家とともに、お金の貯め方・備え方・増やし方をわかりやすく解説するほか、マネー最新トピックス、おトク・節約コラムなど、役立つ情報を発信しています。

...続きを読む

退職後にマンション購入、どうすればいいか……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は55歳、女性会社員の方です。職場でパワハラに遭い、早期退職を考えています。ただし、住まいが社宅のため、退職後にマンション購入を検討中。それを実現するために、早期退職は可能か。退職後、どの程度の収入を得ればいいのか。あるいは購入ではなく賃貸を選ぶべきか……。ファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんがアドバイスします。

退職後、どの程度の収入を得ればいい?(画像:PIXTA)
退職後、どの程度の収入を得ればいい?(画像:PIXTA)

■相談者
結城愛永さん(仮名)
女性/会社員/55歳
関東/賃貸住宅

■家族構成
1人暮らし

■相談内容
専門職として勤務しています。今の会社は一部上場で休みも取りやすく、福利厚生も充実しており、残業も少なめ。有休も取りやすく、リモートワークもでき、大変恵まれた環境です。また、60歳が定年ですが、以降は嘱託で最大65歳まで勤務が可能です。

なので、できれば退職したくはないのですが、不幸にもこの1年間上司のパワハラに遭っていて(朝起きられないなどの身体症状が出始めています)、また過去に大病を患い大手術を受けたこともあり、可能なら60歳を迎える前にセミリタイアしたいと考えています。

いつごろ実現可能か? そしてセミリタイアの場合、年収ベースでいくら稼げばリスクを少なくできるでしょうか? 当方、資格を持っているので、健康でさえいれば15万~20万円程度の収入は確保できると思います。

趣味や旅行にかなりお金を使っているので、家計をスリムにする必要があると思います。その周辺のアドバイスもいただきたいです。そして今は家賃補助もあり、家賃も安くすんでいます。セミリタイア後はどれくらいの予算で住まいを購入できますでしょうか? または賃貸でいくのも1つの手でしょうか?

■家計収支データ
「結城愛永」さんの家計収支データは図表のとおりです。

相談者「結城愛永」さんの家計収支データ
相談者「結城愛永」さんの家計収支データ

■家計収支データ補足
(1)教育費・趣味娯楽費・小遣いの内訳
・教育費・計5万2000円=Web英会話(1万7000円)、不動産投資コンサルの受講費(3万円)
・趣味娯楽費・計17万円=テニススクール・スポーツクラブ月会費(10万円)、国内旅行・帰省(7万円)
・小遣い・2万円=美容院・エステ・化粧品など

(2)不動産投資について
所有する不動産はテラスハウス3件、戸建て3件。賃貸による現在の利回りで売却した場合の金額を評価額とした。購入は全て現金。投資は2年前から開始。また、家賃収入(月17万5000円)は、税、諸経費を差し引いた利益額。

(3)退職とセミリタイアについて
希望する退職時期は3年後。退職金は支給がないか、あっても100万円程度。退職後、別の勤務先で仕事に就く予定。生活費は家賃収入と足りない分は貯蓄を切り崩す形でカバーできることが基本に、退職後の働き方としては正社員やフルタイムは希望せず、非正規雇用で、フルリモートが可能なら65歳まで働けるのではと考えている。

(4)ボーナスの使いみちについて
旅行/120万円程度、残りは特に支出がなければ貯蓄。

(5)自動車の買い替え
5年以内を予定。おそらく最後の買い替え。過去に購入したことがないため、本当にほしいと思う自動車を新車で購入したい(母親に言われ、軽自動車は候補から外れる)。予算は不確定。

(6)退職後の住宅について
賃貸ではなく、購入が希望だが、遺す家族もいないため迷っている。購入はマンションで新築にはこだわらない。場所は関東圏。床面積は50㎡以上で、駅近の都心部、駐車場が確保できる物件が希望。

(7)公的年金(老齢年金)について
年額233万円(直近の「ねんきん定期便」より)。

(8)セミリタイア後の生活費について
「家計をスリムに」のために、まずは現在の旅行費用を工夫しながら半減を目指す予定。また、食費に関しては時間ができ自炊ができるため、削減が可能。教育費も今より抑えることができそう。

(9)相続について
すでに税理士に依頼し、相続税も確認(無税)している。父親と祖母からの相続額は合計で約4800万円(祖母からは800万円)。法定相続人は3名。相続に関しては現在、他の相続人と係争中だが、本人は同額から大きく減額されることはないと想定している。

(10)家計収支データ以外の予想される金融資産
企業年金(総額)950万円、他に確定拠出年金あり。父親と祖母からの相続額は合計で約4800万円(祖母からは800万円)。他に投資を目的とした不動産の評価額は3230万円。

■FP井戸美枝からの3つのアドバイス
アドバイス1:賃貸と購入で、必要な老後資金が変わる
アドバイス2:計算上は賃貸もマンション購入も可能
アドバイス3:リスク対策には、家計の見直しがもっとも効果的

アドバイス1:賃貸と購入で、必要な老後資金が変わる

ご質問は「退職し、セミリタイアする場合の実現可能な時期は?」とのこと。

そこでまずは、ご相談者である結城さんの希望も踏まえ、「退職時期はちょうど3年後」「セミリタイア(別の勤務先で働く)の時期は退職後~65歳になるまで」「65歳以降はフルリタイア」の3つを、試算をする上での設定条件とします。

最初に、退職までの3年間の収支ですが、それが今と変わらないとすれば、毎月およそ18万円の黒字。データでは、これを不動産投資に回しているとのことですが、便宜上、他の投資商品と同様、評価額の増減は考慮しません。これにボーナスから貯蓄に回す額を年間で約50万円として、3年間で計800万円。

さらに、保有する投資商品、想定される相続分、企業年金の総額を前倒しで加算して、計9650万円(内訳:貯蓄1000万円+投資2900万円+相続4800万円+企業年金950万円。退職金額、確定拠出年金の年金額は不明のため加算せず)。これに先の増加分を加えると、1億450万円。

また、予定している自動車の買い替えですが、「好みのクルマを新車購入」と言われているので、予算500万円前後としてみました。このコストを差し引いておよそ1億円。これが退職時、58歳のときの保有資産となります。

次に、ここから公的年金を受給する65歳になるまでの、7年間のキャッシュフローを見てみます。しかし、退職と同時に借上社宅から引っ越し、賃貸住宅に住むか、それともマンションを購入するかで、その後の試算の中身は大きく変わります。

したがって、65歳以降からの、必要な老後資金の額を先に割り出し、それを準備できるかをケース別に考えてみます。

65歳から受け取る公的年金は、手取りで17万円ほど。試算をしやすくするために、所有する不動産は65歳の時点で売却し(税金は考慮せず)、確実な収入は年金だけとします。対して、かかる生活費ですが、住宅コストは除いても、それ以外の支出を現状のまま、30年間(95歳まで)継続すると、必要な老後資金は2億円近く。さすがに無理があります。

そこで、マンション所有の場合の、老後の生活費を思いきって切り詰め、月割りで25万円、赤字は毎月8万円とします。すると、30年間で必要な老後資金は2900万円。さらに余裕を見て3400万円。

ただ、現時点では、1人暮らしの平均老後生活費はもっと低いはず。しかし、将来の物価上昇、想定外の支出、さらに長生きリスクを考慮して、この金額を結城さんに必要な老後資金額の目安としました。

賃貸の場合は、65歳以降も家賃が発生します。この額が月15万円(詳しくは後述)で、他の支出が上記と同額なら、毎月の赤字額は18万円となり、必要な老後資金は6500万円+余裕資金=7000万円となります。

アドバイス2:計算上は賃貸もマンション購入も可能

では、上記の老後資金を準備するために、どう対処すべきでしょうか。

まず、65歳までの再就職による収入ですが、15万~20万円の収入は見込めるとのことですから、中間の17万5000円。加えて、不動産所得も同期間、継続されるとして、65歳になるまでに合わせて月35万円の手取り収入が得られる。これを前提として考えてみます。

賃貸住宅を選択したケースは、1人暮らしですが利便のよい物件、駐車場も別途発生しますので、現時点でお住まいの地域でかかるコストは、抑えても月15万円程度になるのでは。その他の支出内容(ボーナスからの支出も含む)が今と変わらないなら、平均でかかる生活費は年間850万円ほど。これを収入から差し引けば、7年間(退職時から65歳になるまで)で約3000万円を資産から取り崩します。

一方、保有する不動産を65歳のとき売却するとします。評価額が今と変わらないなら、3230万円を得られ、準備できる老後資金は計1億200万円。目安の7000万円を大きく上回ります。

次に、マンション購入のケースですが、退職と同時に購入したとします。

結城さんの希望条件は、広さは50㎡以上、駅近の都市部、駐車場が確保できるマンション。また、中古でも可ということですが、ご年齢を考えて、中古なら築年数10年以内とします。

その場合、あくまで現在の平均価格ですが、現時点でお住まいの地域では、中古物件でも高騰しているため6000万~7000万円、新築では8000万円から。東京23区内で利便性がよければ、床面積が50㎡台で、中古でも1億円超は珍しくありません。

ローンは組まず、現金購入を基本とします。退職後の収支が先の試算どおりなら、物件価格+諸経費の上限を6500万円まで下げるとランニングコストを考慮しても、老後資金4600万円と、目安を1200万円上回る額が準備できます。

アドバイス3:リスク対策には、家計の見直しがもっとも効果的

上記の試算結果を見れば、賃貸、購入ともにほぼ希望条件を満たしても、老後資金は準備できると判断できます。しかし、ここには無視できないリスクもいくつか含まれています。

賃貸、購入の共通リスクは、退職後の再就職の収入です。試算では手取り17万5000円としました。実際に働かれて、この額を超えることもありますが、下がる可能性もあるはず。希望される職場環境(フルリモートを希望)を得られるかどうか。また、以前に大病されたこと、パワハラで体調を崩したことを考えれば、65歳まで前向きに働けるかどうかも未定です。

それ以上に不安を感じるのが、不動産所得です。結城さんも十分理解されているでしょうが、空室が増えたり、修繕などの管理費用が上がったりすると、当然収入は減ります。

また、6物件を保有していますが、利益が限定的。評価額も低いと感じます。大きく投資をせず「まずは経験」で始めたかもしれませんが、それは同時に、価値の低い不動産を抱えているとも言えます。

さらに、不動産投資コンサルタントの受講料に月3万を負担し、収支の黒字分を全額、不動産投資に回している点も気になります。勉強の必要性も分かります。それでも将来の収入を、不動産投資に依存し過ぎています。

個人的には、勉強も含め不動産投資に距離を置くことが賢明と考えます。現在、すでに不動産投資により一定のリスクは抱えていると認識しましょう。

では、どんなリスクか。極端な例かもしれませんが、退職後の収入が月35万円から半減。同時に、保有する不動産の売却額も想定の半分になるとします。賃貸住宅の場合は、まだ120万円ほど老後資金の目安を上回りますが、マンション購入なら目安額を1900万円下回ります。

リスク対策として、収入アップがあります。退職は早めではなく定年まで勤める。さらに退職後、想定より高い収入を得る。しかし、これを実現するには体力的、精神的に無理があります。

それよりも、現在の評価額ですぐに不動産を売却するのが現実的です。65歳までの家賃収入が下がらないとしても1470万円。売却した方が1760万円利益を押し上げ、不動産収入のリスクもなくなります。

合わせて実践したいのが、支出の見直しです。もっとも有効で、今すぐできる対策だからです。

結城さんも「スリム化が必要」と言われ、旅行支出の半減を目指すとあります。現在、年間200万円(月7万円、ボーナスから120万円)ですから、100万円に減額。教育費も削減できそうとありますので、できれば不動産投資の受講をやめて月3万円減。さらに食生活も自炊回数を増やせるとのこと。思い切り半分に抑えられると月5万円削減。これで計200万円が年間で削減できます。

この削減を今から行えば(食費削減は58歳から)、65歳までに老後資金は1800万円上乗せできます。これで、ハードルが高かったマンション購入の可能性も見えてくるでしょう。

ネガティブなアドバイスばかりと感じるかもしれません。しかし、大事にすべきはあくまで、結城さんらしく、楽しい日々を過ごすことです。それを犠牲にしてまで、ずっと節約に励む必要はありません。だからこそ、高い運用リスクは抱えず、支出に優先順位をつけて、今から家計を見直す。それにより、望む時期のセミリタイアも、無理のない老後も実現すると、私は思います。

相談者「結城愛永」さんから寄せられた感想

数年前からずっとご相談したいと願っておりましたので、このたびご回答をいただけて感無量です。

診断にて「3年後のセミリタイアは射程圏内」とお示しいただき、これまでの頑張りが多少報われたという思いです。もちろん家族からの遺産に助けられる面は大きいですが、大きな自信につながりました。また、アドバイスにもありました「年俸が維持される60歳まで勤務を続ける」という選択肢についても、改めて前向きに再考してみようと思います。

さらに、入会している不動産有料サークルの会費を見直して支出を削減し、所有物件についても少しずつ売却を視野に入れた整理を考えていきたいと思います。親身かつ大変丁寧にご助言をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

※マネープランクリニックで相談したい方はこちらのリンクからご応募ください(相談はすべて無料になります)。

※あるじゃん編集部では「貯蓄達人」からのメッセージも募集中です。

教えてくれたのは……
井戸美枝さん

井戸美枝さん

シニアライフ研究家、CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会 企業年金・個人年金部会委員歴任。国民年金基金連合会理事。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。『知らないと増えない、もらえない妻のお金新ルール』(講談社)『ゼロ活 お金を使い切り、豊かに生きる!』(扶桑社)『私の老後のお金大全』(日経BP社)など累計刊行96万部。最新の書籍『図解でわかる 定年前後にやるべきこと大全』(エクスナレッジ)も好評発売中。YouTubeチャンネル『All About マネー【プロと学ぶお金のキホン】』においても、シニアライフの知恵を動画内で解説。最新動画『【年金繰上げ繰下げどっちがおトク?】今さら聞けない家計のギモンにお答えします!』を発信中!

取材・文/清水京武

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や投資行動を推奨するものではありません。
投資や資産運用に関する最終的なご判断はご自身の責任において行ってください。
掲載情報の正確性・完全性については十分に配慮しておりますが、その内容を保証するものではなく、これに基づく損失・損害などについて当社は一切の責任を負いません。
最新の情報や詳細については、必ず各金融機関やサービス提供者の公式情報をご確認ください。
【編集部からのお知らせ】
・「家計」について、アンケート(2026/9/30まで)を実施中です!

※抽選で20名にAmazonギフト券1000円分プレゼント
※謝礼付きの限定アンケートやモニター企画に参加が可能になります

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます