
「トロフィーワイフ」という言葉がある。社会的に成功した男性が、その地位に見合うような、あるいは地位や経済力を自慢するために結婚する女性のことだ。一般的には、トロフィーワイフに必要なのは若さと美貌だけなので、そういう男性は軽蔑ややゆを込めて見られることが多い。
ただ、中にはまじめに「僕は次のステージに上がった。だからパートナーも替える必要があった」と語る男性もいる。
自分の努力で這い上がった
「母一人子一人で育ったんです。子どものころはおやつ1つなかった。友達の家に行くとおやつをもらえる。でもうちには呼べない。だんだんと友達との関係もおかしくなっていった。そんなこともありました」
ダイスケさん(46歳)はそう言う。母はパートを掛け持ちして必死に働いていたが、食べるのがやっとの状態だった。
「のちに母は既婚男性と恋愛して自分の意志で僕を生み、その男からあっさり捨てられたと知りました。抗議1つせず姿を消した母に潔さを感じる一方で、そのせいで自分が苦労させられているのが悔しくもあった」
こうなったら自分ががんばるしかない。彼はそう思った。勉強して金持ちになる。そう考えたのは彼の生来のきまじめさだったのだろう。「今みたいにYouTuberになろうというような発想はなかった」と彼自身も笑う。
必死に勉強し、奨学金をもらいながら国立大学へ。当時人気のあった有名企業に入社、そこでも頭角を現した。人に嫌われないよう、いつも穏やかでいることを自分に課したが、周りの社員の「頭の悪さ」にイライラすることもあったという。
「奥さん、きれいですね」と言われたい
「要領が悪い、無駄が多い。それを見ていられなくて。そんな僕に『人にはそれぞれ能力がある』と教えてくれたのが2年先輩の女性でした」
27歳のとき、その先輩女性と結婚した。同じ職場で働くのは嫌だったから、彼女には退職してもらった。双子が生まれて家庭はうまくいっていたのだが、その後、彼は一人で海外駐在へ。3年後、33歳のときに帰国すると社内での評価はますます上がり、部署を代表して他社との仕事を任されるようになった。それと同時に、妻とはギクシャクしていく。
「外資系企業とのやりとりも増え、時々パーティーなどに夫婦で出席する機会があったんです。でも妻の容姿がちょっと……。やっぱり『奥さん、きれいですね』と言われたいし、妻自身もそういう華やかな場が好きなタイプではなかった」
妻とは、35歳のときに離婚した。
美人でバイリンガルの妻だったけど
37歳のときに「美人で華やかな帰国子女」である3歳年下の女性と結婚した。どこへ出しても恥ずかしくない。社交的で、彼女がいると場に花が咲いたようになった。
「そのころ、勤務先に許可を得て、仲間と別会社を作ったんです。勤務先がとりこぼすような仕事を請け負っていた。独立したいわけではなく、自分自身の仕事を完璧にするための会社です。滑り出しから案外うまくいって、収入が格段に増えました」
ダイスケさん自身は、「子どものころの質素な生活が身についていた」ためか、それほどぜいたくはしなかった。母に小さなマンションを買い、生活の面倒をみた。
妻には「ここから貯金もして」と生活費も十分に渡していたのだが、妻は足りないと毎月文句を言った。
「妻は家事をいっさいしなかった。なんだかこの生活はおかしいなと思うようになりました」
結婚生活は2年ももたなかった。自分は何を求めているのか、自分にふさわしい女性を見つけたいと焦燥感が募った。家事一切をやってくれて、見目麗しい才女。今の自分と釣り合いがとれる女性はいないかとひそかに探し続けた。一方で自分自身も「老ける」わけにはいかないとジムで体を鍛え続けた。
「自分にふさわしいパートナー」を求めて
「40歳のとき知人が紹介してくれたのが15歳年下の女性でした。貿易関係の仕事をしており、3カ国語を操るきれいな人です。上昇志向も強くて、いつかは自分の会社をもちたいと願っていた。しかも趣味が料理だという。彼女も僕に興味をもってくれて付き合うようになりました」
会社を作るなら投資するよとささやき、結婚にこぎつけた。ところが結婚したら、やはり「自分を最優先してほしい」と思うようになる。そのことで3度目の妻とは何度もケンカになった。
「あるとき一緒にパーティーに出席したあと、彼女が『私はあなたのトロフィーワイフなの?』と言いだした。誰かに言われたようです。『あなたが妻の自立を手助けするはずがないって言ってる人もいた』と。トロフィーワイフなんて考えたこともなかったけど、自分が必死に人生を築いてきたのだから、その時々にふさわしいパートナーを求めてどこが悪いのかとも思いました」
つい最近、妻が起業したため若干の投資をした。「どぶに捨てるつもり」での投資だというから、やはりどこか妻を下に見ている。
「妻の希望を叶えたのだから、外では僕に寄り添うふりをしてほしい。今のところの願いはそんなものです。本当は、もっと自分にふさわしい女性がいるはず、いるに違いない。そう思っています」
子どものころには想像もつかなかったような資産に恵まれつつあるダイスケさん。パートナーへの思いはふくらむ一方のようだ。







