近年、日本の夏は命に関わるほどの猛暑となっています。それに伴い、発達した積乱雲による「ゲリラ豪雨」が多発し、激しい落雷によって突発的な停電が発生するケースも。予想を超える酷暑によって地域全体の電気の需給バランスが崩れ、広範囲で停電が起きるリスクも否定できません。
真夏の停電は、ほかの季節にはない特有の「命の危険」を含んでいます。本記事では、防災士の視点から、猛暑の中での停電を安全に乗り切るための具体的なポイントをご紹介します。
最優先すべき「熱中症」の危険回避
真夏の停電で最も恐ろしいのは、エアコンや扇風機が完全に停止し、室温と湿度が急上昇することによる「熱中症」のリスクです。電気が使えない状況下で、いかに効率よく体温を下げられるかが生死を分けます。

ハンディファンと冷却アイテムの常備
充電式のハンディファンは、停電時の貴重な動く風になります。これに加え、首元を冷やすネッククーラーや肌に貼る冷却シートなどを日頃から多めに常備しておきましょう。特に、1枚で長時間冷感が続く「使い切りの冷たい大判タオル」などを防災備蓄に入れておくと、いざというときに非常に役立ちます。
浴槽の水を残して「行水」の備えを
お風呂に入った後、すぐに浴槽の湯水を抜かずに残しておく習慣をつけましょう。マンションなどでは停電と同時に断水することが多いため、浴槽の水は大変貴重な水源になります。この水を使って、いざというときに行水(体を浸したり、手足を冷やしたりすること)をすることで、上昇した体温を物理的に下げることができます。
濡れタオルによる体温調節
行水が難しい場合でも、残った水や備蓄水でタオルを濡らし、首筋、脇の下、太ももの付け根などの太い血管が通る場所を拭くだけで、気化熱による高い体温下降効果が得られます。市販の冷たいタオルもあるといいでしょう。

冷凍庫に「凍結ボトル」を作っておく
日頃からペットボトルに水や麦茶を入れて冷凍庫で凍らせておく「凍結ボトル」の作製をおすすめします。停電時には、これをタオルで巻いて保冷剤(氷のう)として体を冷やすために使い、溶けたら冷たい飲料水として水分補給に利用できるため、一石二鳥の対策になります。
クールシェアスポットへの移動も視野に
もし停電が日中に発生し、自宅の周りだけで起きている(近くに停電していないエリアがある)ならば、無理に自宅にとどまる必要はありません。冷房が効いている近隣のショッピングモールや公的施設などの「クールシェアスポット」へ速やかに移動しましょう。周囲一帯の信号が消えている場合もあるため、移動の安全には十分に注意してください。
死守したい「冷蔵庫の食材と温度」
停電が起きると、冷蔵庫の中の食材が傷んでしまうのではないかと焦ってしまいますが、まずは「落ち着いて扉を閉め続けること」が鉄則です。
開け閉めを最小限に抑える
冷蔵庫は、停電になっても扉を開けなければ、内部の冷気はある程度の時間は保たれるように設計されています。頻繁に開閉すると一気に室内の熱気が流れ込み、庫内温度が急上昇してしまいます。まずは「開けない」を徹底してください。
日頃からの保冷剤レイアウト
普段からの工夫として、冷凍室のすき間に保冷剤をたくさん詰め込んでおくことを習慣にしましょう。食材と食材の間に保冷剤が挟まっていることで、停電時にも冷凍室全体が巨大な氷の塊のようになり、溶けるまでの時間を大幅に引き延ばすことができます。
飲料の取り出しは「最初の1回」で
熱中症を回避するために水分補給は不可欠ですが、飲むたびに冷蔵庫を開けるのはNGです。停電した直後の最初の1回だけ冷蔵庫を開け、麦茶ポットなどの飲料をすべて取り出します。それをすぐに魔法瓶構造の保冷水筒や保冷バッグに移し替えて手元に置いておくことで、冷蔵庫の冷力を守りながら、いつでも冷たい水分を補給できます。
夜間の安全を確保する「暗闇対策」
夜間に停電が発生した場合、室内の熱気が壁や天井から放出されて猛烈な暑さになるだけでなく、視界が完全に奪われる「真っ暗闇」が襲ってきます。暑さと暗闇のダブルパンチは、想像以上の精神的ストレスを与え、室内での移動や避難の足を大きく引っ張ります。
乾電池式の懐中電灯・室内灯の常備
すぐに手が届く場所(枕元やリビングの定位置)に、乾電池式の懐中電灯やランタンを用意しておきます。特に部屋全体を照らせるLEDランタンが数個あると、夜間の不安を大幅に和らげることができます。
ソーラー充電式の照明器具の活用
日常的に窓際にソーラー充電できるLEDライトを置いておくのも賢い方法です。電池切れの心配がなく、毎日太陽光で勝手に充電されているため、メンテナンスフリーでいざというときの非常灯になってくれます。
情報の命綱「スマートフォンの充電切れ」を回避する
現代の災害対策において、スマートフォンは避難情報や気象情報、安否確認を行うための最大の「命綱」です。電気が消えた世界でスマホの充電が切れて外部から情報が遮断されると、それだけで孤立感と不安が何倍にも膨れ上がってしまいます。
モバイルバッテリーの日常的な満充電
大容量のモバイルバッテリーを複数用意し、常に使えるよう満充電の状態を維持しておきましょう。日常的に使いながら充電する「ローリングストック」の意識を持つといいでしょう。
乾電池式充電器のバックアップ
モバイルバッテリーの電力を使い果たしてしまったときのために、「乾電池式」のスマートフォン充電アイテムも最低1つは備えておくべきです。乾電池さえ買い置きがあれば、長期戦になってもスマートフォンの電源を維持し続けることができます。
防災士からの強いおすすめ:ポータブル電源の購入検討
決して安価な買い物ではありませんが、防災士として私は「ポータブル電源」の所有を強くおすすめします。さらに安心を高めるために、ベランダや庭で発電できるソーラーパネルとセットで使用できるようにしておくのが理想的です。
ポータブル電源が家に1台あれば、スマートフォンやモバイルバッテリーの充電はもちろんのこと、消費電力の少ないLED照明を何晩も灯し続けたり、ACコンセントを使って普段通りに家庭用の扇風機を何時間も動かしたりすることができます。体に風を当て続けられるだけで、熱中症のリスクは劇的に下がります。
数時間の一時的な停電だけでなく、万が一、数日間に及ぶような大規模な災害が発生したとき、ポータブル電源の有無によって避難生活の質はまったく違ったものになります。ご家族の命と健やかな暮らしを守る投資として、まだお持ちでない人は前向きに購入を検討してみてください。







