
旧財閥系の大手企業は、今もなお就職先として高い人気を誇ります。ただ、その採用実態を見ていくと、「どの大学から入れるのか」という現実は想像以上にシビアです。
「大学通信の調査に回答した568大学のうち、三菱UFJ銀行か三井住友銀行に一人でも就職した大学は83大学しかないです。一般職と総合職があった時代には女子大が上位にランクインすることもありましたが、総合職に統一されていくとそれがなくなり、早慶などに収れんしている印象です」(大学通信 井沢秀・取締役)。
上位大学の学生以外にとっては、よい兆しも
よい兆しもあります。文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3つの省が共同で策定した、インターンシップや採用活動に関するルールが劇的に変わりました。いわゆる「3省合意」で、今回のランキングの対象となった2025年新卒者から、「インターンシップが実質的に採用選考に直結する」ことが公認されたのです。
インターンが実質的な「一次選考」となり、大学3年生の夏や冬のインターンに参加できるかどうかが、内定への大きな分かれ道となるので学生は大変な面もあります。「企業は長期間腰を据えた採用活動ができるようになり、上位大学に限らず人物本位で広く優秀な学生を探すようになると期待されています」(井沢氏)。
本記事では、東洋経済新報社の記者である山川清弘氏の著書『教養としての 三菱・三井・住友』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集して、旧財閥系グループの「銀行」「損保」「電機」「重工」の主要企業の「大学別就職者数ランキング」を紹介します。
銀行:三菱UFJ銀行、三井住友銀行

まずは、銀行から見ていきましょう。慶應と早稲田の差は僅差に見えますが、「卒業者数全体で見ると、2025年は慶應の7706人に対して早稲田は1万1602人もいます。だから実質的には、慶應が他大を圧倒して金融機関就職に強いと言えます」(井沢氏)。
慶應はOB・OG組織「三田会」があり、企業ごとの三田会もあります。金融業界関連の三田会の総称として「金融三田会」と言われるほど非常に強い団結力とネットワークを持っており、就活から入社後のフォローまで行き届いているのでしょう。早稲田にも「稲門会」という組織があるものの、三田会ほど強力ではないので、その差が出ているのかもしれませんね。
上位は早慶が目立つ一方、下位には全国の国立難関大学が並んでいます。全国に支店を持つメガバンクであること、エリア別採用を経て、近年は全国総合職に一本化したものの、望まない転勤はさせない人事方針にシフトしたこともあり、地方大学から応募しやすくなっていることも要因と言えるでしょう。
損保:東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険

損保の場合、大手が三井と住友で統合されている点は銀行と同じですが、損保では2社とも早慶に次ぐ3位に関西学院大学が入っているのが特徴的です。「関西学院大学は約5000人の卒業生の就職率が98~99%と非常に高く、教職員一体となって学生の就業支援をしています」(井沢氏)。
かつての損保業界の代名詞だった「一般職(事務職)」は姿を消し、現在は、自分で全国転勤の有無や範囲を選択できる「コース別総合職」や、特定の専門分野を活かす「スキル採用(ジョブ型)」へと構造が変わっています。三井住友海上火災保険では「地域ブロック内転勤」といった柔軟な区分もあり、かつてほど「有無を言わさず全国転勤か、さもなくば事務職」といった区分けはないようです。
結果として学生側がどのように働きたいか、何をやりたいかで職種が選べるようになったため、一般職に強かった女子大の存在感がなくなってきているのは銀行と同様ですね。
電機:三菱電機、NEC、住友電気工業、東芝

各社の得意分野や事業内容はかなり異なっています。そのうえで4社を見比べると、三菱電機とNECの採用数が多く、住友電気工業と東芝はやや少ないですね。東芝は家電やパソコンなどお茶の間イメージの事業を売却してしまったので、その影響も大きそうです。
目を引くのは大阪大学で、三菱電機と住友電気工業で1位です。共同研究など研究室とのつながりを感じます。また関西学院大学は、「2021年に理工学部を4学部に再編し、神戸三田キャンパスに集約した効果が出たようです」(井沢氏)。
重工:三菱重工業、住友重機械工業

重工2社も事業内容がかなり異なります。
このため両社の出身大学も趣が異なり、三菱重工業は西日本・中部圏の主要国立大学が上位を占めていて、全体の採用人数も多めです。兵庫県にガスタービンの高砂製作所、長崎県に大型船舶の造船所、愛知県にはボーイング向け部材などの名古屋航空宇宙システム製作所があり、事業所と大学の密接さがうかがえます。
住友重機械は、同率1位の東京科学大学と法政大学でも5人ずつと、全国の国立・私立大学から少数ずつ採用しています。群馬大学、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学など、専門分野に強く現場で即戦力として活躍できる優秀な理系学生を積極的に採用しているのでしょう。
※データは、各大学発表による2025年の企業別就職者数。東京大は「東京大学新聞」、京都大は「京都大学新聞」より判明分を集計。東京科学大は理工学系のみ。大阪公立大は、統合前の大阪市立大と大阪府立大、大阪公立大の大学院修了者の合計人数。大学名横の*印は大学院修了者を含むことを表す。大学により、一部の学部・ 研究科を含まない場合がある。就職者数はグループ企業を含むことがある。 大学通信の調査を基に『教養としての 三菱・三井・住友』編集部が作成。
山川清弘(東洋経済新報社 記者) プロフィール
1967年、東京都生まれ。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て『株式ウイークリー』編集長および「会社四季報オンライン」編集部編集委員。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)、『教養としての三菱・三井・住友』(飛鳥新社)など。






