
かつて就職人気ランキングの上位を独占していた商社や銀行は、いまや外資系コンサルティング会社に押され気味です。大学通信の井沢秀・取締役は「東大生の就職先の1位はアクセンチュア、2位が野村総合研究所で、3位がEYストラテジー・アンド・コンサルティングになっています」と話します。
とはいえ商社の人気がなくなったわけではなく、また旧財閥系の大手企業への就職意欲は衰えていないそうです。「給与水準が高く、福利厚生も含めて高いレベルで安定している大手企業ですから、人気の高さは昔と変わっていません」(井沢氏)。
国立大学、有力私立大学や専門性の高い理系大学などでないと、大手企業への就職はまだまだ狭き門のようです。
この記事では、東洋経済新報社の記者である山川清弘氏の著書『教養としての 三菱・三井・住友』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集し、旧財閥系グループの「商社」「不動産」「海運」「化学」の主要企業の「大学別就職者数ランキング」を紹介します。
商社:三菱商事、三井物産、住友商事

まずは、学生に人気の商社から始めましょう。三菱商事、三井物産、住友商事の3社とも、東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学がトップ3を占めています。「この3大学が3社全体の就職者数に占める割合は、東大が22.6%、慶應が19.7%、早稲田が17.1%で、合わせると約6割に達します」(井沢氏)。
いわば3大学に行かないと商社に入れないようなイメージですね。過去には一橋大学が強い時期もありましたが、外資系コンサルティング会社などへ志向が移っているようです。
下位の大学では3社とも国立大学が多いです。「国立大学は研究環境が充実しているし、大学院修了の人も多いのでしょう」(井沢氏)。商社は取り扱っている商品が多岐にわたっているため、高度な専門知識が求められることから、入試でも多数の科目で受験した国立大生の方が有利なのかもしれませんね。
東京外国語大学や国際基督教大学(ICU)がランクインしているのも特徴的で、世界を股にかけたビジネスには、語学力も期待されていることがうかがえます。
不動産:三菱地所、三井不動産、住友不動産

不動産も学生の人気が高い業種ですね。こちらも早慶と東大が強いですが、商社と比べるとトップ10大学の合計人数がそこまで多くない一方で、全国の国立から私立まで、かなりバリエーションに富んでいる印象があります。
大手は大都市での大規模再開発などビッグプロジェクトに関わることも多く、「大規模な街づくりをしたいという学生は多いです」(井沢氏)。慶應大学が優勢なのも、より大きな仕事をしたがる傾向を示しているのかもしれません。
全国の大学からまんべんなく採用しているのは、支店など営業を行うエリアが日本各地に広がっているからだと考えられます。3社とも全国型総合職採用なので全国へ転勤する可能性がありますが、逆に言えば自分の出身地で働くチャンスもあるということかもしれません。
海運:日本郵船、商船三井

海運2社は、初任給ランキングでも上位に入っている、高給企業です。近年、海運市況の好転に伴い、平均年収も総合商社や外資系企業に匹敵する水準を誇っています。一見地味なようにも見えますが、世界を股にかけて活躍できるビジネスのため、商社などと併願する学生も多く、就職人気は高いです。
海の上の「船会社」らしく、両社とも2位に東京海洋大学がランクインしているのが印象的です。上智大学や東京外国語大学など、高い英語力を買われた学生が採用されている様子もうかがえます。
大型タンカーやクルーズ船など、ダイナミックで華やかなイメージもありますが、天候や地政学的な要素に左右されるなど緻密さが求められる業界であるからか、国立大学卒の就職者数が多いです。「大学受験でも数多くの科目で受験しなければならない国立大学の学生が、まじめにきっちりやらないと大変なことになる職種に合っているということでしょう」(井沢氏)。
化学:三菱ケミカル、三井化学、住友化学

化学系企業は最終製品を作っているケースが少ないので、一般的な知名度が低い場合があり、理系でも化学分野の専門知識がある学生が就活に有利です。
三菱ケミカルの1位は九州大学。三菱ケミカルの福岡事業所(北九州市黒崎地区)は、リチウムイオン電池材料などの高機能材料を製造しています。そして九州大学は「水素エネルギー」や「有機EL素材」の研究で世界トップクラスです。
三井化学の研究開発の主力は千葉(袖ヶ浦)にありますが、東京科学大学とは人材交流が極めて活発で、歴代の技術系役員にも旧東工大出身者が多いです。
大阪大学、神戸大学が同率1位の住友化学は大阪が地盤です。医薬・農薬事業の比率が高く、大阪大学とは、創薬分野や農薬開発分野で連携関係にあります。
※データは、各大学発表による2025年の企業別就職者数。東京大は「東京大学新聞」、京都大は「京都大学新聞」より判明分を集計。東京科学大は理工学系のみ。大阪公立大は、統合前の大阪市立大と大阪府立大、大阪公立大の大学院修了者の合計人数。大学名横の*印は大学院修了者を含むことを表す。大学により、一部の学部・ 研究科を含まない場合がある。就職者数はグループ企業を含むことがある。 大学通信の調査を基に『教養としての 三菱・三井・住友』編集部が作成。
山川清弘(東洋経済新報社 記者) プロフィール
1967年、東京都生まれ。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て『株式ウイークリー』編集長および「会社四季報オンライン」編集部編集委員。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)、『教養としての三菱・三井・住友』(飛鳥新社)など。






