
「日本企業は内向きで、世界での競争力を失っている」――そんなイメージを抱いてはいないでしょうか。しかし、企業の「海外売上高比率」というリアルな数字を覗いてみると、その認識は小気味よいほどに覆されます。
ニコンの86%、さらには驚異の「100%」を叩き出す三井海洋開発など、三菱・三井・住友の主要企業を比較すると、名門企業たちの“本当の主戦場”はむしろ世界市場にあることが見えてきます。
本記事では、東洋経済新報社の記者である山川清弘氏の著書『教養としての 三菱・三井・住友』(飛鳥新社)より一部抜粋・編集し、ランキング上位に並ぶ名門企業の世界戦略と、知られざる「世界で稼ぐ力」に迫ります。
海外売上高比率で見える「世界で稼ぐ力」
「日本企業は内向きだ」というイメージがあるかもしれませんが、3グループの主要企業を「海外売上高比率(売り上げのうち海外でどれだけ稼いでいるか)」で見ると、その認識は覆されます。
特に、素材・化学・自動車・精密機器といったメーカー勢の数字には目を見張るものがあります。

三菱グループは「精密・自動車・素材」が海外で強い
三菱グループでトップに立ったのはニコン(86%)。カメラや半導体露光装置といった精密機器は、日本よりも世界市場が主戦場です。特に半導体露光装置は、世界の半導体産業を支える重要な役割を担っています。
三菱自動車工業(77%)も、海外比率が非常に高い企業です。国内市場では苦戦が続いていますが、東南アジアを中心に、「パジェロ」や「アウトランダー」といったSUVが高い人気を誇っています。
AGC(69%)、三菱ガス化学(68%)、三菱マテリアル(57%)といった素材メーカーも、海外比率が高い企業です。素材産業は、「世界共通で必要とされる製品」を扱うため、自然と海外比率が高くなるようです。
三井グループは「海洋・プラント・素材」で世界を攻める
三井グループで最も海外比率が高いのは、意外にも三井海洋開発(100%)です。この会社は、海底油田・ガス田の開発に必要なFPSOを専門とする企業で、その事業の性質上、売上のすべてが海外から生まれています。
次いで高いのが、プラント建設の東洋エンジニアリング(77%)です。プラントの設計・建設を手がけ、世界中でプロジェクトを展開しています。
そして、繊維・素材の東レ(61%)。炭素繊維、フィルム、繊維など、多様な素材を世界中に供給しています。特に炭素繊維は、航空機や自動車の軽量化に不可欠な素材として、ボーイング、エアバスといった航空機メーカーに採用されています。
住友グループは「化学・素材」で世界市場に深く食い込む
住友グループでトップに立ったのは、日本板硝子(82%)です。2006年、英国の大手ガラスメーカー、ピルキントン社を買収したことで、一気にグローバル企業へと変貌しました。
住友精化(74%)、住友ゴム工業(72%)、住友化学(70%)といった化学・素材メーカーも、海外比率が非常に高い企業です。これらの企業は、自動車、電子機器、建設など、世界共通で必要とされる製品を供給しているため、自然と海外比率が高くなります。
国内市場の縮小が叫ばれる現代だからこそ、知名度や国内のシェアだけでなく、このように「世界を舞台にどれだけ稼げているか」という視点を持つことは、企業の真の実力や将来性を見極めるうえで、大人の外せない「教養」と言えるでしょう。
山川清弘(東洋経済新報社 記者) プロフィール
1967年、東京都生まれ。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て『株式ウイークリー』編集長および「会社四季報オンライン」編集部編集委員。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)、『教養としての三菱・三井・住友』(飛鳥新社)など。






