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厚底シューズだけではない。マラソン世界記録の裏に「走りながらバナナ10本分の糖質補給」と特許の存在(3ページ目)

2026年4月26日に行われたロンドンマラソンで、セバスチャン・サウェ選手が1時間59分30秒という驚異的なタイムで世界記録を更新しました。この記録はシューズの進化がもたらした側面もありますが、近年大きく発展しているレース中の補給戦略も大きいと考えられます。※画像:筆者作成

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

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世界記録に貢献したモルテン社の特許技術

モルテン社は創立直後から、消化器官に負担を与えずに高濃度の糖質を摂取できるようにするための技術に関する特許出願を行っており、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどでいくつも特許を取得しています。

今回サウェ選手が朝食後に摂取していた「Bicarb System」にも特許技術が用いられていると考えられます。これは、重曹とも呼ばれる重炭酸ナトリウムが配合されているのですが、重炭酸ナトリウムを競技前に摂取すると、競技中の筋肉疲労を緩和し、運動中に生成される乳酸を中和することができるとされています。

しかし、重炭酸ナトリウムは、摂取して胃に入った際に胃酸に反応して消化器官の不調を引き起こしてしまうことがあるというデメリットもありました。

そこでモルテン社は、こんにゃくや寒天などにも使われている「ハイドロゲル」というゼリー状の固体物質で重炭酸ナトリウムを包み込むことで、胃酸を反応させずに通過して直接腸内に重炭酸ナトリウムが放出されるという特許技術を開発し、これが製品に用いられていると考えられます(特許番号:WO2023025806A1)。

サウェ選手が朝食後に食したモルテン社のBicarb System
サウェ選手が朝食後に食したモルテン社の「Bicarb System」 ※画像:モルテン 公式Webサイト

また、サウェ選手が走っている最中に摂取していたスペシャルドリンクやGelにも特許技術が用いられていると考えられます。モルテン社は、胃酸に触れると「ハイドロゲル」というゼリー状の固体物質を形成するという特許技術を有しており、この技術によってGelなどが胃に入った際に高濃度の糖質を「ハイドロゲル」でカプセル化することで、胃に負担をかけることなく直接腸内に放出することができます(特許番号:US20250134150A1)。

このような特許技術によって、走っている最中に消化器官に負担をかけることなく高濃度の糖質を効率的にすばやく摂取することができるようになっているわけです。こうした特許技術の裏付けがあるからこそ、マラソンを走っている最中にバナナ10本分以上の糖質を摂取するという常識外の糖質補給が可能となったと考えられます。

今後の補給技術の発展

今回のモルテン社の補給戦略はこれまでのマラソンの常識を覆すものと言えます。今後は、マラソンを走っている最中に大量の補給を適切に摂ることが、結果を大きく左右する時代になっていくのかもしれません。

サウェ選手が世界記録を出したロンドンマラソンで2位になり、1時間59分41秒というこちらも素晴らしいタイムを出したヨミフ・ケジェルチャ選手(エチオピア)は、スペインのメーカーが開発した「サンタマドレ」というブランドの補給食を使用しており、ケジェルチャ選手も綿密な補給戦略を立てた上で走っている最中に大量の糖質摂取をしていたようです(ケジェルチャ選手もサウェ選手と同様に20km地点でカフェイン入りのジェルを摂取していた点は非常に興味深いです)。

NIKEの厚底シューズの登場によって、NIKEやadidas、asicsといったシューズメーカーの争いが激化しましたが、今後は、こうした補給食をめぐるメーカーの技術開発争いというものも激化していくのかもしれません。

>次ページ:【画像】サウェ選手の補給食

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