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厚底シューズだけではない。マラソン世界記録の裏に「走りながらバナナ10本分の糖質補給」と特許の存在(2ページ目)

2026年4月26日に行われたロンドンマラソンで、セバスチャン・サウェ選手が1時間59分30秒という驚異的なタイムで世界記録を更新しました。この記録はシューズの進化がもたらした側面もありますが、近年大きく発展しているレース中の補給戦略も大きいと考えられます。※画像:筆者作成

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

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マラソン中の補給の重要性

マラソンは長時間の運動になることから、糖質を大きく消費するスポーツです。そのため、アメリカスポーツ医学会は、運動中1時間当たり30g~60gの糖質摂取を推奨しています。

また、欧州スポーツ科学会議が発行する学術誌『European Journal of Sport Science』にてAsker Jeukendrup博士(イギリス・バーミンガム大学教授)が2008年に発表した論文によると、2時間以上の持久運動をする場合は最大90gの糖質を摂取することが望ましいとされています。

こうした運動中の補給は、1960年代頃から普及し始め、今もスポーツドリンクとして有名な「ゲータレード」がそのけん引役を担っていました。その後、1996年頃からスポーツの補給食に関する特許出願が大幅に増加し、1995年はスポーツ補給食に関する国際特許出願は年間1500件程度だったのが、2015年には年間9000件ほどに増加しました。

近年、このようにスポーツの補給分野における科学技術は大きく進歩しており、そうした中で、2015年にモルテン社は創立されました。

モルテン社は、「Trust Your gut」(腸を信じろ)を合言葉に、創立から一貫して、消化器官にできるだけ負担をかけずに高濃度の糖質を摂取できるようにするための補給食を開発してきました。

そうして開発された補給食を今回サウェ選手はマラソンを走りながら摂取していたわけですが、実際にどのように摂取していたのでしょうか。

世界記録を出した時のサウェ選手の補給戦略

サウェ選手が世界記録を出した日の補給スケジュールが、モルテン社の公式プレスリリースにて公開されていますので、そこから抜粋すると以下の通りです。

朝食後:Bicarb System(筋肉疲労を抑えるための重炭酸ナトリウム入りのゼリーのようなもの)
スタート地点に向かうまで:モルテンスペシャルドリンク
スタート5分前:Gel100(糖質25g)
5km、10km、15km地点:モルテンスペシャルドリンク160ml
20km地点:カフェイン入りのGel100(糖質25g)、モルテンスペシャルドリンク130ml
25km、30km、35km、40km:モルテンスペシャルドリンク160ml

ロンドンマラソンでモルテン社のスペシャルドリンクを持つサウェ選手
ロンドンマラソンでモルテン社のスペシャルドリンクを持つサウェ選手 ※画像:モルテン社 公式Instagram

こうした補給により、サウェ選手はマラソンを走っている最中に実にバナナ10本分以上となる、200g以上の糖質を摂取していたとのことです。

これは従来の常識を大きく超える糖質摂取量と言えます。先述の論文にて、2時間以上の持久運動をする場合は最大90gの糖質を摂取することが望ましいとされていますが、その倍以上の糖質をサウェ選手はマラソンを走っている最中に摂取していたことになります。

通常、これほど多くの糖質を摂取してもかえって調子を落としてしまうことが多いです。

筆者もマラソンを走るのですが、一番調子がよかった時に、マラソンを走っている最中にいつもより多めに糖質(ジェル)を摂取したのですが、途中からかえって体が動かなくなり、自己ベストよりも大きく遅れてゴールする羽目になったことがあります。

モルテン社は、こうした糖質を多く摂ることでかえって消化器官に不調を起こしてしまうという課題を認識し、技術開発を重ねて今回サウェ選手が摂取したような補給食を作り出したわけです。こうした課題を乗り越えたモルテン社の「特許技術」とはどのようなものなのでしょうか。

>次ページ:世界記録に貢献したモルテン社の特許技術

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