人間関係

孫にあげる「ボンボンドロップシール」ほしさに行列した祖父が転倒……。熱狂がもたらすものとは

人気が加熱している「ボンボンドロップシール」。ほしいシールを手に入れるために、子ども、両親、祖父母まで巻き込んでいる家もあるという。そこに見え隠れする「感情」をどう処理するのか、考える必要がありそうだ。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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人気の「ボンボンドロップシール」だが……(画像:PIXTA)

人気の「ボンボンドロップシール」だが……(画像:PIXTA)

「ボンボンドロップシール」人気が過熱しているという。販売店には「売っているのか」「昨日はあったと聞いているが今日はないのか」など、ひっきりなしに電話での問い合わせがあり、仕事にならない事態にも。

ボンボンドロップシールとは、グミのようなぷっくりとした立体感とツヤツヤした透明感が特徴のデコレーションシール。観賞用とする人もいるが、多くはスマホケースや持ち物に貼って「デコる」ようだ。背景には平成レトロブームでシール集めが流行したこともある。その流れで2024年3月に発売されたボンボンドロップシールが爆発的な人気を得た。

手に入らないと焦る

「ネットで検索したり、近くの販売店に問い合わせたり。毎日、このシールに翻弄されていますね。うちは娘と私、二人ではまっているので、双方の祖父母も巻き込んでの大騒動になっています」

苦笑しながらそう言うのはユキさん(39歳)だ。9歳になる娘も、好きなキャラクターのシールをいち早く手に入れたがっている。一人娘のため、夫とユキさん、双方の両親も「なんとか手に入れる」と毎日のように連絡がある。

「ただ、つい先日、張り切り過ぎた実家の父が販売店が開店する2時間も前から並んで、寒さのあまり体が固まったんでしょうか。いざ開店となったときに転んでしまい、店にも迷惑をかけてしまった。大ごとにはなりませんでしたが、ちょっと考え直そうと夫が言い出しました」

たかがシール、されどシール。夢中になって周囲が見えなくなるほどの熱狂は、ときに危険をともなう。1シート400円から500円という値段もまた、どんどん集めてしまう要因になるのだろう。高額なものなら諦めもつくが、この価格なら、もっとほしい、もっともっとと欲求が高まってしまう。はやりの「ガチャガチャ」も似たような感覚だ。

熱狂しすぎるのは……

「あとは周りとの競争意識もあるのかもしれない。これを手に入れたと友達に見せることで、どこか優越感を覚えるんですよね。実際、私もスマホケースをデコっていますが、パート先の人たちに見せると、みんな食いついてきますから」

「デコり世代」なんですよねとユキさんは笑った。だが夫は、父のケガ以来、一気に情熱が冷めたようだ。そこまでして手に入れなければならないものはないと、双方の両親に「シール集め禁止」を言い渡した。

「娘は悲しそうで、そんな娘を見て夫はちょっとパニクっていて。とりあえず熱狂するのはやめようということで、今後どうするかを検討中です。子どもや孫のことになると大人は熱狂するし、私自身もはまっているから、どうしてもシールの情報収集に時間を割いてしまうけど、どうするのが一番いいんでしょうね」

流行は常に人を魅了するが、一部では店舗でシールのラックを倒してかき集めて購入していく映像が流れ、販売をとりやめる店舗も出てきているようだ。

まずは冷静になる

はやっているものがほしいのに買えない。人が持っているのがうらやましい。そうなれば持っている人を妬んだり恨んだりするようにもなっていく。

「娘もたまたま持っていたシールを、友達に『ちょうだい』と言われ、断ると睨まれたとしょげていたことがありました。昨年の春くらいから、それまでよりさらに人気が高まっているような気がします。うちの娘も以前は何時間もかけて店舗を巡っていたんです。いち早く自分が新作をゲットしたい一心だったみたい。夜まで繁華街をうろうろすることも多く、心配していました」

シホリさん(46歳)は当時を振り返る。

だが昨年夏から、娘は抽選販売に申し込むようになった。

「高校受験が近くなってきて、さすがにこれではまずいと本人が思ったようです。塾のテストの結果などを見て、本人が危機感を募らせた。シールは好きだけど、今は抽選販売だけでいい。受験が終わってからまたやろうと気持ちを切り替えることができたみたいです」

醜い感情が湧き起こったら

内心は心配で、小言を言いたくてうずうずしていたシホリさんだが、ここは何とか踏ん張って娘の自覚を待つ作戦に出たのだという。

「誰にでも蒐集癖みたいなものはあると思うし、かわいいものを集めてデコりたい気持ちも分からなくはないけど、そこにだけ集中してしまうと、今やるべき他のことができなくなりますよね。でも、こういうことは誰にでもあるので責めるような話でもない。私自身、10代のころ、あるアイドルにはまって、その人のためだけに人生を過ごしているような時期もあったから、娘を怒れなかった」

夢中になるだけの集中力や情熱が、今の自分にはないとシホリさんは笑った。流行を追ってはまるのは決して悪いことではない。だが、そこに見え隠れする嫉妬や自分だけ抜け駆けしようとするずるさ、他を蹴落としても自分が得したいといった「人として醜い感情」が湧き起こるとしたら、それをどう処理していくのか。そんな裏テーマが、このシール競争には隠されているようだ。
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