人間関係

「私の子育ては“調教”だった……」家族全員に家出された47歳女性が娘にした「許されない仕打ち」

私は娘に必要なことを仕込んでいただけ。しつけはうまくいったと思っていた。だが、実は娘は母を長年にわたって恨んでいた。そして家族みんなが家を出ていった。母と娘が分かり合い、家族が再生できる日は訪れるのだろうか。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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長年にわたって娘を苦しめてきたことを知り……(画像:PIXTA)

長年にわたって娘を苦しめてきたことを知り……(画像:PIXTA)

親は子どものことを考えて基本的な生活習慣を身につけさせようとする。それは当然のことだが、ルールがあまりにも厳しいと、成長していく子どもたちはだんだんと苦しくなってしまうのかもしれない。

きちんとすることが一番

「しつけに関しては小さいころから厳しくしてきました。人に迷惑をかけてはいけない、道徳心を失ってはいけない。だからうちの子たち、電車内で騒いだこともありません。少しでも大きな声を出すと私がにらむ。そうするとすっと静かになるんです」

しつけはうまくいっていた。小学校に入る前から、子どもたちは平仮名も片仮名も読めた。簡単な漢字も書けた。天才にはなれなくても秀才にはなれる。そのためには母親の覚悟が必要なのだと、ルミさん(47歳)は信じていた。

そうやって育てた娘は20歳、息子は17歳になった。親戚の紹介で見合いした2歳上の夫は、一流私大を出た「当時はエリート」だったという。そこそこ名の知れた企業での幹部候補と聞いていたのだ。

「お見合いして付き合って3カ月くらいで結婚を決めたんです。最初は好青年という感じだったし、実際に人当たりはいいんですが、夫はエリートではなかった。出世も遅い。本人は社内外に友人が多いと言っているけど、いくら友達が多くても出世はできませんからね」

娘を疑ってしまった

社内のムードメーカーで、宴会には欠かせない人物。花形の営業部にいるが、冷静で緻密な分析あっての営業は苦手で、人間性で突破口を切り開き、人間性で成果を上げるタイプらしい。今どき流行らないが、「義理人情は欠かせない」というのが夫の口癖だとか。

「だから家庭内でもしつけも教育もしてくれない。子どもたちとはくだらないことを話して笑ってばかり。娘が小学校2年のとき、たまたま教室で友達の筆箱がなくなった。なぜか娘に疑惑がかかったんですよ。その前に娘がその子の筆箱をうらやましがっていたから」

娘には同じ筆箱をねだられていたが、ルミさんは「絶対にダメ」とにべもなく拒否した。まだ使えるのがあるのにほしがるのは、あなたの心が卑しいからだとまで言った。だからルミさんは娘に疑惑がかかったとき、「本当は盗んだんじゃないの」と言ってしまった。

「夫は私に『そんなことあるわけないだろ』と怒鳴りました。そして娘を連れて学校に直談判に行った。結局、友達の勘違いだったんです。家に筆箱を置いてきてしまったのに、それが言い出せなかっただけ……」

ルミさんの言葉は娘をひどく傷つけたのに、それには気付かなかった。夫に指摘されて謝ったし、娘も納得してくれたと思い込んでいた。

娘は私を恨んでいた

その後は何ごともなく成長していったように思っていたのだが、娘は高校生になってから帰宅が遅くなった。繁華街をうろついているらしい。何度か補導もされた。そのたびにルミさんは「どうして」と娘を揺さぶったが、娘は答えようとしなかった。

あるとき、夫が娘と二人で1泊旅行に出掛けた。帰宅してから夫が語ったのは、娘の心の傷だった。

「あの筆箱の一件だけではなく、私は小さいころから娘を傷つけてばかりいたって。何を言っても否定される、褒められたことは一度もない。弟とケンカしても『あんたはお姉ちゃんなんだから譲りなさい。女の子は優しくしないといけないの』と決めつけられた。だけど娘は私に逆らったことさえなかったんですよ。言いたいことがあれば言えばいいのに」

娘が父に話したところによると、「お母さんには逆らえなかった。一言言い返したら、百倍になって返ってくる」と言ったそう。

「きみはオレのいないところで、子どもたちをどう調教していたんだ」と夫に言われ、ルミさんは初めて、自分の子育てがまさに調教だったと分かった。言葉をしゃべれない子どもは動物と同じ、ダメなことは叩いて教えなければと思っていた。そしてそれは、ルミさんが母親から受けた教育でもあった。

「私は思春期以降、母をずっと恨んでいました。それなのに母と同じことをしていた。それがショックだった。でもなんだか実感はなかったんですよね。母ほどひどいことはしていない、私は娘に必要なことを仕込んでいただけと思っていた」

家族が家を出て

心底分かっていたわけではなく、頭で理解しようとしていたのだろう。その後、娘は夫と共に近くのアパートに移り住み、そこでは夫の母が家事を仕切った。気付いたら息子も、そのアパートに行ったきりになった。今から3年前のことだ。

「私は孤独になり、絶望して死のうとまで思いつめました。でも夫は『いつか修復できるから。きみも今までの自分を振り返ってみて。家族は壊れない』と励ましてくれたんです。時々子どもたちに会って話すようになりました。だんだん本音をぶちまけあうようになって、半年前には娘と私がつかみあいにまでなった」

だが、そんなやりとりを通して、最近、ようやく少しずつ互いを分かりあえるようになってきた。子どもは「親が作っていくもの」ではない。持って生まれた子どものよさを引き出していくのが子育てだろうと夫は言った。

「全て分かり合おうとしなくてもいいと夫に言われて。私は潔癖すぎると。私自身は自分の生き方を曲げられないけど、相手を認めることはできる。今はそう思います」

家庭は再生できるのか。ルミさんはできると信じたいと少し笑みを浮かべた。
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