大学受験

「小5で2級」「中1で1級」って実話です? 東大生作家が指摘する「英検低年齢化」本当の問題点

入試の約半数が推薦・総合型選抜のいま、暗記頼みの対策はもう通用しません。共通テストの激変や英検の重要性など、東大生作家・西岡壱誠氏が説く「令和の受験の新常識」。今回は「英検低年齢化」の背景を解説します。※画像:PIXTA

All About 編集部

SNSの英検界隈では「中1で英検1級」も見慣れたフレーズに ※画像:PIXTA

SNSの英検界隈では「中1で英検1級」も見慣れたフレーズに ※画像:PIXTA

「受験=ペーパーテスト対策」という構図は、通用しない時代が到来しました。「大学入学共通テスト」が導入されたことによって、出題内容は知識偏重から思考・表現力重視へ。さらに英検や探究活動の重要性も急上昇しています。

東大生作家・西岡壱誠氏の最新刊より『知らないと合格できない 令和の受験のフツウ』より、近年の英語教育の大激変が意味するものについて紹介します。
<目次>

2026年度から英検6級・7級の導入

英検の世界で、いま静かな異変が起きている。「小学生で英検2級」「中学生で英検1級」といった話が、もはや一部の突出した成功例としてではなく、「最近ではよく聞く話」として語られるようになってきたのだ。

こうした変化を象徴する出来事の一つが、英検の級体系の拡張である。日本英語検定協会は、従来の5級よりもさらに前の学習段階を測る6級・7級を新設する方針を打ち出した。新たな級は2026年度第3回検定から導入され、初回の試験は2027年1月頃に実施される見通しとなっている。

表向きには、「英語学習の裾野を広げるための制度改編」と説明されることが多い。小学校で英語が教科として定着し、英語に触れる年齢が下がっている以上、学習到達度をより細かく測れる仕組みが必要になるのは自然な流れだろう。

しかし実際には、この動きはそれ以上の意味を持っている。

英検6級・7級の導入は、受験を意識し始める年齢そのものが前倒しされている現実を、はっきりと映し出している。かつて英検は、中高生が進学や受験を意識して挑戦する資格だった。中学生で3級、高校生で準2級や2級を目指す──それが「標準的なルート」として共有されていた時代は、決して遠い昔の話ではない。

ところが現在、その前提は大きく崩れている。
  • 小学生で5級・4級を取得
  • 中学生で準2級・2級に到達
  • 高校入学前から大学受験を見据えた級を持っている
背景にあるのは、英語教育の早期化だけではない。英検という資格そのものが、受験戦略の一部として組み込まれるようになったことが、より本質的な要因である。

学校推薦型選抜と総合型選抜の拡大

この現象を理解するには、現在の大学入試の構造を抜きに語ることはできない。現在の大学入試では、一般選抜に加え、
  • 総合型選抜
  • 学校推薦型選抜
といった方式が急速に存在感を増している。多くの大学で、入学者のおよそ半数が、こうした「年内入試」によって進学先を決めているのが現実だ。これらの入試で評価されるのは、学力試験の点数そのものではない。「高校生活を通じて、どのような学びを積み重ねてきたのか」「どんな関心や問題意識を持ち、それをどう深めてきたのか」といった、学びの過程そのものが重視される。

その中で、英語資格は極めて扱いやすい評価材料となった。
  • 全国共通で基準が明確
  • 級やスコアとして能力を示せる
  • 書類選考や面接との相性が良い
結果として、英検は「あると加点されるもの」から、「持っていて当然と見なされやすいもの」へと変化しつつある。本来、大学入試改革は多様な能力を評価するためのものだった。しかし現実には、評価基準の不透明さへの不安から、
  • 分かりやすい実績
  • 数字で示せる成果
が過度に重視される傾向も生まれている。英検は、その象徴的な存在だ。「評価されるなら、早めに取っておいたほうがいい」この判断が、英語学習を小学生、さらにはそれ以前の段階へと押し下げている。英検6級・7級の導入は、そうした流れを制度として後押しする役割を果たす可能性がある。

親の不安が受験をさらに前倒しする

英検低年齢化の背景には、子ども本人だけでなく、保護者の判断が大きく関わっている。情報があふれる現代では、

「やらなかったら不利になるのではないか」
「周りの家庭はもう動いているのではないか」

という不安が、簡単に膨らむ。

英検は、そうした不安に対して非常に分かりやすい「答え」を与えてくれる。級という形で成果が可視化され、「努力していること」が一目で分かる。だからこそ、英検は受験戦略の中で優先順位が上がりやすい。その結果、英検取得の時期はどんどん前倒しされ、気づかないうちに英検を取ること自体が目的化してしまう。もちろん、早くから高い英語力を身につけること自体は悪いことではない。英語を日常的に使う環境で育った子どもや、言語として自然に英語を吸収しているケースも確かに存在する。

しかし問題は、それが「当たり前の基準」として語られ始めていることだ。英検の級は、英語力の一側面を測るにすぎない。早期に高い級を取得しても、その後の学びや探究活動、思考力や表現力と結びついていなければ、大学入試で十分に評価されないこともある。

むしろ、英検対策に時間を割きすぎた結果、

「考える力」
「自分の言葉で語る力」

が育たないまま高校生になるケースも少なくない。

令和の受験で本当に問われているもの

現在の受験で問われているのは、単なる早期スタートでも、努力量の多さでもない。重要なのは、
  • どの入試方式を選ぶのか
  • どんな実績を、どの順序で積み上げるのか
  • 英検を学び全体の中でどう位置づけるのか
という戦略的な設計力である。

「小5で2級」「中1で1級」という言葉に焦るよりも、自分にとって必要なレベルと、最適な取得時期はどこなのかを見極めることのほうが、はるかに重要だ。

総合型選抜や学校推薦型選抜では、実績の高さそのものよりも、学びの一貫性や物語性が評価される。英検だけを突出して早期に取得しても、その後の学びと結びついていなければ、評価につながらない場合もある。英検は、あくまで数ある道具の一つである。

それ単体で合否を決める魔法の切り札ではない。英検6級・7級の新設は、英語学習の入口を広げる試みであると同時に、受験が長期戦・情報戦の時代に完全に入ったことを示すサインでもある。英検はゴールではない。それは、これからの学びをどう設計していくかを考えるための、通過点の一つにすぎないのだ。
  西岡 壱誠(にしおか・いっせい)プロフィール
中高では学力が芳しくなかった。2浪という厳しい状況の中で、自分自身の学びを徹底的に見直し、独自の勉強法を確立。これにより偏差値35から偏差値70まで成績を伸ばし、東京大学に合格を果たす。この経験をもとに、学びに悩む学生たちに希望を届ける活動を展開中。勉強法や思考法の研究と実践に基づいた著書は、ベストセラーとなり、多くの受験生や教育者から支持を集めている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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