ミリオネアの預金通帳に接してきた相続税担当の元国税専門官・小林義崇氏は、著書『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』の中で、ごく「普通の人」が億単位のお金を手にする仕組みを分かりやすく解説。
今回は本書から一部抜粋し、ふるさと納税の意外と知らない仕組みとともに「やりすぎ厳禁」の理由について紹介します。
高所得者ほど得をする仕組み
特殊な節税方法である「ふるさと納税」も押さえておきましょう。こちらは「寄付額に応じた減税」ということで支出が伴うのですが、政策的な目的もあり、非常に有利な制度になっています。そもそもふるさと納税は、当時総務大臣だった菅義偉元総理が、「故郷の自治体に税金を納められるようにしたい」との思いから主導し創設されました。これにより2008年5月に制度が開始し、その後は控除枠の拡充や手続きの簡素化が進んで今に至ります。
ふるさと納税の特徴は、所得に応じた上限額以内で寄付をすると、実質負担が2000円で収まるということです。たとえば10万円を寄付したとしたら、その後に9万8000円分の減税効果が生じ、差し引きの負担は2000円になります。
つまり、減税効果があるものの、それ以上の金額を寄付しているわけですから、税金を前払いしている形に近いのです。
これだけを知ると、「結局2000円の負担が出るなら損では?」 と思いそうですが、続きがあります。
現在、全国の地方自治体は、寄付をしてくれた人に対してさまざまな返礼品を用意しています。ということは、2000円の負担で、地域の食品や日用品などの返礼品をもらえるというわけです。
このふるさと納税を、収入の多い人々は積極的に利用しています。
基本的に日本の税制は、所得が高い人ほど負担が大きくなるのですが、ふるさと納税の場合は高所得者ほどメリットが大きくなる仕組みになっています。
高所得者の中には、毎年まとまった金額を寄付して、全国各地から特産品を手に入れるのを楽しみにしている人が少なくありません。
減税効果にタイムラグあり
ただし、ふるさと納税は、他の節税方法よりも減税効果が生じるまで時間がかかる特徴があります。たとえば会社員の方が2025年1月に寄付をした場合、2026年6月から2027年5月の給与から差し引かれる住民税が減額される形です。
このように、節税効果が12カ月に分割して生じるので、寄付をしたお金が戻ってくるまでにかなり時間がかかります。
ふるさと納税をすると、しばらくの間は財布の中が寂しくなってしまうので、やりすぎ厳禁です。基本的には、2年ほど戻ってこなくても困らない金額を寄付するのを意識するといいでしょう。
今後もなくならない節税策
iDeCo、NISA、住宅ローン減税、ふるさと納税は、お金が残る節税策の代表と言えます。これらの有利な節税方法の細かい仕組みは変わっていくかもしれませんが、今後もメリットの高い節税方法として残り続けると考えられます。
少子高齢化から公的年金だけでは将来が不安視される中、NISAやiDeCoなどの資産形成に関わる制度の必要性は今後も高まる一方です。
住宅ローン減税についても、国民の生活や不動産市場の活性化のために制度は残るでしょうし、とくに省エネ性能が高い住宅は有利になるでしょう。
ふるさと納税については賛否がありますが、地方活性化の文脈からは今や欠かせない制度となっています。
政府がどのような方向を目指し、インセンティブを設けているのか。このことに目を向けながら、メリットが大きな節税方法を積極的に取り入れていきましょう。
小林義崇(こばやし・よしたか)プロフィール
1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っ
っている。







