妻の心配がずれている
「うちの妻は、心配するポイントがどこかずれているんですよ。だからといって怒るのもおかしいけど、なんだかいつも神経を逆なでされてしまう」そう嘆くのはユウイチさん(42歳)だ。結婚して10年になる妻は、夫のことも一人息子のことも愛しているし、だからこそ心配する。ところがそのポイントがずれていると彼は言う。
「先日も僕は出張で遠方へ行ったんです。その日は日帰りだったし、行った場所は大雪だったから妻も天気予報を見ながら心配していたんでしょう。案の定、新幹線が遅れ、東京駅に着いたのは夜もかなり遅くなったころ。そこから在来線を乗り継いで自宅に戻ると深夜0時を回りそうだった。だから東京駅から電話したんです。『今どこにいるの?』と妻が言うから『東京駅の構内』と答えたら、『早くタクシーに乗りなさいよ』といきなり言う。電車で帰れる時間だったらうちの会社、タクシー代なんて出ないし、今から外に出てタクシー乗り場に並ぶ方が大変だよと言うと、『疲れてるんだからタクシーに乗って!』と悲鳴に近い声を出すわけです。もういいよと電話を切りました」
妻は出張のたびに、飛行機に乗るなら羽田空港までタクシーで行けばいいじゃないとやたらとタクシーを推す。ユウイチさんは「遊びに行くわけじゃないんだよ。タクシーでいくらかかると思ってるんだ」と言うが、それでも妻は「電車で行くのは大変よ」と大きな声で説得しようとするのだそう。
お嬢様育ちではないのだが……
「だからタクシー代が高いんだってばと、先日はこちらも大声で言ってしまいました。私はあなたを心配しているのに、どうして怒るのよと言うから、そのタクシー代を誰が出すんですかって言ってるわけ、と怒鳴ってしまった。だいたい、仕事でタクシーに乗れるほど僕はエラくないんですよ」妻はお嬢様育ちではない。ごく普通の会社員の娘である。きみのお父さんは出張に行くときタクシーに乗っていたのかと聞いたこともあるが、妻は「さあ」と言って明言を避けた。
「かといって妻が特別タクシー好きなわけでもない。彼女の心理がいまいちよく分からないんですよ」
出張の行き帰りにタクシーを使えるような立場になれという嫌みなのだろうかと、最近、ユウイチさんは思うようにさえなっているという。
寒いからと心配するのはいいけれど
同様に、妻の「ある意味親切、でもある意味ポイントがずれている」アドバイスをうっとうしく感じていると言うのはタカシさん(46歳)だ。「決して妻との関係が悪いわけではないんですが、この冬は寒い日が多いせいか、出勤時の妻のアドバイスが半端じゃなくて困っています」
朝はテレビをつけてニュースや天気予報を見ている妻は、今日は寒いと聞くとすぐにマフラーやカイロを出してくる。それが自分たちの住んでいる場所の予報ではないときも多々あるらしい。
「西日本から北日本の日本海側が寒くて強風だとすると、妻は日本海側という言葉を聞き逃す。今日は寒くて風が強いんだって。コートはこっちの分厚いのにして、マフラーもしっかりしてと言い出す。コートのポケットにはいつの間にかカイロが入ってる。そんな感じなんです」
とはいえ、タカシさんの住む東京近郊、会社のある東京はそれほどの寒さではなかったということが何度かあって、彼は妻の天気予報の聞き方がおかしいのだと分かった。
妻のおせっかいがうっとうしい
「妻に言っても、だって天気予報で言ってたもん。寒いよりマシでしょと。そもそも僕はそれほど寒がりではないし、真冬でも薄手のコートで十分なんですよ。それ以来、分厚いコートは着ないようにしているし、自分でも最高気温をチェックするようにしています。でも妻は相変わらず、寒いから風邪ひかないように暖かくしていってと言うんだけど、汗でもかいたらもっと冷えるわけだし……。彼女は彼女の思い込みだけを押しつけてくるんですよね。それがうっとうしい」いちいち寒いだの何だのと言わなくていいと言ったこともあるが、「あなたが風邪ひかないようにするのも私の務めだ」などと言いだした。
「放っておいてくれと思わず言ってしまいました。優しい妻をいじめる夫みたいに思われたかもしれないけど、そうやっていちいち些細なことまで世話を焼かれるのが僕は耐えられないんですよ。結婚して10年近くたつのに、妻のそういうおせっかいは年々、ひどくなるような気がします」
何を着ていこうがその人の判断、その人の基準がある。些細なことでも積もり積もれば、うっとうしさにつながっていく。「些事こそ大事」という言葉もある。夫婦の関係は些細なことから亀裂に変わっていくのかもしれない。








