人間関係

冷蔵庫の食材を盗られるのが苦痛……。傍若無人な娘一家を「出禁」にした70代夫婦の葛藤

実の娘との関係に悩む高齢女性が増えている。実家だからと甘える娘一家の存在が、年金頼みでぎりぎりの生活を強いられている高齢者にとっては重荷なのだ。一億総中流時代が崩れ、親子関係にも変化が起きている。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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高齢者世帯と子ども世帯との関わりにも変化が(画像:PIXTA)

高齢者世帯と子ども世帯との関わりにも変化が(画像:PIXTA)

以前は義両親との相性について悩む声が多かったが、最近は高齢となった母親の立場から娘との関係に困っているという話をよく聞くようになった。一億総中流時代が崩れ、今や高齢者も貧富の差が激しくなっている。

金融経済教育推進機構が公表した2025年の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、70歳代で二人以上世帯の金融資産保有額の平均値は2416万円だが、これは一部富裕層によって引き上げられているので、実態に近いとされる中央値でみると1178万円となる。

この中で、金融資産非保有者が10%を超えており、300万円未満と答えた人も13%を超える。つまり4世帯に1世帯は300万円に満たないのだ。年金だけに頼っている世帯は予想以上に多いのかもしれない。

娘とはうまくいっていたけれど

「近所に娘一家がいます。孫たちが小さいときはよく面倒を見たけど、今や娘も40代、孫たちも高校生と中学生。たまに遊びに来るとそれなりに食事を用意しなければいけないし、小遣いをせびられることもあって……」

表情を曇らせるユカリさん(75歳)。同い年の夫と暮らしているが、二人の年金を合わせても23万円程度。食べていくだけなら何とかなるが、最近では医療費や光熱費がかさんできた。家電製品が壊れたりすれば、「夫婦で青ざめる」という。

昨年、ユカリさんは夫と話し合って、「なるべく娘一家が来るのを阻止しよう」ということになった。娘は共働きのため、時々車で20分程度の実家にやってきては冷蔵庫や冷凍庫をのぞき、「お母さん、これちょうだい」と持ち帰るのが常だ。

「夫が現役のときは笑って見過ごしていたけど、今は私たちの食材を盗られると思ってしまう。何度も『うちも大変だから、持っていかないで』と言っていたのですが、娘は“大変”の意味を取り違えていたみたい。私がまた買いに行ったり作ったりするのが大変だと。でも実際は購入費用が大変ということなんです」

娘夫婦が突然やってきて

娘が心配するから、家計については内緒にしていたが、「年金だけで大丈夫?」と聞かれたこともない。親には一生甘えていいと思っているのではないかと考え、二人は娘や娘一家が「週末、行こうと思うんだけど」と言われるたびに、「その日は町内会の用事があって」「その日は二人で出掛けるから」と言い訳を続けた。

「さすがに娘も不審に思ったんでしょうか。ある日突然、連絡もなしに夫婦でやってきたんです。その日、私たちは冷蔵庫の大掃除と称して、残り物で簡単な炒め料理をして食べていました。それが娘に見つかって。『そんな食事じゃ栄養がとれないわよ。高齢者の低栄養が問題になっているのに』と文句を言い始めた」

心配してくれるのはありがたいけど、たまにこうやって食材ロスをしないようにしてるの、しかもこれならお金がかからないでしょと、ユカリさんは内情を白状した。

傍若無人な娘の態度に

娘はさすがに両親世帯にあまりお金がないことに気づいたようだ。ユカリさん夫婦は、娘から一円たりとももらうつもりはなかった。

「それなのに娘は突然、『以前、お母さんに子どもたちの面倒を見てもらっていたころ、けっこうお小遣いってお金を渡してたよね。ああいうのどうしてたの? みんな使っちゃったの?』って。あたかも私たちが無駄遣いしているかのように、自分の夫の前で親をなじった。私もつい熱くなって、『いったい、いつの話よ。10年以上も前でしょう。しかもあんたはごくまれにしか渡さなかった。孫たちには毎日のように私たちが夕飯を食べさせていたし、あんたもよく持って帰ってたよね』と言ってしまいました」

ユカリさんの夫が、まあまあと割って入ったので、「うちはもう高齢者二人だから、静かに暮らしたいだけ。放っておいてくれるのが一番の親孝行だよ」と穏やかに言いました。娘は財布から1万円を取り出して「明日はこれで何か食べて」と渡してきた。そのやり方に、ユカリさんはますます腹を立てた。

まったく来なくなった娘一家

「夫が『こういうことはしなくていいから。子どもたちに何か買ってあげなさい』と娘の手に戻しました。娘は不機嫌なまま帰って行った。『どうせ私たちを頼らなければやっていけないでしょ、今後』とまで吐き捨てるように言って。それが昨年秋のことで、結局、この年末年始も顔を見せませんでした。年が明けたところで孫からLINEがあったので、それには返信しましたが」

娘を不快にさせたのは分かっているが、自分たちの暮らしは自分たちで何とかしたい。憐れまれたくないし干渉もされたくない。

「最後までその意志が貫き通せるかどうか分かりませんが、少なくとも今のところは私たちをそうっとしておいてほしいんです。娘とはいえ、もう世帯も別だし、なかなか分かりあえないですよ。たまに会うくらいの方が、互いに不快な気持ちにはならないと思う」

この3が日、ユカリさん夫婦は、それぞれの趣味に熱中しながら、のんびり静かな時間を過ごしたという。

<参考>
・「家計の金融行動に関する世論調査」(金融経済教育推進機構)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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