今回は老後の「暮らし」にとって考えておきたい3つのポイントについて、残念な老後につながりやすい「がっかりルート」と、理想の老後に近づく「にっこりルート」を、介護アドバイザーの横井孝治が解説します。
【ポイント1:趣味】大切なのはアクティブに活動する気持ちや理由
1つ目のポイントは「趣味」です。老後は自分の趣味を楽しみながら、悠々自適な暮らしを満喫したいと考えている人は多いでしょう。ただ、仕事や家事、子育てなどに追われ、これといった趣味を持っていない人が、いざ高齢といわれる年齢になると、急いで趣味を見つけなければいけないと焦ってしまう傾向もあるように感じています。
<がっかりルート>
では、その趣味についてがっかりルート、つまり無趣味だった場合のリスクはどのようなものがあるのでしょうか。無趣味のままだと時間を持て余し気味になります。高齢になると社会活動などはどうしても減る傾向にあり、自分で楽しみを見つけておかないと退屈してしまいます。
次に、運動量や脳への刺激が少なくなるため、身体的な老化はもちろん、認知機能の低下が進みやすくなると思われます。
そして、趣味づくりを義務的に捉えてしまってつらくなるリスクもあります。「何か趣味を作らなければいけない」と考え、さまざまな教室を渡り歩いたり、あまり興味のないところまで顔を出して学ぼうとしたりしても、興味を持てないことは少なくありません。結果としてストレスを溜める原因になることも多いです。
<にっこりルート>
では、にっこりルートを歩むためにはどうしたらいいのでしょうか。筆者はまず「ボランティア活動」に参加するのがいいのではないかと考えます。
地元の社会福祉協議会やボランティアビューローなどに連絡して、通学路の旗振り当番や河川敷の美化活動などいろいろなボランティアに参加してみる。これは社会参加になり、生活習慣的にはメリハリができます。特に通学路の旗振り当番は毎日のように活動があるわけですから、自動的に朝早起きすることになり、子どもたちと触れ合うことで気持ちが若返ったりもします。
そして、ボランティア活動を通じて雑談ができる仲間や、お茶を飲む仲間も増えていくでしょう。そこで1人でも仲良くなれそうな人を見つけてみる。そして「あなたがやっている趣味に自分も興味があるから一緒にやってみたい、教えてくれないか」「趣味の集まりがあったら一緒に顔を出してみたい」などと伝えて、その人をきっかけに興味を深めて趣味の幅を広げていく。この2段階で進めていくのがいいと考えます。
重要なのは趣味を持つことそのものではありません。アクティブに活動する気持ちや、アクティブに活動する理由をつくることです。
【ポイント2:田舎暮らし】自治体が求めているのは基本的に“若者”
2つ目のポイントは「田舎暮らし」です。長年都会で暮らしている人の中で、田舎暮らしやスローライフに憧れている人は多いでしょう。そして、退職金や各自治体による移住支援金を使って地方に移住しよう、生まれた田舎で老後を送ろうと考える人はとても多いです。実際、筆者もさまざまなメディアから「田舎暮らしのコツを教えてほしい」「田舎で老後を迎える幸せについて聞きたい」といった取材依頼が数多くあります。<がっかりルート>
しかし、そもそも、いきなり縁もゆかりもない地方に移住し、その地域の文化や風習になじむのはなかなか難しいです。そして医療や介護をはじめ、さまざまな社会的サービスも、都会と比べると地方、田舎の方が充実していないケースが多く、「不便だな」と思う機会はとても増えてくるでしょう。
「自分の出身地に戻ればそのあたりの問題がないのでは?」と考える人は少なくありませんが、あなたの配偶者はどうでしょうか。夫婦ともに同じ地域の出身なら、昔なじみの人もいるでしょうから、比較的うまくいきやすいかもしれません。しかしどちらか一方の地元に移住する場合、難なく過ごしていくのは簡単とは言えません。
もともと都会暮らしの配偶者と一緒に地方に移った場合、配偶者としては「なんだこの田舎は」と困惑するケースも多いです。結果として夫婦仲が悪化してしまい、非常に厳しい老後を送るがっかりルートを歩むことになりかねません。
<にっこりルート>
では、にっこりルートを選ぶにはどうしたらいいのでしょうか。そもそも、田舎に行くのをやめてみてはどうでしょうか。今暮らしている地域や都心の近郊で家庭菜園を始めれば、スローライフは十分に体験できるはずです。しかも趣味の範囲で農作業をしながら、体を動かすため健康づくりにもつながっていきます。
もし病気にかかり農作業が難しくなってしまったとしても、家庭菜園の契約を解除するだけなので、生活そのものへのダメージは少ないですよね。生活基盤をすべて田舎に移して、田舎で暮らすのが厳しくなったからまた都会へ戻ってこようとするのは、なかなかハードルが高いものです。
実は押さえておきたい大事なポイントがあります。それは、自治体が求めている移住者、移住支援金を出す相手は原則“若者”であるということ。なぜなら、若者に来てもらい町を活気づかせたいからです。
高齢者にきてほしいという自治体は現実的には少ないはず。社会的コストがどうしてもかかりがちになるからです。医療や介護など、さまざまなコストがかかってしまうシニアを歓迎してくれる地方はあまりないのが実態ではないでしょうか。
【ポイント3:免許返納】問題があればいさぎよく返納してリスクを軽減
3つ目は「免許返納」です。車がないと不便、運転が趣味といった理由から、運転能力が衰えた後も免許返納を嫌がる人はとても多いです。しかし筆者は、高齢かどうかにかかわらず、運転能力の衰えた人が運転し続けることは問題が大きいと考えています。<がっかりルート>
免許返納のがっかりルートは、自分に対して過度な自信を抱き、「自分に限って事故を起こすはずがない。免許を返す必要もない」と考えてしまうこと。
一般的に年齢を重ねると運転能力自体が落ちていくのは当たり前のことです。人間は必ず老化するものです。結果として事故のリスクが高まっていき、場合によっては自損事故だけでなく、誰かを巻き込む重大事故を起こしてしまうことも多いです。
SNSやさまざまなメディアで、警察庁のデータを参考に「高齢者と比べて若者の方が運転が下手くそ。なぜなら事故の件数が多いから」という主張を見かけることが少なくありません。
しかし、実はその警察庁のデータをもう少し詳しく読み込んでいくと、高齢者の方が若者と比べて、人が亡くなってしまうような重大な事故を起こすリスクがはるかに高いことが分かるのです。
高齢者に対して運転能力を確認し、本当に運転能力が落ちていれば「もう運転をしないほうがいい」と判断してもらうのが、大事なことだと思われます。
<にっこりルート>
にっこりルートを選ぶには、認知機能テストや実技テストに問題があれば、いさぎよく免許返納することが必要でしょう。運転者自身はもちろん、歩行者など第三者を危険にさらすリスクが高い時点で、もう運転してはダメなのではないでしょうか。
そして免許を返納した後は、電動アシスト機能付きの自転車を利用するのもおすすめです。外出するのが少しでも楽になれば、車がなくてもある程度はどうにかなるでしょう。もちろん、車で数時間走らないとスーパーなどの店にたどり着けない地域に住んでいる場合は難しいかもしれませんが、地方都市なら車を使わなくても生きていく道は十分にあるはずです。
そしてもう1つの方法として、シルバー人材センターに買い物代行を依頼したり、ネット通販を利用したりする方法もおすすめです。
なお、運転能力がだいぶ下がってきたけれど「まだギリギリいけるかも」というグレーゾーンの人の場合は、衝突被害を軽減する自動ブレーキなどの先進安全技術を搭載した車、いわゆるサポカーへの乗り換えが必須ではないでしょうか。車がないと不便な環境で暮らしているのは、あくまで本人の都合です。周囲を危険にさらしてよい理由には全くならないと、筆者は考えています。
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