精神科医・和田秀樹さんの新刊『体力がない人の仕事の戦略』では、体力不足に悩む若いビジネスパーソンが、これからの新たな働き方を見つけるための指針を伝えています。本書から一部抜粋し、精神科医の視点から「体力がない人」の悩みについて紹介します。
「体力がない人」は何を悩んでいるのか?
日本の多くの企業で、若いビジネスパーソンの「体力不足」や「体調不安」が問題になっています。40~50代の管理職世代であれば、睡眠不足やストレス、運動不足や加齢などによって、年齢と共に自然と体力の衰えを自覚するようになりますが、最近では、Z世代を中心とした若い人たちに、次のような傾向が多く見られます。「いつも疲れていて、元気がない」
「体調を崩すと、すぐに休んでしまう」
「追い込みの時期にムリがきかない」
体力不足や体調不安は、パフォーマンスに大きく影響します。体力がないと、集中力や注意力が散漫になって、仕事の凡ミスが増えます。体調に不安があると、粘り強くタスク(課題)に取り組めないだけでなく、疲労が蓄積しやすくなります。
若いビジネスパーソンの体力不足や体調不安は、本人だけの悩みでなく、会社や上司、同僚にとっても頭の痛い問題となっています。体力のない人は、どのように仕事と向き合っていけばいいのか? 限りある自分のエネルギーを適正配分して、体力のない人や体の弱い人が効率よく働く秘訣をお伝えします。
働き方改革は「体力がない人」にとって逆風?
日本企業では、働き方改革によって残業が制限され、働く時間も短くなっていますが、こうした労働環境の変化は、体力がない人や体が弱い人にとって、必ずしも恩恵にはなっていません。働く時間は短くなっても、仕事の量は減るどころか、逆に増えているからです。労働時間が短くなった分だけ、集中力を高めて仕事に向き合うことを求められ、会社で残業ができないことによって、家に仕事を持ち帰る人も少なくありません。
働き方改革が進んだことで、ビジネスパーソンはこれまで以上に集中力や粘り強さを求められるようになったことが、逆に大きな負担となっているのです。意外に思うかもしれませんが、体力のないビジネスパーソンが悩んでいるのは、自分の体が弱いことや、体調を崩しやすいことだけではありません。
職場に「迷惑をかけている」プレッシャー
日常的に、「自分の行動が職場や周囲の人たちに迷惑をかけている」という不安を抱えているため、絶えず「職場の人に申し訳ない」と自責の念に駆られています。それがプレッシャーとなって、過剰なストレスを抱え込んでいます。体力がないというのは、目に見える病気やケガと違って、職場や周囲の人たちの理解を得られないだけでなく、日常の行動がネガティブに受け取られがちなことが、ストレスの原因になっています。
極度の疲労感を我慢して、必死の思いで出社をしても、職場の人たちはそれを「当然のこと」と考えます。体調不良を理由に会社を休めば、「またか」と顔をしかめます。繁忙期に体調を崩してしまうと、「仕事を舐めているのか?」と冷たい目で彼らを見てきます。
多くの人にとって、毎日出社することは「当たり前」のことであり、体調を崩して会社を休む人に対して、「なぜ、この人は当たり前のことができないのか?」と考えてしまいがちです。体力のない人は、周囲の人たちの冷たい視線を知っているから、我慢をしたりムリをすることが重なって、余計に体調を崩すことを繰り返しているのです。
和田 秀樹(わだ・ひでき)プロフィール
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。著書に『感情的にならない本』『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』など多数。







