リーニンはどんなメーカー?
リーニンは、1984年のロサンゼルス五輪における体操種目で、金メダル3個、銀メダル2個、銅メダル1個を獲得した体操選手の「李寧」が現役引退後の1990年に立ち上げたスポーツメーカーで、とりわけバスケットボール関連の製品(シューズなど)において大きな市場を獲得しているメーカーです。NIKEがマラソン向けに「ヴェイパーフライ」というシューズで“厚底シューズ旋風”を巻き起こした直後の2019年に、リーニンも厚底シューズとして初代「FEIDIAN」を販売しました。
しかし、この初代「FEIDIAN」はあまり特徴的な機能もなく、「NIKEのまね」という印象を抱いてしまったランナーも多かったようです。
最初の印象がよくなかったためか、その後「FEIDIAN」はバージョンアップを重ねていき、徐々に独自の機能が盛り込まれるようになっていっても、日本のマラソン・長距離界ではほとんど見向きをされず、箱根駅伝予選会において日本薬科大学のケニア人ランナーが「FEIDIAN 3 ULTRA」を履いたことはあったものの、箱根駅伝本番で「FEIDIAN」を履く選手は全く現れませんでした。
マラソンでも同様に「FEIDIAN」を履く有力選手はほとんど現れていませんでしたが、2025年夏に東京で開催された世界陸上の男子マラソンにおいてようやく現れ、エリトリア代表のアマレ選手が「FEIDIAN 6 ELITE」を履いて8位に入賞しました。
東京2025世界陸上男子マラソン8位入賞のエリトリア代表アマレ選手 ※画像:リーニン 公式Instagram
FEIDIANシューズの特徴
大迫選手が履いた「FEIDIAN 6 ELITE」はまだ日本では販売されていないのですが、日本で購入可能な最新モデル「FEIDIAN 5 ELITE」は、マラソンを走る筆者も持っています。「FEIDIAN 5 ELITE」の特徴はとにかく反発力が強いことです。足を地面に着地した際の跳ね返りがほかのNIKEやadidasの厚底シューズに比べて明らかに強く感じます。ただし、それゆえに「強く蹴るような走り方」をするとマラソン後半まで持たないので、足を地面にそっと置いていくような走り(フォアフット走法)をするとかなりよい感じで走れるシューズだと考えます。
このフォアフット走法とは、一般的なかかと着地ではなくつま先側でソフトに着地するような走り方のことで、マラソン大国であるケニアのランナーはよくこの走り方をしています。かかと着地に比べて走行時に地面から受ける衝撃が半分程度に抑えられるため、マラソンなどの長距離で好タイムを出すには有利な走り方とされています。
しかし、このフォアフット走法をするには、
(1)骨盤が前傾しているなどのフォアフット走法に向いた骨格をしていること
(2)土踏まずが大きく発達していること
などの要素が必要になってきます。これらを満たすランナーが少ない日本人はフォアフット走法で走るのは難しい面がありました。
そんな中、リーニンがここ1年ほどの間に中国で出願している特許内容を見ると、日本人などのアジア人でも、フォアフット走法を実現させられるシューズに関する特許を取得しようとしていることが分かります。
これらの特許出願の内容は、「アジア人でもケニアランナーのように走れるシューズ」を実現するための技術であるように見受けられ、大迫選手が日本記録を出した際に履いていた「FEIDIAN 6 ELITE」は、こうしたフォアフット走法に関する技術が盛り込まれているのではと考えられます。
では、リーニンが特許を取得しようとしている「アジア人でもケニアランナーのように走れるシューズ」を実現するための技術とは一体どのようなものでしょうか。
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