すぐに「1つちょうだい」というママ友
「もちろん倹約したいという思いもありますが、それ以上に、私は安いものを探して買うのが好きなんです。チラシを見ながら、日々、安く買うようにしています。それを“他店で買ったつもり”で貯金するんです。10円20円の世界だけど、それがささやかな楽しみにもなっていて……」そう言うのはアヤカさん(40歳)だ。パートで仕事をしながら、7歳と4歳の子を育てている。夫は中堅企業の会社員。お金がない、将来が不安だと言うのは簡単だが、言っても仕方がない、それより楽しみながら倹約しようというのがアヤカさんの信条だという。
「先日も少し自宅から離れたドラッグストアへ自転車で行ったら、いつも使っているアルミホイルが3本で700円しなかったんです。もちろん買いました。帰りにママ友にばったり会って『ずいぶん遠くまで行くのね』と言われたので、ホイルの話をしたら、『えー、すごい。3本セット? 1本ちょうだい』って。はあ? と表情が固まりましたね。彼女はそれを察知したのか『冗談よ、冗談』とあわてて逃げて行った。私はそんなふうに言われたこと自体が信じられなくて、しばらく自転車を漕ぐのも忘れました」
人の苦労も知らないで
生活費から捻出して購入しているのは当然のこと。同じ主婦という立場で、安く買えたことがどれほどうれしかったか、彼女には分からないのだろうかとアヤカさんはずっとモヤモヤを抱えてしまったという。「その晩、夫にその話をしたら、『1本くらいあげてもいいじゃん』と。何を? とまたイラッとしました。人の苦労も知らないで、よくそういうことが言えるわねと。お金の問題じゃないんですよ、自分が何の努力もせずに、人が買ったものを平然と『ちょうだい』と言える神経が分からないんです。そもそもホイルなんてどこでだって買えるんだから買えばいい。安く買いたいなら私が行ったドラッグストアまで行けばいい」
アヤカさん、かなりご立腹である。
妹に話したら
アヤカさんは、夫に共感してもらえなかったので、妹ならと話してみた。妹も二人の子をもち、同じような所得で生活しているので分かってもらえると思ったのだ。「だけど妹は、『お姉ちゃん、その人のこと嫌いなの? 嫌いな人じゃなければ私ならあげちゃうけどね』と。ええー、あんたはそういう人だったのとビックリしました。妹は妹で、『お姉ちゃん、せこすぎる』と大笑いしてる。『きっとそこでホイル1本あげたら、次の日にもっといいものお返しにくれたかもよ』と笑いながら言っていました。別にそういう話じゃないのよと、私のモヤモヤを詳細に話したんですが、それでもやはり分かってもらえなかった」
ちょうどホイルがなかったの、1本売ってもらえないかしらと言われたら、アヤカさんは「いいよ、あげるよ」と言ったと断言する。お金を出す気もなく、人がゲットしてきたものをもらおうという魂胆が嫌なのだ。いつもは仲よくしているけど、あの瞬間、彼女に対する不信感にも似たものがわき起こったそう。
「『どうでもいいじゃん、そんな話。お姉ちゃんはケチだったというだけのこと』と妹は言いますが、本当にそうなのかな、私がケチなだけなのかな、とさらにモヤモヤが止まりませんでした」
わが娘までも
あげく、数日後に下の子を預けている保育園に行くと、先生から「お宅のお子さんは気前がいいというか、優しいですね」と声をかけられた。「なんでも娘が使っているクレヨンを、友達がほしがったそうなんです。そうしたら娘、あっさりとあげちゃったんですって。先生があわてて間に入って、そんなことしたら娘ちゃんのクレヨンがなくなるでしょ、お友達はそのクレヨンを持っているんだからほしがらないのと言ってくれたそうです。わが娘は気前がいいのかと愕然としました」
もっと小さいころから、娘は所有欲があまりなかった。兄におやつをとられても、怒りはするが執着はしない。あっさりと許してしまうところがあった。
「あまり所有欲がないのも、人に流されそうで問題だなと思っていたんです。夫も所有欲がなくて、人の言うことをうのみにして損をする気質だから、なんだか心配になります」
アヤカさんのモヤモヤは、娘のこともあって、さらに大きくなっているという。








