しかし、大金を得たときこそ、その後どう扱うかが重要。大きなお金を手にしたときほど、人の本質や「お金への向き合い方」が試されます。その扱い方1つで、資産を守れるか、あるいは気づかぬうちに減らしてしまうか、明暗が分かれるといえます。
今回は、保険営業の仕事で出会った、ご主人を亡くし多額の資産を手にしたAさんのエピソードをご紹介します。彼女が実践した資産の守り方、そして着実に1億円を達成した心構えをひもといてみましょう。
ご主人が残した大きな資産。その資産を守り抜いたAさん(当時55歳)
Aさんのご主人は、地方企業の管理職として勤め上げましたが、退職後まもなくお亡くなりになりました。奥さまは、子ども3人を育てた専業主婦でした。奥さまが55歳のときにご主人が亡くなり、受け取った保険金は5000万円。ご主人の退職金やそれまでの貯蓄と合わせると、初期資産は約8000万円あったそうです。
彼女はこう言いました。「これらのお金は、夫が毎日働いて稼いでくれたお金です。私の生活費で消してしまうわけにはいきません。これは今後、家族に何かあった時のためにとっておきます」。
ご家族から「ゆっくりしたら」と言われたものの、暇を持て余すと余計なお金を使うことになると考えたAさんは、55歳から働くことを選択。
65歳までの10年間、近所の事業所で働き、日々の生活をまかないました。また、お休みには自宅でこぢんまりしたお店を開き、副収入を得るなどして、ご主人が残した資産には一切手を付けませんでした。むしろ、2つの収入を手堅く管理して貯蓄に回した結果、65歳になった時点には約1億円を達成。彼女の老後に、不安はありません。
老後資産を守れる人に共通する3つの特徴
Aさんには、もともとの貯金や、ご主人が亡くなった時に受け取った保険金がありましたが、彼女の根本にあるのは「堅実さ」です。老後資金に1億円を達成できる人には、共通点があります。それが次の3つです。
●特徴1:お金の「重み」と「背景」を知っている
Aさんは、受け取った保険金が、「夫が積み重ねた努力の結晶である」ことをよく理解していました。お金の裏側にあるストーリーを知っている人は、衝動的に使うことがありません。
一方で、お金を「たまたま手に入った潤沢な資金」としか捉えない人は、想像以上のスピードで使ってしまうことがあります。
お金を数字だけで見るか、誰かの労働や思いの結晶として見るか。この違いは、資産の守り方に大きく影響します。
●特徴2:「身の丈」を知り、手堅さを選ぶ
Aさんは、「自分自身には、大きな資産を運用したり増やしたりする経験がない」という事実を冷静に受け止めていました。
そのため、以下のルールを設けたそうです。
・高リスクな投資に手を出さない
・「誰かのよい話」に期待しない
・生活費は、自分で働いたお金でまかなう
という、堅実で確実な方法を選択しました。お金は、自分の経験値を大きく超えた扱い方をすると、うまくいきません。自分を知る、身の丈を知ることは、資産を守るための武器となります。
●特徴3:孤独を「散財」で埋めない
大金を手にした人が陥りやすいのは、心細さ→気晴らしの外出→よく分からないコトやモノにお金を使うというループです。
特に配偶者を亡くした後は、不安や孤独が強まり、その気持ちを紛らわせるために交際費が増えてしまうケースが考えられます。
Aさんは、「暇を持て余すと余計なお金を使う」ことを予測して、そうならないよう「働く」という健全な選択をしました。働くことで社会とつながり、規則正しい生活になり、不安に支配されることもなくなる。結果として、資産を守り、さらに増やすことにもつながったのです。
何が、結果の明暗を分けたのか?
まとめると、Aさんが8000万円という資産を守り、1億円を達成できた理由は、「大金を手にしても、いつも通りの暮らしを貫き、さらに働くことを選んだ」からだといえます。お金は“堅実な人のもと”に残るものです。Aさんの、
・大きなお金があっても生活レベルを上げない
・自分ができる範囲で地道に働き続ける
・節約生活を実践して貯金を続ける
この3つを淡々と続けた姿勢が、老後資金を長く守り、さらに育てる力になったのでしょう。








