昨年の経験から帰らないと決めた
今年は帰らず、一人暮らしの部屋でゆっくりすると決めたアヤナさん(36歳)。なぜなら昨年、親戚も集まる前で、親と兄から「屈辱」を受けたからだという。「親戚たち20人くらいがいる中で、母が『この子は東京に行ったきり、結婚もできないで仕事ばかりして』と私のことを言ったんですよ。すると叔父が『誰かつきあっている人でもいるんだろ』と笑い飛ばそうとしてくれた。それなのに兄は『こんなヤツ、誰ももらってくれないだろ』って。結婚することを『もらってもらう』という言い方をするのも嫌だったし、それを聞いて『ほんとだよね』と言い合っている両親にも腹が立った」
そもそも結婚なんて、するもしないも個人の問題。それを「できない」とし、「もらってもらえない」と決めつけるのは、個人の尊厳を傷つけるとアヤナさんはいきり立つ。
「だけどいまだに実家はそういう価値観なんですよね。私も無意味に傷つけられるのは本意でないので、今年は帰りませんと電話で早々に宣言しました」
すると母は「今年も結婚できなかったから、恥ずかしくて帰れないの?」と言った。アヤナさんは黙って電話を切った。母がそこまで娘の結婚にこだわるのは、娘の幸せを願っているからではなく、他人の目を気にしているからだとアヤナさんは感じている。
娘の人生を型にはめたがる母
「昔はもっとおおらかな人だったんですけどね。小さな町に暮らしているから、大きな夢を抱いて東京の大学へ行けと言ったのは母自身。それなのに自分が年をとっていくにつれ、私に帰ってきてこっちに住めというようになった。兄が結婚して実家近くに住むようになったら、今度は東京にいてもいいから結婚はしろと。娘の人生を型にはめないと安心できないのは、母が年取った証拠かもしれません」アヤナさんはそう冷静に分析する。自分が傷つくのも嫌だが、母にそう言わせるのも避けたいのだという。
「結婚は、私の人生の選択肢の1つに過ぎない。それを母に分かってもらうのは無理だということが分かったので。無用な争いを避けるために、今年は年末、行きつけの居酒屋でみんなでパーティーをして、ゆっくり休むつもりです。私はシフト制の仕事なので、1月1日から誰かと仕事を代わってもいいかなと思っています」
頼れるのは仕事。そう言ってアヤナさんは笑顔を見せた。
帰りたいけど帰れない
「女三界に家なしって古い言葉を思い出してしまいました」ユウカさん(39歳)はそう言った。いつもなら年に1度、戻ってくる独身の娘を歓待してくれるはずの実家なのだが、今年はそうはいかなくなった。
「弟が数年前に結婚して、子どもが二人いるんです。最初は実家で両親と同居していたんですが、母と義妹の相性が悪くて、弟一家は近くに別居した。それでうまくいっているのかと思ったら、弟夫婦の関係は微妙なままらしい。母は、義妹の両親にそのことを話して自分で年末年始に呼んだらしいんですよ。両親と弟までやってくるんだそう。夫婦のことは夫婦に任せなさいよ、どうしてそこへ両家の親が介入するのって私は言ったんですが、母は『うまくいくように周りが心配してるのよ』って。それがよけいなお世話なのに」
あんたは関係ないから帰ってこなくていいと母に言われ、ユウカさんは少なからずショックを受けた。母に心配をかけている弟のほうが、母にとっては大事なのだろう。「家庭」をもっているからだ。
親にとっては同じ子どものはずなのに
「まあ、そりゃそうなんだろうねと納得もしますけど、一人で生きているからって軽んじられることもないはずなのにとも思います。親にとっては同じ子どもなんですから。弟はまっとうな人生を歩んでいて、独身の私はそうではないのかなとちょっといじけてしまいますね」とはいえ、ユウカさんに今のところ結婚の意志はない。母は結婚しない娘を責めはしないが、不安定な結婚生活を続ける弟には心配をむき出しにして干渉している。
「弟だってもう大人なんだから、自分の結婚生活くらい自分で考えているだろうし、もし協力するなら、孫は預かるから二人の時間をとりなさいというほうがよっぽどおしゃれだと思うんですけどね。そういう方向にはいかずに、相手の親を呼んじゃうって、私からすると何やってるんだかって感じです」
親はいつまでたっても子どもが心配なのと母は言い切るが、その姿勢が子どもをだめにするのかもよとユウカさんは母に言ってみたそうだ。








