20代、30代、40代と、ライフステージは異なっても、女性たちはそれぞれワーク・ライフ・バランスの問題を抱えています。そこで今回は、夫婦関係に悪影響を及ぼす可能性のある“ワーク・ライフ・アンバランス“な具体例を紹介します。
<目次>
夫婦関係の満足度には「ワーク・ライフ・バランス」が大きく影響
独立行政法人経済産業研究所の報告によれば、妻の夫婦関係満足度には、ワーク・ライフ・バランスが大きく影響しているそうです。具体的には、平日に夫婦で一緒に食事や会話をするなど「くつろぐ時間」を持つこと。さらに休日には、これらのくつろぎ時間の確保のほかに、家事育児に夫が参加することが重要だと指摘されています。しかしながら、現実の働く女性にとって、平日に「くつろぐ時間」はほとんどなさそうです。株式会社パソナが20代~50代の共働き女性100名に行った「共働き夫婦の実情」についてのアンケートによると、夫婦の家事分担では「自分が多い」と答えた人が平日で72%、休日で61%。育児分担では「自分が多い」と答えた方が平日で77%、休日でも48%となっています。
また平日の「自分の時間」が1時間未満という人が50%に上っており、「家事育児に忙しく、くつろいでいる時間がない」女性の「ライフ」の姿が浮かび上がってきます。
一方で、女性の「ワーク」についてはどうでしょうか? 同じアンケートでは残業についての質問があり、「残業はできない」と「セーブしている」を合わせた数字は妻が65%であるのに対し、夫は26%と、大きく差がついています。もちろん、残業をしないで済むことがベストですが、仕事上で男性と同等の責務を負っていても、女性の働ける時間は短いのです。
共働き女性のワーク・ライフ・バランスは、「家事育児の分担の多さ+自分時間の少なさ+仕事をする上でのハンデ」というトリプルネガティブなのです!
「まあ、しょうがないよね……」「社会がこうだから」「夫が昇進できないのも困るし」と無理やり腹落ちさせながら過ごしていると、夫婦仲にもマイナスの影響がジワリと出てきます。
「早く仕事がしたいのに」アスミさんの場合(29歳・仮名)
アスミさんはウェブデザイナー。広告代理店の社員として、数多くの企業ホームページなどを手掛けてきました。現在は第1子の産休・育休中ですが、来春の新年度のタイミングで子どもが5カ月になるので、保育園に預けて仕事復帰をしようと保活の真っ最中。しかし、ゼロ歳児を預けることに義母と夫が大反対をしているそうです。「義母は専業主婦でしたから仕方ないと思いますが、ゴリゴリの“母乳信者”。『ゼロ歳児の乳飲み子を預けるなんてとんでもない』と大反対。母乳で育てないと免疫力がつかないとか、母親の愛情不足で子どもが非行に走るなど、あらゆるところから、保育園に反対するんです。あきれるのは 夫が義母の影響を受けて、『離乳食も市販のものではなく手作りでないと……』などと言いだしたことです。はあ? 何言ってんの? と、つっかかってしまいました。
もちろん娘はかわいいし、愛情は十分注いでいます。でも、それとは別に私は早く仕事がしたいのです。デザインの仕事も、私の人生の大切な一部。それを彼は全く理解してくれません。はっきり言って、私のワーク・ライフ・バランスは第1子の出産と共にだだ下がり。それに合わせて彼のことが好きじゃなくなってきたかもです」
「妊活・仕事・家事の両立がつらい」コトハさんの場合(36歳・仮名)
コトハさんは地方公務員。現在、絶賛妊活中です。ホルモン剤の影響で体がむくんだり、めまいや頭痛がするなど、心身の不調と向き合いながら仕事と家事を両立しています。「『公務員は残業も少なそうだし、楽そうだよね』とよく言われますが、私のいる部署は結構残業があります。最近、民間では不妊費用の補助やら、妊活のための長期休暇制度があるなど、不妊治療に手厚いサポートをしてくれる会社もあるそうですが、公務員にはそこまで充実した支援がありません。
付与される特別休暇だけでは足りないので、有給休暇をやりくりして通院日を確保しています。でも夫は『有休が取れるだけでもいいよね。うちの会社なんて、有休使うのもハードル高いよ』などと、全くの他人ごと。無神経なやつだなあと思ってしまいます。
妊活の通院日で有休をどんどん消費してしまうので、最近ではよっぽどの体調不良でもない限り仕事は休めません。ホルモンバランスの乱れで体調が悪いのに、必死に働いて家に帰ったら、スマホゲームばかりしている夫にもイライラ。夫って、産後もこのスタイルを貫くのかな。このまま子どもを産んでいいのかな? と不妊治療をする意味すら見失ってきています。職場でも家庭でも心からくつろぐことができず、いっそのこと、結婚生活を全部放り出して、一人で自由に暮らしたいと感じてしまいます」
「職場も家庭も不公平」マリナさんの場合(43歳・仮名)
マリナさんは小学4年生と2年生の二人の男の子を育てるワーキングマザー。2回の産休・育休を乗り越えて仕事を継続し、現在は経理部門の管理職として勤務していますが、その道のりは順調ではありませんでした。「1人目の産休・育休の時には、『ゆっくり休んで戻っておいで』と上司も温かく送り出してくれました。しかし2人目ができたときには、真顔で『え? また?』と言われました。これハラスメントの一部ではと感じました。産休・育休で休んだ後、時短で復帰、そしてすぐに2回目の産休・育休というパターンを、『図々しい』と思ったのかもしれませんが。
1人目の育休復帰後は15時退社の時短勤務でしたが、フルタイム勤務者と同じ業務量を担当し、間に合わないと仕事をこっそり家に持ち帰っていました。そこまで頑張っても時短社員だからボーナス査定はいつも最低ランクしか付きません。会社の制度は不公平です。不公平なのは家事分担でも同じです。我が家は「家事は早く帰った方がやる」というルールだったので、結局、時短の私が全部やっています。夫は当然という態度。早く帰ってこようという気もありません。
毎晩、あわただしく2人の子どもの食事、お風呂、宿題のチェックなどを私1人でこなした後、夫はのんびりと帰ってきます。結局は、仕事も家事も頑張った人が損をするように感じています」
改善できるのは自分だけ
出産前、就学前、就学後とそれぞれ場面は異なれど、女性にさまざまな負担が偏り、“ワーク・ライフ・アンバランス”になっている様子がうかがえました。こんな状態のときに大事なことは、仕事と家庭のバランスがうまく取れているふりをしないこと。自分の負担は家族の未来のために仕方ないことと無理やり腹落ちさせないこと。「バランスはとれない。無理! 倒れる!」と投げ出してしまう勇気を持つことです。
全てをうまく回そうとすると、あちこちにひずみが生まれ、結局は夫婦仲を壊してしまうことになります。自分のワーク・ライフ・バランスを一番理解し、改善に向けて舵を切れるのは自分だけです。
人気ドラマにもあるセリフ「じゃあ、おまえ、やれよ」と叫んで「両立不平等論」を唱えてください。……と言う前に、「気づいてくれよ、パートナー」。
もちろん、気づいていても職場の環境からどうにもならないと思うパートナーさんもいます。
ならば妻が不機嫌ビームを出しているかを観察して、話を聞き出すだけでもトライしてみてください。
そう言えば、その昔のバブル期、女性が忙しい彼に投げる言葉として「仕事と私、どっちが大事?」というのがありました。比較するものを間違っている、即答できない投げ掛けでしたが、現代は「仕事をセーブしてでも互いを大事にし合おうよ」の風潮ではありませんか。夫婦のメンタルを一番に考えて、ぜひアンバランス是正に取り組んでみてください。
<参考>
・「夫婦関係満足度とワークライフバランス-少子化対策の欠かせない視点-」(独立行政法人経済産業研究所)
・「共働き夫婦の実情」についてのアンケート(株式会社パソナ)











