無症状の今こそ勝負! 脂肪肝と診断されたら、すぐに始めるべきことは?(※画像:shutterstock.com)
肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれます。痛みや違和感が出にくい臓器のため、健診で偶然見つかることが多いです。つまり「症状がない=軽い状態」と考えてはいけません。無症状の時期に放置されやすいことが、危険なのです。
脂肪肝のリスクと、すぐに始められる具体的な対策法について、総合内科専門医の視点からやさしく解説します。
「脂肪肝=飲み過ぎ」ではない? 「MASLD」「MASH」という新しい概念
脂肪肝は、以前は「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」という名称が使われていました。しかし現在では国際的に「MASLD(代謝機能障害関連脂肪肝疾患)」へ呼称が変更されています。「脂肪肝」は、お酒の飲み過ぎが原因で起こる病気と思っている人も少なくありませんが、それは誤りです。お酒を飲まない人でも発症することが多く、糖質のとり過ぎ、運動不足、そしてインスリン抵抗性による内臓脂肪の増加などが主な原因と考えられています。
特に「インスリン抵抗性」は重要なポイントです。血糖値が上がりやすくなるだけでなく、余った糖を中性脂肪として肝臓に蓄積させてしまうため、脂肪肝をさらに悪化させる引き金となります。つまり脂肪肝は、「代謝がすでに乱れ始めている」ことを示すサインと言えるのです。
また、以前「NASH」と呼ばれていた炎症をともなうタイプの脂肪肝は、現在では「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」という名称に変更されています。MASHに進行すると、肝硬変や肝がんへ至る場合もあり、非常に危険です。
ここで重要なのは「症状がない=安全」ではないという点です。無症状の段階から、すでに進行している可能性があります。脂肪肝は未来の健康リスクを知らせる“警告サイン”として受け止める必要があります。
今日からできる効果的な対策法は? 肝臓を守る「食事・運動・睡眠」の3ステップ
改善のためには、まず「生活習慣の見直し」が最も効果的です。特にポイントとなるのは、糖質のとり方と身体活動量です。食事は白米やパン・麺類などの「主食中心」から一歩視点を変え、野菜や海藻、豆類、魚などを先にとるよう、「順番」を意識しましょう。清涼飲料水や砂糖入りの飲料は、肝臓に脂肪をためやすい“液体の糖”の代表格です。まずは清涼飲料水をゼロにするだけでも、肝臓への負担は確実に変わります。
運動はジム通いなどの特別なことをしなくても構いません。短時間のウオーキングや筋トレを日常にちりばめるだけでも、肝脂肪は減り始めます。週に数回でも構いません。研究では、体重の5%の減量だけでも、肝脂肪が減少することが示されています。つまり、少しの積み重ねでも「肝臓は応えてくれる」のです。
さらに、睡眠とストレス管理も軽視できません。睡眠不足や慢性的なストレスは、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールを増やし、肝臓で糖の産生を促すため、肝脂肪を悪化させる可能性があります。つまり「いつも寝不足ぎみ」「少しイライラすることが多い」といった程度の変化でも、肝臓の代謝に影響するのです。
まずは、今日からできる小さな工夫から構いません。
- 寝る前のスマホ時間を短くする
- 寝る1~2時間前にぬるめのお風呂で入浴する
- 深呼吸を3回だけ意識して行う
無症状の今だからこそできる! 脂肪肝は元に戻せる病気
脂肪肝は「元に戻せる病気」です。そして、脂肪肝と診断された“今”こそ、生活を立て直し、回復するための大きなチャンスです。症状が出てからではなく、症状が出ていない今だからこそ始める意味があります。完璧である必要はありません。
食事の「最初のひと口」、階段を上る「数分」、スマホを置く「数十秒」……。小さな積み重ねが、未来の肝臓を守る力になります。
「放置」ではなく、「今すぐ対策」。それがMASLD/MASH時代の脂肪肝と向き合うための、最も確かな方法です。







