中学受験

“塾要らず”進学校のはずが不登校に……東大卒プロ家庭教師が指摘する「学校選び」2つの盲点

中学受験で合格したのに、子どもが学校に合わず不登校に……。その原因は、よかれと思って選んだ学校の“ある特徴”にあるかもしれません。入学後に後悔しないための、学校選びの盲点を解説します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

中学受験で進学校に合格した子どもが不登校に。原因はどこに? ※サムネイル画像:PIXTA

中学受験で進学校に合格した子どもが不登校に。原因はどこに? ※サムネイル画像:PIXTA

中学受験でせっかく難関中学に合格したのに、子どもが学校に行きたがらない……。その原因は、よかれと思って選んだ学校の「厳しさ」や「距離」にあるかもしれません。

中学受験で後悔したこと 失敗しない「頭・時間・お金」の使い方』(長谷川智也著)は、東大卒のプロ家庭教師である筆者が、中学受験経験者たちの失敗談に学び「コレさえしなければ大丈夫!」を伝授する一冊。

今回は本書から一部抜粋し、入学後に後悔しないための学校選びのポイントについて紹介します。
<目次>

要注意! 管理系進学校とは

【中学受験経験者の後悔……Mさんの場合】
「息子は中学受験を経て、共学の某私立中学校に入学しました。でも話を聞くと、帰国子女の強いタイプの女子が多く、うちの子はすっかり気後れしているみたいです。

自由で伸び伸びとした雰囲気がいいし、共学のほうが男子は伸びると思っていたけれど、息子にとってはちょっと違ったかもしれません。勉強量はすごく多くて遅れ気味になり、今後が心配です」(Mさん)

難関の中学受験を突破して晴れて入学。しかし、数カ月経つうちに、「うちの子にはこの学校は合っていなかったかも」と感じるご家庭も多いようです。僕が受け持った生徒さんでも、不登校気味になり、極端なケースでは、のちに退学になってしまった場合もあります。

学校選びの後悔をなるべく減らすためには、どうすればいいのでしょうか?

現代の教育の流れでは、中学受験の努力のすべてがムダになる、とまではいいませんが、それに近い状態になることが、どんなタイプの子にも起こり得ます。

今では不登校になる子の割合は、増えに増えています。

10年ほど前では学年に1人から2人といったところでしたが、ここ数年はクラスに1人2人いるのは当たり前、3人4人いるケースも珍しくありません。

入学後不登校になったり、五月雨登校になったりして、人生に無気力になるのが最も怖いことだ、と僕からは指摘しておきます。僕が思うに、不登校生が多い「学校」の傾向は以下の通りです。

●管理型が極まった、いわゆる「バキバキ管理系進学校」
●ほかの子との比較が多い学校(順位発表など)

です。その学校がバキバキ管理系型かどうかを見極める基準は、

●宿題が多い(毎日出る、長期休みもどっさり出る)
●小テストが多く(週4以上)、かつ追試基準が厳しい

などです。

誤解をしないでほしいのですが、このこと自体は、その代わりに放課後塾や予備校に行かなくていいということも意味し、決して悪いことではありません。

「管理系型学校」の本当の問題とは

問題は「追試の基準が厳しすぎる」場合に起こる、と僕は思います。

教え子の一人が通っているとある有名進学校では、追試基準が厳しく、時には学年で4人しか突破しないこともあったそうです。一緒にテストの解き直しなどもしたのですが、内容もかなり難しく、これは大変だなと思いました。合格点に届くまで何度でも追試があり、4、5回追試をするのは日常茶飯事だそうです。

ここまでくると、さすがに気が滅入ってくるのは、僕の中高時代を振り返っても、非常にわかる部分があります。

僕らの時代でも小テストは毎日のようにあり、点数が悪かった場合はそのすべてに追試があり、「追追追試」などは当たり前でした。

当時「東大に行くにはこれくらい当たり前」と自分では納得していたものの、自主的でない強制力のある学習は、それだけでやる気も落ちてくるものです。

それでもまだ僕らの時代は、先生方にもこちらにも気骨があり、負けん気が強いといいますか、まだ奮闘する人間は多かったように思います。

が、今の子にこれは通じないなと実感しています。

進学校の先生方には、小テストでは「基礎」さえ充実させればいいのであって、そんなに難しいものは要らない、ということをぜひ知っていただきたいです。

東大に進学したい場合でも、共通テストで8割くらいを安定してとれるようにするのが、今の大学受験の勝ち筋。東大の二次試験に基準を置いてはいけないと思います。

また、学年の半分が追試になってしまうような小テストは、ご自分の指導力のなさの表れだと思って、反省し、やり方などを工夫していただかねばなりません。

昨今、塾要らずをうたう「お世話焼き系」の進学校が増えていますが、追試があまりに厳しいところには注意しましょう。

1時間以上の通学は危険信号

また、もう1つ、入学後のリスクとして気を付けていただきたいのは、学校までの通学距離です。学校が遠いと、朝起きるのが早くなって睡眠不足になりやすかったり、通勤・通学ラッシュに巻き込まれてつらかったり、というのがあります。

それが青春時代特有のホルモンバランスの乱れや、人間関係のトラブルなどにつながりやすいです。

超がつく名門校に行きたい気持ちもわかりますが、電車で1時間以上かかるようであれば、お近くのまあまあいい学校で十分だと思います。今やカリキュラムには大きな差はほとんどありませんし、生徒の質もそこまで違いはありません。

それでも「どうしても!」というのであれば、学校の近くに物件を借りて、引っ越してしまうしかありません。

受験勉強真っ最中の転居はリスクになり得ます。しかし進路決定後に近くへ引っ越したご家庭は意外とありますし、それでうまくいっているケースがほとんどです。

持ち家でなければ、検討するのもありではないでしょうか?
  長谷川 智也(はせがわ・ともなり)プロフィール
ブログ名はジュクコ。1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学現役合格。卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。既存の固定観念にしばられない、生徒個人を見つめた指導で数々の実績を上げる。独自のプログラム「究極の受験セカンドオピニオン・スーパーコンサル」は年間300件を超える申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「武士メタルAllegiance Reign」のベーシストとしても本気で活動中。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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