中学受験

「中学受験の時は全国トップだった息子が……」プロ家庭教師が“最大の愚行”と危惧する学校選び

子どもの自主性を育む前に、親が受験勉強に干渉しすぎてしまうと、せっかく入った難関校でミスマッチを起こすことも……。後悔しないために知っておきたい、中学受験への親の関わり方とは? ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

中学受験での親の過干渉が、子と学校のミスマッチを生む? ※サムネイル画像:PIXTA

中学受験で増えている、子どもと学校のミスマッチとは? ※サムネイル画像:PIXTA

「こんなはずじゃなかった……」中学受験の成功談は数多くあれど、本当に知りたいのは“失敗”から学べる教訓ではないでしょうか。

中学受験で後悔したこと 失敗しない「頭・時間・お金」の使い方』は、そんな悩める親子に「コレさえしなければ大丈夫」というリアルな処方箋を示す一冊です。著者は、東大卒のプロ家庭教師として25年以上にわたり、独自の「単発授業方式」で数多くの家庭の問題を解決してきた長谷川智也氏。

本書より一部抜粋し、中学受験を経験した保護者たちの失敗談から、親の過干渉が招く入学後のミスマッチを著書が最大の愚行と言う理由を掘り下げます。
<目次>

親の過干渉が招くミスマッチ

【中学受験経験者の後悔……Kさんの場合】
「息子は某御三家の高校2年生。放任系の学校だったためか、親である私たちも合格した安堵で目を離したためか、入学後は全く勉強しなくなり、今はすっかり学年最下位グループに定着してしまいました。大学受験どころか、進級が危ういという状況です。

中学受験の時は、全国模試でもトップレベルだったのに、どうしてこんなことになったのか……」(Kさん)

現在、中高一貫校は大きく3つのタイプ、①自由放任系、②規律・お世話焼き系、③バランス系(①と②の中間)に分かれます。

偏差値が同じでも、タイプが全く異なることはよくあることです。例えば関東で御三家といわれるような学校(開成、麻布、女子学院、桜蔭、フェリスなど)や、関西の灘・甲陽、神戸女学院、東大寺学園などは、いわゆる「自由放任系」といわれています。

海城・浅野・聖光学院、豊島岡・洗足のような「お世話焼き系」の学校とは、かなりやり方に違いがあります。

「放任系」の特徴は、カリキュラムがオリジナルプリントである率が高く、小テストなどがない、もしくはあっても追試まではない、しかし進度は速く、面談なども少ない(または一切ない)などがあります。

概してフォローが少なく、良くも悪くも生徒を「大人扱い」します。

もちろん、あの激戦を突破してきたのですから、当然それだけのポテンシャルを期待されているし、それで何十年もうまくいってきた歴史があるのです。

しかし最近の子は、頑張って入った学校が放任系だったがゆえに不具合を起こすパターンが多くなっているのも事実です。

ちなみによく聞く、「学校が超放任系で、全く勉強しなくなってしまった」「学校がバキバキ管理系で、不登校気味になってしまった」という二つの悩みは相反するようですが、この根っこにある要因は同じだ、と感じます。

それは、親に「子どもの自主性」を上手に育てる視点がないから起こる、ということ。中学受験時を含めて、子どもの人生にあれやこれや親が関わりすぎていることによります。

あえて過激なことを申し上げますが、中学受験で重課金(塾などで多額のお金を使ってしまう)をしたあげく、親の世話焼きで受験勉強を進めて放任系名門校に行くというパターンを、僕は最も危惧し、最大の愚行だと感じています。

憧れの名門校を一心不乱に目指すのは良いですが、入学してから、さらには社会人になってから後悔しないように、悲惨な未来の可能性をここでお話ししておきたいと思います。

過干渉が招く「幼児教育化」

ネット社会では、どういう塾に行き、どういう順序を踏めば名門校に行きやすいかが、情報としては出ています。誰でも少し調べればわかるので、熱心な親御さんほどそれを調べては、我が子に実行していきます。

中には、子ども4人を東大理三に合格させた佐藤亮子さん(愛称・佐藤ママ)の圧倒的な物量作戦&効率化のノウハウに学び、塾のテキストや問題集をすべてコピーし、デカいノートに貼っている方もおられます。子どもがつまずいた問題をすべて集積し、進捗をエクセルで管理し……などなど、手をつくして我が子の管理をとことんしています。

このような学習スタイル自体は決して悪いことのようには思えません。

ですが、子どもに失敗させての学びがなく、自分で計画を組んで勉強をするという自主性を育めません。さらに、子どもにとって受験が自分ごとにならないままです。

言い方を変えれば、中学受験が「幼児教育」的になってしまっているのです。小さなころの子どもはかわいいもの。つまずきそうなら先に石を取り除いてしまうことも仕方がない部分はあるでしょう。

しかし小4を過ぎたなら、受験の必要性を話せば(なんとなくでしょうが)理解できます。

小6の受験直前期には、たいていの子がさすがに「受かりたい」と自分で思うようになります(もしならなければ、本人がまだそういう段階であった、ということです)。

もちろん、子どもはまだ10年そこそこしか生きていないので、判断やビジョンも未熟です。それでも、本人なりにいろいろ意見があり、本当は「こうしたい」「ああしたい」があるはずです。しかし「幼児教育化」しているご家庭ほど、子どもの意見を無視しています。親への反対を一切許さず、子どもの声にも聞く耳を持ちません。

子どもは何を言っても聞いてもらえず、フラストレーションが溜まり、それが高じて、ささやかな反抗として受験勉強をサボっている、という事態に陥りやすくなります。

こうなると当然成績は上がりませんし、親もお金をかけているわりには成果が出ず、誰も得をしない状況になってしまいます。

失敗経験こそが最大の贈り物

僕はいろいろな親子関係を見てきて、子どもにはしっかり失敗させて、失敗への耐性を10代のうちにつけてあげるのが、親としての最大のプレゼントになる、という確信を持っています。

考えてみてください。今の時代は、原始時代とは違い、失敗=死にはなりません。むしろ失敗の数が多ければ多いほど、経験値によって人生の正解に近づいていく世の中です。

ですから、あらゆるトライ&エラーを、10代のうちにこそ経験させてあげるべきなのですが、そうはなっていないのが今の中学受験の風潮であり、その先にある大学受験の流れです。

親も、子離れを意識して実践しないといけない時代になったともいえます。残念ながら子離れが全然できない、幼稚な親が増えているのも事実だと思います。

ネットで手に入る情報を集め、最良のカリキュラムを手に入れ、良い塾、良い学校に入る、というのはいいでしょう。

しかし最終的には、「子どもが自分で選び、できるようにする」というのが、受験という関門を超えた先にある、子育ての最終目標のように思います。

失敗や挫折、葛藤がないまま「最短コース、最大効率で育った子」は、一番人生に挫折しやすいように感じます。 長谷川 智也(はせがわ・ともなり)プロフィール
ブログ名はジュクコ。1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学現役合格。卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。既存の固定観念にしばられない、生徒個人を見つめた指導で数々の実績を上げる。独自のプログラム「究極の受験セカンドオピニオン・スーパーコンサル」は年間300件を超える申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「武士メタルAllegiance Reign」のベーシストとしても本気で活動中。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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