暮らしの法律

「退所後に芸名を変えさせるのはダメ」公取委の指針発表で気になる…のんは芸名を能年玲奈に戻せるのか

公正取引委員会が、タレントが退所した後に事務所が芸名使用を制限するのは独占禁止法違反の可能性があると発表しました。これを受けて、2016年に「能年玲奈」から改名した俳優・アーティストの「のん」さんが、「能年玲奈」に芸名に戻せるのかなどを芸能関連の契約の専門家として解説します。※画像:PIXTA

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

...続きを読む
公正取引委員会は2025年9月30日、タレントと芸能事務所との契約内容の適正化に関する指針を公表しました ※画像:PIXTA

公正取引委員会は2025年9月30日、タレントと芸能事務所との契約内容の適正化に関する指針を公表しました ※画像:PIXTA

2025年9月30日に、公正取引委員会が、タレントと芸能事務所との契約内容の適正について指針を公表しました。

この指針では、芸能事務所が取るべき17の行動指針が示されており、その中でもとりわけ注目を集めたのが、「芸能事務所はタレントの退所後の芸名使用を制限してはならない」という行動指針であり、「合理的な理由なく退所後のタレントの芸名使用を芸能事務所が制限することは、独占禁止法違反となる場合がある」と示されました。

特に、本名を芸名としているような場合において退所後の芸名使用を認めない場合は、独占禁止法上問題となると考えられると、明確に示されました。

思い出す「能年玲奈」→「のん」への改名

実際、公正取引委員会の実態調査では、「退所後の芸名使用について契約書に何も記載がなかったのに、タレントが退所したとき、芸名の変更を事務所から求められた」といった問題事例が複数あったようです。

今後、公正取引委員会は、問題事例のような行動を取る芸能事務所には厳しく対処していくとしていますが、タレントの退所後の改名というと、かつて能年玲奈さんが所属事務所を退所した際に、「のん」に改名したことを思い出した人も多くいるのではないでしょうか。

現在、俳優やアーティストとして大活躍しているのんさんは、かつては能年玲奈という芸名(本名)で活動していて、2013年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍人気となりました。しかし、その後、当時所属していた芸能事務所を2016年に退所した際に、芸名を「のん」に改名しました。

この改名のいきさつについて、WebやSNS上では、当時の所属事務所が「能年玲奈」を商標登録していたため、「能年玲奈」を芸名として使用するには事務所の許可が必要だったからという話を見かけることがありますが、「能年玲奈」は特許庁データベースで確認する限り、過去も現在も商標登録されていません。

同じような時期に加護亜依さんが芸名を事務所に商標登録されていて、退所後にトラブルになっていたので、その話が混ざってしまったのかもしれませんが、いずれにせよ、「能年玲奈」が商標登録されていたという事実はありません。

では、なぜ「能年玲奈」から「のん」に改名することになったのでしょうか。そして、今回の公正取引委員会の発表を受けて、元の芸名である「能年玲奈」に戻すことはできるのでしょうか。それらを、専門家として芸能関連の契約に20年近く関わってきた経験に基づき、当時の芸能事務所とタレントとの契約内容の実情などを踏まえて解説します。

>次ページ:「能年玲奈」から「のん」に改名したいきさつ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます