今でも多い配信者にとって不利な契約
2025年9月30日に、公正取引委員会が、タレントと芸能事務所との契約内容を適正化するための指針を発表しました。2018年に、タレントの独立・移籍を芸能事務所が妨害することが違法となる可能性があると公正取引委員会が発表したことをきっかけに、タレントと芸能事務所との契約内容は徐々によい形になっているように見受けられ、以前は難しい面もあったタレントの独立・移籍もしやすい状況になってきました。
そうした中での今回の公正取引委員会の発表によって、今後、タレントと芸能事務所との契約内容はさらによくなっていくものと思われます。
一方で、VTuberやYouTuberといった「配信者」が事務所に所属する際の契約内容は、配信者に対して厳しいものが今でも多く見受けられます。
公正取引委員会の指針は、「動画配信者とその所属事務所との契約」も対象にはなっています。
しかし、指針には、「音楽・放送番組等の実演家(アーティスト、俳優、タレント等)とその所属する芸能事務所との契約」について行った実態調査に基づくものであると記載されているため、指針の内容からしても、配信者とその所属事務所との契約の実態調査まではあまりされていないのではと見受けます。
実際に、弁理士である筆者が法務周りの専門家として関わっているVTuber事務所などでも、公正取引委員会の発表内容を「他人事」のように捉えて、あまり気にしていないところも比較的多いです(そもそもその発表自体を把握していない事務所も少なくありません)。
とりわけVTuberと事務所との所属契約では、VTuberが勝手に退所したら違約金を請求するなどの文言が入っているような厳しい契約内容もよくあり、実際に、退所したVTuberに対して事務所が500万円の違約金を請求し、裁判にまで発展した事例もあります。
VTuberやYouTuberなどの配信者にとって不利な契約内容によるトラブルが最近でも発生しており、タレント契約と比べても配信者と事務所の契約における現在の状況は、あまりよいものではないと筆者は考えています。
では、先述した違約金請求例は実際にどのようなものだったのでしょうか。また、VTuberやYouTuberなどの配信者と所属事務所との契約内容の実態はどうなっているのでしょうか。
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