9月25日に開催された関西プレス発表会では、待望の星野リゾートの奈良県での開業が発表されました。奈良市内にある旧奈良監獄は、星野リゾートが初めて運営するミュージアム「奈良監獄ミュージアム」として2026年4月27日にオープンします! 続いて、同じく旧奈良監獄内に2026年(時期未発表)「星のや奈良監獄」が開業。さらに奈良県明日香村には「星のや飛鳥」が2027年に開業することが発表されました。奈良県内に星野リゾートの3施設が相次いで開業することになります。
今回は、2026年4月27日にオープンする「奈良監獄ミュージアム」について、発表された情報をもとに、旅行ジャーナリストである筆者の独自視点も交えながらご紹介します。
<目次>
実は奈良がブームの兆し? 訪れる人が増加中
奈良といえば、鈴木亮平氏が出演し、首都圏を中心に放映されているJR東海「いざいざ奈良」のCMが好評。旅へ行きたくなるという声も多く聞かれます。またアメリカ・ブルームバーグの調査によると、2025年のゴールデンウイーク(GW)に主な寺社や史跡を訪れた人の数が、奈良が京都を上回ったという驚くべき発表もありました。(参考:京都離れの日本人、金閣寺・清水寺でも集客減少-奈良が人気集める - Bloomberg)
このような背景のもと、星野リゾートの施設が相次いで開業することで、さらなる注目を集めることになりそうです。
ミュージアムで、国の重要文化財「旧奈良監獄」を手軽に体感
奈良監獄ミュージアム、そして星のや奈良監獄として新たな一歩を踏み出す「旧奈良監獄」は、明治政府により計画された五大監獄のうち、唯一現存する貴重な西洋建築物です。1908年(明治41年)に山下啓次郎氏の設計により誕生し、2017年(平成29年)に「奈良少年刑務所」としての役割を終えるまで現役で利用され、同年には国の重要文化財に指定されました。 旧奈良監獄の表門の威風堂々とした佇まいは、建築好きでもある筆者も、ずっと気になっていたスポット。そんな旧奈良監獄が、宿泊施設だけではなくミュージアムも併設し、日帰りでアクセス可能となるのは朗報だと感じます。
というのも、詳細はまだ発表されていませんが、「星のや旧奈良監獄」の客室数は48室と少なく、価格帯も高額となる見込みだからです。
その点、ミュージアムなら手頃な価格帯で気軽に訪れることができます。また「星のや」と同じ敷地内に外来施設が併設されるのは、実は今回が初めて。こうした点でも非常に珍しく、注目すべき施設となります。
奈良監獄ミュージアムのテーマは「美しき監獄からの問いかけ」
星野リゾート代表の星野佳路氏は「美しき監獄からの問いかけ」というテーマについて、「単に監獄を紹介するミュージアムではなく、監獄の規律ある生活に思いを馳せる中で、自分自身の生活を見つめる、自分と重ねて考えるきっかけになるようなミュージアム」だと語りました。この言葉と、それに続く施設概要から、今までにないユニークさを筆者は感じました。 もともとの建築を生かして改装された3つの展示棟は、それぞれ「A棟:歴史と建築」「B棟:身体と心」「C棟:監獄と社会」がテーマとなっています。特にC棟では、国内外で活動するアーティストが監獄から受けたインスピレーションをもとに製作した作品を展開予定です。 「奈良監獄ミュージアム」の監修・アートディレクションを担当するのは、「明治おいしい牛乳」のパッケージデザインや、NHK Eテレ『デザインあ』などの指導も手掛けたアートディレクターの佐藤卓氏。ルーブル美術館ランス別館など世界13カ所以上の美術館で常設展示デザインを手掛けるアドリアン・ガルデール氏がスーパーバイザーを担当します。監獄ミュージアムというと、「博物館 網走監獄」を思い浮かべる方も多いことでしょう。筆者も訪れたことがありますが、極寒の中での生活や開拓の歴史など、多角的な思索を促す興味深い施設で印象に残っています。
「博物館 網走監獄」とは歴史背景や立地も異なる「奈良監獄ミュージアム」は、網走監獄とは異なる角度や手法でアプローチするミュージアムとなりそうです。
なお建築そのものが重要文化財であり鑑賞の対象となりますが、保存棟は主に「星のや奈良監獄」として活用されます。ただし、放射線状に収容棟が並ぶ「中央看守所」は、時間や定員を設けてミュージアム利用者にも内部が公開される予定だといいます。
カフェやショップも併設。収益で重要文化財を守る取り組みも
「奈良監獄ミュージアム」には、明治時代の洋食文化からイメージしたオリジナルカレーパンやご当地ソーダなどでくつろげるカフェも併設されます。またショップでは、アートディレクター佐藤卓氏が手掛けた奈良監獄ミュージアムシンボルマークが入ったオリジナルグッズなどを販売。さらに、全国の刑務所で作られた刑務所作業品のギャラリーも設けられ、こちらも展示・販売をする予定とのこと。 発表会で星野佳路代表は、「重要文化財を維持・保存するには多くの予算がかかる。今回の奈良監獄ミュージアムは重要文化財である建物を活用しながら、その収益で維持・保存をしていく点が挑戦であり、新しい取り組みだ」と熱く語られていました。
奈良監獄ミュージアムの立地は、観光地ではなく住宅街にあります。そのため、たまたま通りがかり訪れるのではなく、わざわざミュージアムを目的に出掛ける必要があります。しかし、それを踏まえても、ユニークな取り組みや訪れたくなる要素が満載です。
奈良に縁のある者としても開館を今から待ち遠しく感じます。「奈良監獄ミュージアム」の公式Webサイトもオープンしたので、ぜひチェックしてみてくださいね。今後の奈良の動きにぜひご注目ください。
■奈良監獄ミュージアム
開館:2026年4月27日
入館料(大人):奈良県在住者2000円、日本在住者2500円、海外在住者3500円
アクセス:近鉄奈良駅からバスで約13分、「般若寺」バス停下車徒歩約5分