経済ジャーナリストで、All Aboutマネーガイドでもある酒井富士子氏の最新著書『60分でわかる!新・年金 超入門』(技術評論社)では、年金制度にまつわる新常識や、制度の柔軟な使い方について解説しています。
今回は本書から一部を抜粋し、繰り下げ受給の予定で年金の申請をしていなかった人が、受け取りたくなった場合に選べる「2つの方法」について紹介します。
受け取っていなかった分を一括受け取りも可能
年金の受給は、65歳を過ぎれば申請することでいつでも開始することができ、繰り下げ受給も事前に申請する必要がありません。つまり、繰り下げ受給するつもりで年金の請求をしていなかった人が、事情が変わってすぐに年金請求することも可能です。繰り下げ待機期間中での年金の受け取り方法は、2つの方法から選択することになります。
1つ目は、繰り下げ待機中、受け取りたいと思った時点で「受給申請」をして、そこから年金受給をする方法です。
繰り下げ申請は、1カ月単位でできるので、例えば70歳まで繰り下げしようと思っていても、68歳時点で申請を出せば、その時点の増額率で増えた年金を一生涯受け取ることができます。本来受給額が176万円4000円なら、25.2%増えた220万8528円の年金を一生涯受け取ることができます。
2つ目は、申請する時点から65歳までさかのぼりその分を一括で受け取る方法。この場合は本来受給額×年数の年金額となり増額はありません。また、一括で受け取る場合は、「年金の時効」があるので要注意。これは、受給資格が発生してから5年経過するとそれ以前は時効で消滅するというもの。
ただし、「特例的な繰り下げみなし増額制度」により70歳以降に、さかのぼって一括受け取りを希望した場合は、請求の5年前の時点で繰り下げ受給の申請があったとみなされ、0.7%×月数の割増率で増額した年金を一括受け取りできるので、増額した分で5年以前の消滅してしまう分を補てんすることができます。
酒井 富士子(さかい ふじこ)プロフィール
経済ジャーナリスト。金融専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。近著に『知りたいことがぜんぶわかる!新NISA&iDeCoの超基本』(Gakken)『60分でわかる! 新NISA 超入門』(技術評論社)など。