子供の病気

「朝起きられない」「疲れやすい」 起立性調節障害の可能性も……原因と治療法

【プライマリケア医が解説】「朝起きられない」「めまいがする」「疲れやすい」 それは怠けではなく「起立性調節障害」が原因かもしれません。心理面を含め、生活習慣の工夫や薬物療法など、適切な対処をすることで症状の改善は見込めます。専門医として分かりやすく解説します。

武井 智昭

武井 智昭

プライマリケア医/0歳から100歳までの疾患 ガイド

2002年慶応義塾大学医学部卒業。小児科医として多くの経験を積んだ後、0歳から100歳までを診るプライマリケア医を目指し、2020年から医療法人つばさ会高座渋谷つばさクリニック院長(内科・小児科・アレルギー科)。小児科・内科の両者の専門医資格を持ち、4世代の家族を、心身ともに診療している。

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悩む高校生

「朝、起きられない」「やる気が出ない」……意思や性格ではなく、起立性調節障害が原因のことも(出典:amanaimages)


「朝起きられないのは怠け?」「立ちくらみやめまいは自分だけ?」「なぜこんなにやる気が出ず、いつも疲れているのだろう……」 そのような悩みを抱えていませんか? それらは「起立性調節障害(OD)」が原因かもしれません。起立性調節障害は意思や性格の問題ではなく、体の自律神経がうまく働かないことが原因で起こる病気です。ここではプライマリケア医としての経験をもとに、ホームケア、薬物療法、そして見落とされがちな心のケアまで解説します。
 

起立性調節障害を乗り越える治療法のポイント

起立性調節障害の治療は、主に生活習慣の改善を含む「非薬物療法」と、「薬物療法」で進めます。これらを組み合わせることで、症状の改善を目指し、日常生活の支障を取り除いていきます。さらに、症状のきっかけとなる「心の悩み」が存在することも多いため、心理的なアプローチによる心のケアも重要です。以下でそれぞれのアプローチ法を具体的にご紹介しましょう。
 

 生活習慣の改善をメインとする「非薬物療法」

薬に頼る前に、まずは生活を整えることが最も重要です。基本となる注意点を以下に挙げます。
  • 血液量を増やすために、水分は1日1.5~2L、塩分は10~12gを目安に摂取する(持病がある場合は、塩分摂取量について医師に相談する)。スポーツドリンクも効果的
  • バランスのよい食事を心がける。特に朝食を抜かないようにし、3食とる
  • 夜更かしを避け、十分な睡眠を確保する
  • 寝る前のスマホやゲームは、自律神経を刺激するため控える
  • 急な体位変換を避ける。起き上がるときも急に立たず、ベッドの上で足を動かしてからゆっくりと起きる
  • 日中も着圧ソックスなどで下半身に血液がたまるのを防ぎ、立ちくらみを予防する
  • 長時間の入浴・熱いシャワーは動悸などの症状が悪化することがあるので、入浴はぬるめのお湯で短時間、またはシャワーで済ませる
これらのちょっとした工夫から、生活習慣を整えていくことが重要です。
 

医師・専門家のサポートを受けて、症状のコントロールを目指す「薬物療法」

生活習慣の見直しや非薬物療法で症状が十分に改善しない場合は、薬物療法が検討されます。薬は医師の診断のもと、症状に合わせて処方されます。西洋薬に抵抗がある場合や、冷えや疲れやすさなどの他の症状を伴うときは、「五苓散」や「苓桂朮甘湯」など漢方薬が使われることもあります。
 

心理的要素との関係も……心の不調が強い場合は、心療内科の受診も検討

起立性調節障害には、「心理的要素」が関わることもあります。思春期は、テストや部活動、友人や家族との人間関係などの日々のストレスや悩みによって、症状が悪化することがあります。しかし、この心理的な要素は、しばしば見過ごされがちです。

「朝起きられない」「体がだるい」といった症状は、本人の意思とは関係なく起こります。ご家族をはじめとする周りの大人は、「怠けている」と決めつけないようにしてください。これらの症状に加えて、「気分が落ち込む」「食欲や意欲がない」「眠れない」といった心の不調が強そうな場合は、心療内科などの専門医の受診を検討しましょう。

薬物療法や認知行動療法、カウンセリングなどが有効なこともありますし、心療内科やカウンセラーと話すことで悩みの核心が明らかになり、解決の糸口が見つかることもあります。
 

家族や周囲の理解が不可欠! 起立性調節障害の治療・回復は「チーム医療」で

起立性調節障害の治療は、本人の努力だけでなく、家族や学校など周囲の理解が不可欠です。本人に「自分は怠けている」と思わせるのではなく、ゆっくりと症状と向き合える環境を整えてあげてください。体調のよい日と悪い日があることを受け入れ、無理をさせないことが大切です。

「あなたの症状は、あなたのせいではない」と、いつでも味方であることを本人に伝え、温かく支援してください。
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