なかでも生命保険は、子どもの自立や住宅ローン完済といったライフステージの変化によって必要な保障内容が変わるため、見直しを検討するケースが少なくありません。とはいえ、保険料を減らしたい気持ちはあっても、保障を手放すのは不安……という方も多いでしょう。
そこで選択肢の1つとなるのが「払済保険(はらいずみほけん)」です。今回は、その仕組みや利用されるケース、メリットとデメリットを整理してみましょう。
払済保険を検討するのはどんなとき?
「払済保険」とは、これまでに積み立てた解約返戻金(払った保険料の一部が積み立てられていて、解約すると戻ってくるお金)を一時払いの保険料として充当し、その後は保険料を払わずに保障を続けられる仕組みです。毎月の負担をゼロにできる一方で、保障額は解約返戻金に応じて減額される点には注意が必要です。また、この方法が使えるのは、終身保険・養老保険・個人年金保険といった貯蓄性のある保険に限られます。この制度を利用すると、保険料の支払いがなくなるため家計の負担は大きく軽減されます。そのうえで、最低限の保障は残せるため「保障を全て失いたくはない」という人に向いています。
例えば、
・年金中心の生活へ移行し、毎月の固定費を減らしたいとき
・現在の保険は解約したくないが、新しい保険への切り替えを考えているとき
といった場面で検討されることが多いといえます。
「保障がまったくなくなるのは心配。でも支払いの負担は減らしたい」そんな場合に払済保険は有効です。
払済保険にできる保険にはどんなものがあるの?
払済保険に変更できる主な保険は、次の3つです。●終身保険
終身保険とは、被保険者が亡くなったときに保険金が支払われ、保障が一生涯続く生命保険です。これを払済保険に変更すると、保険料の払込みは終了し、保障は一生涯続きますが、保険金額は減額されます。
●養老保険
養老保険とは、保険期間中に死亡した場合には死亡保険金が支払われ、満期まで生存した場合には同額の満期保険金が受け取れる保険です。払済保険に変更すると、死亡保険金や満期保険金の額は減額されますが、満期まで保障は続きます。
●個人年金保険
個人年金保険とは、将来のために資金を積み立て、一定の年齢以降に年金として受け取れる保険です。払済保険に変更すると、将来受け取れる年金額が減額されます。ただし、契約に「個人年金保険料税制適格特約」が付加されている場合は、加入から10年間は払済変更ができませんので注意が必要です。
まとめると、払済保険に変更すると「保険料の負担はなくなるが、保障額や年金額は減る」という特徴があります。次は、払済保険のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
払済保険のメリット・デメリット
払済保険のメリット・デメリットをそれぞれまとめました。●払済保険のメリット
・保険料が不要になる:以降の支払いがなくなり、家計の負担が大きく軽減されます。
・保障が継続される:解約とは異なり、一定の保障は維持されます。
・解約返戻金が再び増える可能性がある:解約返戻金がゼロになっても、その後は予定利率に応じた運用が続きます。時間とともに増えていくことが期待できます。
・告知・診査不要で手続きが簡単:新たな加入ではないため、健康審査などの手続きがなく、すぐに変更できます。
●払済保険のデメリット
・保障額が減ってしまう:契約当初より保障額が小さくなります。見直し時点での必要保障額として妥当か確認する必要があります。
・特約が消滅することが多い:医療や介護などの特約がある場合、それらは消えてしまうケースが一般的です。
・元の契約に戻す(復旧)は簡単ではない:後になって元の保障水準に戻したいと思っても、健康告知が必要になることもあったり、そもそも対応できなかったりする場合があります。
まとめ
60~65歳前後は家計の固定費を見直す重要な時期です。まず生命保険の見直しを検討するケースが少なくありません。その際、「どの程度の保障を残すか」を明確に考えることで、払済保険は有力な選択肢になります。保険料をなくしたい気持ちがある一方、全部の保障を消したくない……というニーズにはピタリと合う制度です。ただし、加入している保険が払済変更可能か、変更後の保障額がどれほど減るのかは契約内容により大きく異なります。実際に利用を検討する際には、必ず保険会社に確認し、ライフプランに合った形で判断することが大切です。