<目次>
移住して知った「沖縄では常識」のケーキ
筆者が沖縄に移住して10年以上経ちますが、移住当初に驚いたことの1つが沖縄のローカルスーパー『Jimmy's』(ジミー)で見かける「ジャーマンケーキ」でした。見た目も名前もシンプルなので、長い間、ケーキ売り場での選択肢には入ってきませんでしたし、そもそも「これ、何のケーキ?」と思っていました。ところが沖縄県民にとっては当たり前過ぎて、説明するまでもない存在。お祝いごとや親族の集まりなどにも登場する定番ケーキだったのです。
「ジャーマンケーキ」のルーツを探る
「ジャーマン」という名前なので、最初はドイツのケーキかと思っていましたが、実際は全く違いました。このケーキのルーツはアメリカにあり、「ジャーマン」というのは1852年に、イギリス系アメリカ人のサミュエル・ジャーマン(Samuel German)という人が、ベイカーズチョコレート社で開発したチョコレートの名前に由来しているそう。
1957年にアメリカで爆発的に人気になったこのケーキが、どうして沖縄にだけ根付いたのかといえば、やはりその答えは、戦後のアメリカ統治時代にあります。
1956年、宜野湾市に小さな「ジミーグロセリー」という食品店がオープンしました。創業者の稲嶺盛保さんは16歳で米軍基地で働いた経験があり、「アメリカの豊かな食文化を県民に届けたい」という思いでこのお店を始めたそうです。
ジャーマンケーキを沖縄で初めて製造販売したのが、この「ジミーグロセリー」だったと言われています。
ココナッツの風味とクルミの食感がクセになる
ジャーマンケーキの最大の特徴は、なんといってもココナッツの風味と「シャリシャリ」とした食感です。刻んだココナッツを練乳で炊いて、砕いたクルミを加えたフィリングは、他のケーキでは味わえない独特なおいしさがあります。なので、ジャーマンケーキを説明するなら、ココナッツケーキというほうが伝わりやすいと思います。
シフォン部分はチョコレート味のふんわりしたもので、間にバニラバタークリームが挟まれています。この組み合わせで、シンプルな見た目以上の深い味わいが生まれます。ココナッツの香りとクルミの食感、チョコレートの香ばしさ、そして程よい甘さがクセになる理由ですね。
ジミーの「ジャーマンケーキ」は3種類!
現在、ジミーでは3種類のジャーマンケーキが販売されています。それぞれに特徴があるので、用途に合わせて選べるのがうれしいポイントです。1. ジャーマンケーキ(1850円) 7号サイズのホールケーキで、家族や友人との集まりにぴったりです。好きなだけ食べられるボリューム感が魅力で、沖縄のお祝いごとの定番中の定番ですね。
2. ジャーマンショート(370円) 1人分のショートケーキサイズで、ホールのジャーマンケーキよりもココナッツフィリングが少し厚い印象です。バニラクリームや砂糖で作られたデコレーションも施されていて、少しだけぜいたくな感じがします。
3. ジャーマンBOX(1400円) 長方形のパッケージで売られているもので、普通のジャーマンケーキやジャーマンショートは冷蔵で売っているのに対し、ジャーマンBOXは常温で販売されています。賞味期限が他のものと比べて長いので、お土産にもおすすめです。
個人的にはこのジャーマンBOXが一番のお気に入りです。ココナッツフィリングの上にもチョコレートがかかっているので、チョコの印象が強めになっています。ココナッツのおいしさも味わえつつ、ミルクチョコレートの甘さやほろ苦さも楽しめます。 普通に常温で食べてもおいしいですが、冷蔵庫で冷やしてから食べると、冷たくなるのはもちろん、食感も強くなるので、夏の食べ方としてイチオシです。
お土産は「ジミー 空港店」でジャーマンBOXを
沖縄のお土産として持ち帰りたい場合は、常温保存できるジャーマンBOXの一択になると思いますが、購入するのであれば那覇空港内にある「ジミー 空港店」がおすすめです。また、沖縄県内の「ファミリーマート」や「リウボウ」でもジャーマンケーキを買うことができます。こちらは「ジミー」のジャーマンケーキではありませんが、食べ比べをしてみるのもいいかもしれません。
沖縄でしか味わえないおいしさをぜひ!
ジャーマンケーキ、沖縄に来たらぜひ食べてほしいです。このケーキを食べるたびに、沖縄の複雑で豊かな歴史を感じる……ということではなく、香り、甘さ、ほろ苦さ、食感を兼ね備えた、素朴だけど完成度の高い、おいしいケーキだからです。 アメリカ統治という時代を経て、今や完全に沖縄の味として定着していますし、沖縄県民のソウルスイーツとして愛され続けているのは、何よりもそのおいしさが支持されているからだと思います。県外の方にも、ぜひ一度体験していただきたいです。<参考>
沖縄の「ジャーマンケーキ」 豊かさに憧れた戦後映す(NIKKEI The STYLE)