糖尿病

スポーツドリンクは逆効果? 糖尿病と熱中症対策、負の連鎖を断ち切る水分補給のコツ

【医師が解説】熱中症対策に、スポーツドリンクや経口補水液を常用していませんか? 特に糖尿病がある場合、血糖値の急上昇を招くことがあり、危険です。正しい水分補給と塩分を補うコツをご紹介します。

荒牧 昌信

荒牧 昌信

内科医師/糖尿病・生活習慣病 ガイド

滋賀医科大学医学部卒。日本内科学会総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医。現在、あらまき内科クリニック院長として外来診療と糖尿病・生活習慣病の講演会を実施しています。「やさしい言葉とわかりやすい説明」をモットーに、糖尿病や生活習慣病の情報をひとりでも多くの方に届けることを目指しています。

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正しい熱中症予防法は?

熱中症対策のつもりが、健康に逆効果になることも……正しい水分補給のポイントは?


「水をしっかり飲んでいたのに、熱中症で倒れた」
「熱中症予防にスポーツドリンクを飲んでいたら、血糖値が急上昇した」

夏になると、このような糖尿病患者さんからの相談が増えてきます。

実は、「熱中症対策のつもりでやっていたこと」が、かえってリスクになっているケースが少なくありません。今回は、糖尿病を持つ人だからこそ知っておいてほしい、正しい熱中症対策について、医師が分かりやすく解説します。
 

ペットボトル1本でご飯茶碗半分相当! スポーツドリンクの甘い罠に注意

「汗をかいたから、スポーツドリンクを」 これは、糖尿病の方にとっては、実はかなり危険な習慣です。なぜなら、スポーツドリンクには糖分がたっぷり含まれているからです。500mlのペットボトル1本に含まれる糖質は、何と約25~30g。これはご飯茶碗半分ほどの糖質量に相当します。さらに怖いのは、「水分補給のつもり」でゴクゴク飲んでしまうこと。糖質を過剰に摂ることで、高血糖 → 脱水 → 熱中症の悪化という、負のスパイラルに陥ってしまうおそれがあります。

つまり、糖尿病の人にとって「熱中症対策=スポーツドリンク」は、大きな誤解なのです。
 

常飲は逆効果? 実は「予防目的」ではない経口補水液(OS-1)

「なら、経口補水液なら安心だろう」と思う方もいるかもしれませんが、ここにも見落としがちな“落とし穴”があります。

いわゆるOS-1などの経口補水液は、本来はすでに脱水症状が出た人の「治療用」に作られた飲み物です。健康な人や、まだ脱水していない人が「予防目的」で飲むものではありません。

なぜなら、ナトリウム(塩分)や糖分の濃度が非常に高く、スポーツドリンク以上に血糖値を上げてしまうリスクがあるからです。

少し汗をかいたからと、健康維持の目的で日常的に経口補水液を飲むことは、糖尿病の方にとっては残念ながら逆効果です。
 

糖尿病患者さんのための熱中症対策3つのポイント

では、糖尿病患者さんは、どうやって熱中症を防げばいいのでしょうか?
ポイントは、次の3つです。

1. 水分補給の基本は「水」か「糖分ゼロのお茶」
水分補給といえば、まずは「水」。または、麦茶・そば茶・ルイボスティーなど、カフェインの少ないお茶でもOKです。

冷たすぎるとお腹を冷やすこともあるので、常温~やや冷たいくらいがおすすめ。のどが渇く前に、少しずつこまめに飲むのがコツです。

2.  汗をかいた時は「塩分補給」も忘れずに
水だけを飲んでいると、体内の塩分が不足します。身体がだるくなるだけでなく、「低ナトリウム血症」という危険な状態に陥るケースもあり、注意が必要です。塩分補給の目的で、甘い塩飴に頼るのはいけません。糖分ゼロや低糖タイプの塩タブレットや、塩昆布・みそ汁などで補いましょう。

3. 室温と体調を「こまめにチェック」
糖尿病の方は、「のどの渇きに気づきにくい」「汗をかきにくい」など、体の変化に鈍くなりがちです。エアコンは28℃前後を目安に設定し、できれば湿度もチェックするようにしましょう。湿度は60%以下が理想です。体調が少しでもおかしいと感じたら、無理せず休む勇気も必要です。
 

 「のどが渇いた」と感じた時にはもう遅い?

糖尿病をお持ちの方にとって、「こまめな水分補給」は、血糖コントロールと同じくらい大切です。なぜなら、糖尿病がある場合、脱水のサインに気づきにくくなる傾向があるためです。「のどが渇いた」と感じた時点で、体はすでに軽い脱水状態になっていると考えましょう。

「のどの渇きを感じた時に飲む」のではなく、目安は1時間に1回、コップ半分程度を、少しずつこまめに飲むことを心がけてください。暑い屋外だけでなく、室内や夜間も油断せず、水分補給を習慣にしていきましょう。
 

血糖コントロールと熱中症対策を両立させる夏へ

糖尿病を持つ方にとって、熱中症対策は「血糖コントロールとの両立」がカギになります。

スポーツドリンクや経口補水液を、“なんとなく”で選ばないこと。目的とタイミングに合った、水分と塩分の補給を意識することが大切です。正しい知識があれば、夏は決して怖くありません。

血糖コントロールも、熱中症対策も、合言葉は 「こまめに、バランスよく」。

今年の夏は、甘くない正しい対策で、安心して乗り切りましょう!
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