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わざとではなく「やりたくてもやれない」!? 関係者への取材で見えてきた令和の「名古屋飛ばし」事情

コンサートなどのイベントが名古屋を素通りしてしまう「名古屋飛ばし」。その風評は本当なのか? だとしたら理由は何なのか? 関係者の証言を元に、その実態を検証。そして、新会場のオープンラッシュで変わる名古屋のエンタメシーンの展望を探る。※画像:PIXTA

大竹 敏之

大竹 敏之

名古屋 ガイド

名古屋めしと中日ドラゴンズをこよなく愛する名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなどに名古屋情報を発信。著書は『名古屋の喫茶店完全版』『名古屋の酒場』『なごやじまん』など。コンクリート仏師・浅野祥雲の研究をライフワークとし作品の修復ボランティア活動も主宰する

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かつて1990年代には東海道新幹線のぞみの一部ダイヤが名古屋を通過していた ※画像:PIXTA

かつて1990年代には東海道新幹線のぞみの一部ダイヤが名古屋を通過していた ※画像:PIXTA

「名古屋飛ばし」。これは主にエンターテインメントのイベントが名古屋を素通りしてしまう現象を指して使われる言葉。1980年代にマドンナやマイケル・ジャクソンなどのコンサートが名古屋で開催されなかったことから、洋楽ファンの間で広まりました。1990年代には東海道新幹線のぞみの一部ダイヤが名古屋駅を通過したことで、地元では「名古屋飛ばし」が社会問題にまで発展しました。
<目次>

令和の「名古屋飛ばし」はハコ不足が原因

最近になってまたぞろこの「名古屋飛ばし」が取り沙汰されるようになっています。メディアの報道で「名古屋飛ばし」の根拠としてしばしば引き合いにされるのが一般社団法人コンサートプロモーターズ協会による下記のデータです。
 
【2024年の都道府県別 音楽公演の開催回数】
全国:3万4251
東京:1万1277
大阪:5903
愛知:2350
 
このデータから見ると、愛知県での音楽公演件数は国内全体の7%足らず。東京の1/5、人口で1割ほどしか差がない大阪と比べても公演は4割程度しかありません。これがそのまま東京→大阪と名古屋をスルーしてしまう「名古屋飛ばし」を表すわけではありませんが、少ないとされる公演件数が「名古屋はコンサートが少ない」=「名古屋飛ばし」のイメージにつながっていることは否めません。
 
その要因の1つが会場不足です。名古屋では音楽公演に適した1万人規模の会場はバンテリンドーム ナゴヤ(名古屋市東区)を除くと日本ガイシホール(名古屋市南区)とポートメッセなごや第1展示場(同港区)の2カ所のみ。しかも、日本ガイシホールは2024年4月~2026年1月まで改装工事で使用不可。さらに約3000人収容の名古屋国際会議場 センチュリーホール(同市熱田区)も2025年2月~2027年3月の間休館中。ビッグネームの公演の受け皿となるハコがないことも、今また名古屋飛ばしが取り沙汰される原因となったといえるでしょう。

「名古屋飛ばし」なんて100%ありません!?

この「名古屋飛ばし」という言葉には、あたかも主催者やアーティストが意図的に名古屋を開催地から外しているかのようなニュアンスが含まれます。はたしてそんなことがあるのでしょうか? 
 
「『名古屋飛ばし』なんて100%ありません!」

こう言い切るのは、名古屋のコンサートプロモーター、サンデーフォークプロモーション代表取締役社長の伊神悟さん。同社は年間約1700本の公演を取り扱い、この数字は国内3位に当たります。
 
「私は長くコンサートの誘致や運営に携わっていますが、アーティスト側が名古屋を敬遠して飛ばした、ということは一度もないんです」と伊神さん。「熱心で温かいファンが多く、食べ物もおいしいと、むしろ名古屋を気に入ってくれるアーティストは非常に多い」といいます。
 
それにもかかわらず名古屋での音楽公演が少ないとされるのは、こんな事情があるそう。
 
「名古屋の主要な会場は、予約が1年または13カ月前からで、しかも抽選制。人気アーティストのコンサートもアマチュアの催しも同じ条件なんです。名古屋と比較されやすい大阪では、主要会場は2年半前に予約でき、しかも全国規模の音楽公演優先。コンサートツアーは1年以上前にスケジュールが組まれることが多いので、名古屋では制度上の問題で会場を押さえられず、やりたくてもやれない、というケースが生じてしまうのです
 
また先のコンサートプロモーターズ協会の公演件数のデータについてはこんなからくりもあるとか。

「大阪の約6000という件数の中には演劇・ミュージカル、さらには大阪のプロモーターが主催する他都市の公演も含まれ、それらを除くと実は大阪と愛知の音楽公演の件数に大きな差はありません。愛知、名古屋は会場を押さえにくいというハンディもあり、実現しない人気公演が目立ってしまいますが、むしろたくさんのコンサートが開催されているともいえるのです

>次ページ:会場不足が今年大きく改善されそうな理由
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