転職のノウハウ

こっそり誤情報を引き継ぐ“ステルス復讐”も増えている…近ごろよく耳にする「リベンジ退職」の実態(2ページ目)

「リベンジ退職」という言葉が広まりつつある。会社での不満や負の体験に対する抗議として、従業員がトラブルを起こしながら退職することを指す。昨今のリベンジ退職の傾向を紹介し、そして会社と自分を守るための対策を考える。※画像:PIXTA

小松 俊明

小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職 ガイド

東京海洋大学教授。専門はグローバル教育/キャリア教育。サイバー大学客員教授を兼任。著書は「できる上司は定時に帰る」「35歳からの転職成功マニュアル」「人材紹介の仕事がよくわかる本」「エンジニア55歳からの定年準備」他。元ヘッドハンターで企業の採用事情に詳しい。

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SNSよりもネガティブな投稿を見かける場所が

最後は「退職前後に、会社批判とも取れる投稿をSNSなどで繰り返すこと」のパターンについて。

一般的とされているのはSNSに会社での不満を暴露するケースだ。上司から受けたパワハラやセクハラ、社内の人間関係、取引先とのよからぬうわさなどを投稿する。実名を出して、会社は社員を特定できることもある。

しかし、「そんなに自分の会社が批判されている投稿って見たことないな」と感じた人も少なくないのではないか。そう思うのも無理はない。なぜなら、SNSでは投稿した本人が特定されるリスクもあるからだ。そもそも純粋に1つのコミュニケーションツールとして楽しく利用しているため、リベンジ退職のために使いたくないからという理由もあるだろう。

実はSNSよりもネガティブな投稿を見かける場所がある。それは転職サイトの口コミだ。

一見評判のいい会社のように見えるが

世の中には大手から小中規模のものまで含めれば、多数の転職サイトが全国に存在している。業界別、職種別、地域別などに分類できることもある。また、そうした転職サイトに掲載されている求人企業情報は大手企業だけでなく、そのグループ企業や小中・零細企業に至るまで無数にある。

そして求人企業の社員、もしくは元社員が匿名で会社の評判を書き込むことができるという特徴もある。実際、転職活動中の時、こうした口コミを参考にする人は多い。

リベンジ退職のうち、最も気軽に、そして執拗(しつよう)に、長期にわたって効果的にリベンジできてしまう方法が、意図的に転職サイトに対して悪評価を積み重ねていく方法である。明らかな会社批判、一方的な悪口などは目立ち、むしろそこには悪意があることが明白であるため、リベンジ効果は低い。一方、さまざまなトピックを選びながら、それを波状的に広げていって企業の評判を貶めるような書き込みは転職サイト上に散乱している。一見、優良企業として評判のいい書き込みが並ぶ中で、巧妙に隠された目を覆いたくなるようなネガティブ情報を目撃することもある。

例えば、以下のような企業への評価の書き込みは、リベンジ効果の高いネガティブキャンペーンの一例だ。

「世間から注目を集める商品とサービスを持ち、会社は急成長しているが、2代目のオーナー社長が連れてくる中途採用の社員が特別に重用されているため、多くの社員にとって不平等な仕事環境がある」

「会社として残業時間短縮に向けて社員の早期帰宅を奨励する動きがあるが、職場は常にスタッフ減の状態が続いており、社員の多くが日々家に仕事を持ち帰るほどの激務が続いている」

「会社はホワイトイメージを維持することに躍起になっており、一部社員向けの待遇や職場環境の改善は実現しているが、自分が所属する部門は会社にあまり収益をもたらしていない部署であるため、全社的に宣伝しているような改善とは無縁。社内で格差がある状況を見れば、配属の運次第で自分の運命が決まることが否めない」

こうした書き込みは、必ずしも会社への誹謗中傷というほどの激しい批判ではなく、むしろ冷静に起きている状況を具体的に分析して、現状への懸念や問題が解決できていない会社の惨状を効果的に伝えている。冷静に実態を報告し(上手に誇張や偏重を盛り込む場合が多い)、不平等や不公平の存在をにおわせるのは、なかなか高等なテクニックである。

どれもが肝心な部分で具体的な記述を含み、読者への説得力が高い。抽象的な誹謗中傷ならば、一方的なコメントであると無視することもできるが、具体的な記述があると、それは一定の程度で心に刺さるメッセージとなる。

特に、その会社で働いていた社員がリベンジ退職を胸に秘めながら書いたコメントには、社員しか知らない情報も巧みに含めることもできるため、その信ぴょう性は増してしまう。リベンジ退職は多様化しているが、このパターンは影響範囲が大きく、長期にわたることなどから、会社としては効果的な対策を取ることが難しい。

もしも転職を考えている人が前述したような一連の具体的かつ心に刺さるネガティブな書き込みを見つけてしまったら、入社判断への影響は少なくないだろう。悲しいかな、こうしてリベンジ退職は成功してしまう。

>次ページ:リベンジ転職にどう対策すればいいのか
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