感染症

Q. 「一晩寝かせたカレーは、加熱しても危険」って本当ですか?

【医師が解説】一晩寝かせるとおいしいカレーですが、ウェルシュ菌の温床になると、食中毒を起こす危険があります。加熱しても死滅しないウェルシュ菌から身を守る方法を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

Q. 「一晩寝かせたカレーは、加熱しても食中毒リスクがあり危険」って本当ですか?

カレーで腹痛

一晩寝かせたカレーで食中毒になってしまう⁉


Q. 「一晩寝かせたカレーが大好きです。コクが増しておいしくなるので、いつも多めに作って、2~3日続けて食べています。最近、知人から『加熱したカレーで、家族全員食中毒になった』と聞き、不安です。火を通せば菌は死ぬと思うのですが、加熱したカレーで食中毒になることなんてあるのでしょうか?」
 

A. 「ウェルシュ菌」による食中毒リスクがあります。加熱しても危険です

まず結論からお伝えすると、一晩寝かせたカレーは、加熱しても食中毒になる可能性があります。主に、「ウェルシュ菌」という菌が原因で起こる食中毒です。ウェルシュ菌は酸素を嫌う「嫌気性菌」で、空気のない環境で増殖しやすく、高温や加熱にも強いという特徴があります。「芽胞」という状態に変化すると、100度で1時間以上加熱しても死滅しません。つまり、加熱しても菌が残り、菌による毒素で腹痛や下痢などの食中毒症状を起こすことがあり、決して安心できないのです。

ウェルシュ菌による食中毒を避けるカギとなるのは、調理後の保存方法です。カレーなどを加熱した後に常温で放置していると、ウェルシュ菌は芽胞の状態から再び活動を始め、急速に増殖していきます。菌が増えると、食中毒を引き起こすリスクが高まります。特にカレーやシチューなどの、粘度が高く、まとめて大量に調理される料理は危険です。一度加熱すると内部まで十分に冷えにくく、菌が繁殖しやすい環境ができてしまうためです。

2025年6月には、京都市で修学旅行生106人が腹痛や下痢を訴える集団食中毒が発生しました。調査の結果、発症者の便からウェルシュ菌が検出されました。原因食品は特定されていませんが、提供されたすき焼きやシチューなどのいずれかの食品が、菌の温床となった可能性があります。

対策としては、
  • 調理後は3時間以内に20℃以下まで冷却する
  • 大きな鍋に入れたままにせず、できれば小分けにして、空気に触れさせる
  • 寝かせる必要がないものは、前日調理を避ける
  • 翌日食べるときは、加熱時に全体をよくかき混ぜ、沸騰するまでしっかりと熱を通す
ことが推奨されます。

さらに詳しく知りたい方は、「一晩寝かせたカレーも危険?ウェルシュ菌食中毒とは」をあわせてご覧ください。
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