人間関係

家事、仕事、デートも“何もかも”平等ってどうなの?「いびつな男女平等」を拒否する女性たち

家事は平等、共働きは当然、デートは割り勘。女性たちはより自分らしい生き方を手に入れたように見える。だが一方で、「何もかも平等教育」により男女関係はどこかいびつなものとなり、「男女平等」を拒否する女性が増えている。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

「何もかも平等教育」により”デートは割り勘”が当然に(画像出典:PIXTA)

「何もかも平等教育」により“デートは割り勘”が当然に(画像出典:PIXTA)

戦後、女性たちは新しい法律のもと、ようやく参政権を得た。それ以前は女性には選挙権も被選挙権もなかったのだ。そして日本にはそれまで「姦通罪」があった。これは既婚女性と、その姦通の相手である男性の双方に成立するもの。夫による親告罪だったが、既婚男性が姦通しても妻は告訴することができなかった。

1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法では、男女平等が定められた。これにより、男性にとって都合のいい姦通罪は違憲となった。当時、「それなら既婚男性にも適用されれば不平等にならない」といった意見もあったそうだ。当時の世論としては、若者が両罰化を望み、年配者が姦通罪廃止を支持したというのが興味深い。結局、同年の刑法改正で刑事罰としての姦通罪は廃止された。

この時点で、女性がようやく「人としての立場」において男性と平等になった。

男女は本当に平等になったのか

それから約80年という歳月が流れたが、男女は本当に平等になっているのだろうか。犯罪でもない不倫をしたとき、女性の方がバッシングされる傾向はないだろうか。男女の賃金は本当に平等だろうか。家庭内の立場はどうだろう。さまざまな要因はあるものの、建前上、特に学校教育などでは男女は平等ということになっている。

社会的立場だけではなく、現代を生きる20代、30代の女性に「平等感」はしっかり植えつけられている。バブル期に遊び回っていた世代の多くは「デート代はほぼ男性が払うもの」で、「ときにはお返しするのが女性」だと思っていたはずだ。

その世代の同窓会などは、今も男性の会費が女性より数千円高く設定されていることがある。

「うちの息子たちは、会費は同一なんだって」とアラ還女性が言えば、「そうだよね。会費が同じじゃない時点で年齢がバレる」と同世代男性が笑う。男女雇用機会均等法の第一世代である。ところが私生活では、男たちに甘え、「女」を武器にちゃっかり得することも多々あったわけだ。それを許容できるくらいの経済力や余裕が男性にあったとも言える。

「平等」を押し進めた結果……

結婚、出産後は専業主婦になった女性たちが多いが、それ以前の夫婦関係よりはおしなべて男性たちが威張ってはいられなくなった。

「週末くらいは家事から解放されたい」と妻が言えば「分かった。じゃあ、週末の夕食は家族そろって外食で」という家庭も増えた。厨房に入る男性も増加した。

そして今。デートは割り勘、家事は平等、共働きは当然。もちろん、30年間にわたる日本の経済の衰退、政策の誤りが招いた事態ではあるのだが、そこに「何もかも平等教育」が加わって、男女の意識も変わらざるを得なかった。本来、平等より公平であるべきだったのだが、平等を押し進めたあまり、どこか男女の関係がいびつになりつつある。

平等に疲れ、拒否反応を示す女性たち

「別に男女が平等じゃなくてもいいんじゃないですかね」

アミさん(30歳)はそう言う。保育園のころから「男女平等」が体に染みこんでいるという彼女だが、最近、考え方が変わってきた。

「ずっと共学で大学まで出て、でも実際にはデートDVで泣いている友達がいたり、アルバイト先でも私より仕事のできない男子がチームリーダーになったり、公私ともにちっとも平等じゃないところを見せられてきた。学生時代、情熱的に口説いてきた社会人男性とデートしたら、『割り勘ね。あ、端数はオレが出しておくから』って、たかが十円単位で恩を着せられて……。母に言ったら、『相手は社会人なんだから、学生相手に割り勘っていうのはひどいわね』って」

平等というのは、あくまでも「人として」対等であることが重要なのであって、男たるもの好きな女をデートに誘って払わせるなと母は怒っていたという。

「『恩を着せられるのは嫌だから割り勘でもいいんだけど』と言ったら、母は『そもそもそれが違う。男は女にいいかっこしたいものなの。そういう気概をなくしている男はダメよ』って。バブルの人らしい考え方なんですけどね。でもそんな話を聞くうちに、私もだんだん疲れてきて、もう平等じゃなくていいから、少しはラクさせてよと思うようになってしまって」

女性に優しくない日本人男性

社会人として頑張ってはいるが、今の仕事や働き方、社内の人間関係には疲れてきた。威張る男性に従順になりたいわけではないし、男を立てるという昔ながらの男女関係には納得はできない。だが女性は男性からもう少し大事にされてもいいのではないかと思うことも多い。

「何でも平等ならいいというわけではないような気がします。私なんか重い荷物を持っていても恋人が自分から手を差し出してくれることなんてありませんから。今、付き合っている彼に、たまには持ってよと言ったら、『そういうことしたら怒られるんじゃないかと思ってた』って。でも結局、自分で持ちましたよ。だって彼より私の方が体力があるから」

そういう意味でも平等にならざるを得ないんですかねとアミさんは笑う。一般的に言って、日本では男性が公的な親切心を見せてはくれない。例えば飛行機の棚に入れた荷物。降りるときに荷物が移動していて取りづらいことがある。座席脇の足かけに足をかけ、伸び上がって取るしかないのだが、日本では背の高い男性が隣にいても知らん顔されることがほとんどだ。

「女性に優しくないんですよね、男性が。親切ではない。ましてや今の時代、親切にしてはいけないような雰囲気すらある。でも公の場なんだから、男性たちがもっと女性に優しくあってもいいと思う。それすら平等感に水を差すようなことなんでしょうか」

だから平等でなくていいと彼女は言う。疲弊した彼女の気持ちが理解できるような気もする。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます