脳科学・脳の健康

Q. 手足のしびれが増えてきました。病院に行くべきでしょうか?

【脳科学者が解説】手足のしびれが頻繁に起こる場合、体からのSOSかもしれません。重大な病気が隠れている可能性もあります。原因不明のしびれは放置せず、早めに受診することが大切です。分かりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. 手足のしびれが増えてきました。病院に行くべきでしょうか?

 
手のしびれ

手がしびれることが増えてきた。病院を受診すべき?(画像:shutterstock)


Q. 「以前から時々手足がしびれることがあり、最近その頻度が増えてきたように感じます。しびれ以外に困っていることはありません。しびれだけなら様子見でも大丈夫でしょうか? 病院に行くべきでしょうか?」

A. 思い当たる原因がないなら、早めに病院を受診することをおすすめします

私たちは日常的に「しびれる」と言いますが、実際には「しびれ」とはどのような状態なのか、改めて考えてみましょう。分かりやすい例として、正座を長時間した後に、足がしびれる感覚がありますよね。慣れていない人が正座をすると、足の感覚がなくなり、立とうとしてもスムーズに動けなくなります。また、滞っていた血流が再開すると、足先にジンジンとした痛みが出てくるものです。このような感覚を私たちは「しびれ」と呼んでいます。

つまり、「しびれ」に含まれるのは以下のような状態です。
  • 感覚鈍麻(皮膚に触っても感じにくい、熱さや冷たさを感じにくい)
  • 運動麻痺(体がうまく動かせない、うまくつかえない)
  • 異常感覚(ピリピリする感じ、焼けつくような感覚)
 
私たちの皮膚に何かが触れると、その刺激は皮膚の下にある感覚神経の末梢で電気信号として発生し、脊髄へと送られます。脊髄からはさらに脳へと信号が伝えられ、最終的に大脳皮質の「体性感覚野」に到達することで、「痛い」「熱い」「かゆい」といった感覚が認識されます。この一連のプロセスを正常に保っているのは、酸素や栄養を届ける血流です。そのため、どこか1カ所でもこの経路が障害されると、「しびれ」が発生するのです。

正座によるしびれは、足が圧迫されて、血流が一時的に悪くなることが原因で起こります。血流が再開すれば自然と回復し、しびれは消えていきます。ジンジンするのは、感覚が一時的に過敏になるためです。私たちの体には、過剰な刺激を受けたときは感覚を鈍らせ、逆に感覚が鈍っているときは鋭敏にすることでバランスをとろうとする仕組みが備わっています。そのため、一見逆に思われそうですが、感覚鈍麻の中に知覚過敏が混在することもあるのです。

このように、正座によるしびれは原因がはっきりしています。一時的なものであれば問題はありません。しかし、特に思い当たる原因がないのにしびれが起こり、それが長く続いたり、何度も繰り返したりするような場合は、何らかの病気のサインかもしれません。放置せず、病院で専門医の診察を受けるべきです。

しびれを引き起こす原因となる病気は、さまざまです。慢性的な手足の血流障害が原因ならば、血流をよくする工夫で、改善できるかもしれません。神経が部分的に圧迫されている場合は、手術が必要になることもあります。糖尿病による神経障害や、帯状疱疹のような感染症に伴うしびれもあります。また、脳や脊髄に問題が起きていることも考えられます。例えば、脳血管障害、脳腫瘍や脳梗塞の場合もしびれが起きますし、多発性硬化症という難病に伴う症状だったというケースもあります。精密検査を受ければ、多くの場合は原因が特定でき、それに応じた対処・治療が可能です。

いずれにせよ、悪化していることを自覚しながら、原因が分からないまま放置するのはよくありません。しびれは不快な症状ですが、「おかしなことが起きているよ」と教えてくれる、体からの重要な「SOSサイン」であることもあるからです。

あなたは、火災報知器が鳴っているときに、無視しますか? 誤作動だろうと思い込んだりせず、まずは原因となった火元の有無を確認し、対処するはずです。それと同じように、体のサインも無視してはいけません。適切な対応をとることが大切です。
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