今回は、どんなときにもらえ、逆にもらえないケースはどんな場合かを分かりやすく解説します。
傷病手当金とは?
傷病手当金は、業務外の病気やケガにより働けなくなった健康保険の被保険者が受け取る給付金です。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6カ月です。また、傷病手当金の支給額は、休業前の給与日額の「約3分の2」です。
1日当たりの支給額は「直近12カ月の平均標準報酬月額÷30日×2/3」で計算されます。
ここでいう「標準報酬月額」とは、会社員などが毎月受け取る給与(基本給のほか、通勤手当や残業代なども含む)を区分けしたもので、5万8000円から139万円まで、50の等級に分かれています。
もし、直近12カ月の平均標準報酬月額が20万円(17等級)であれば、1日当たりの傷病手当金は……
・20万円÷30日×2/3=約4444円
となります。
さらに、実際に仕事を休んだ日数をかけることで、支給される総額が決まります。
傷病手当金の支給を受けるには、健康保険の被保険者であることに加え、以下の4つの条件を満たす必要があります。
【傷病手当金を受け取るための条件】
・業務外の病気やケガで治療を受けていること
・働けない状態にあること
・最初の3日間を含め、4日以上続けて会社を休んでいること
・休んでいる間に会社から給与が出ていないこと
傷病手当金がもらえないケース
病気やケガで休んだ人が、健康保険の被保険者であり、前述の4つの条件を満たしていれば、傷病手当金が支給となります。しかし、以下に該当する場合、傷病手当金が支給されなかったり、支給額が調整されたりすることがあります。●老齢年金などを受給している場合
退職後に老齢年金なども受けられる場合は、老齢年金などの金額に応じて、傷病手当金を調整します。老齢年金などの支給額が傷病手当金より少ない場合、その差額が支給されます。
●障害年金などを受給している場合
同一の病気やケガで障害年金なども受給できるときは、原則として傷病手当金は支給されません。ただし、障害年金の支給額が傷病手当金より少ない場合、その差額が支給されます。
参照:「傷病手当金を受けている方へ」
●労災保険から休業補償給付を受給している場合
仕事中のケガや病気で労災保険の「休業補償給付」を受けている期間に、業務外の病気やケガで就労できなくなった場合については、以下のように整理できます。
原則として、労災保険の「休業補償給付」が優先して支給され、健康保険の「傷病手当金」は支給されません。例外として、労災の休業補償給付の金額が、傷病手当金の金額よりも少ない場合は、その差額分が傷病手当金として支給されます。
参照:労働者災害補償保険法による休業補償費と健康保険法による傷病手当金との併給について(◆昭和33年7月8日保険発第95-2号)
●出産手当金を受給している場合
出産手当金とは、出産のために会社を休み給料が支払われないまたは支給されても少ない場合にもらえる給付金です。出産手当金と傷病手当金の両方を受給できる期間は、出産手当金のみ支給されます。
ただし傷病手当金と出産手当金は、その支給日額が異なる場合があり、出産手当金の支給額が傷病手当金よりも少ない場合は、傷病手当金を請求することで出産手当金との差額が支給されます。
●雇用保険の失業給付を受給している場合
雇用保険の基本手当(失業給付)は、「働く意思と能力があるのに仕事が見つからない方」のための制度です。一方で、傷病手当金は「病気やケガで働けない方」を支えるためのもの。つまり、両方を同時に受け取ることはできない仕組みになっています。
●退職後に受給する場合の条件を満たしていない場合
退職後も傷病手当金を受け取るには、「資格喪失後の継続給付」という制度の条件を満たす必要があります。
具体的には、退職日までに1年以上健康保険に加入していたこと(任意継続は含まれません)と、退職時点で傷病手当金を受給しているか、受給要件を満たしていることが必要です。なお、退職日に出勤していた場合は受給資格がなくなるため、退職翌日以降の傷病手当金は支給されません。
参照:傷病手当金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会