そこで、万博の通期パスを持つ筆者が、下見を重ね、両親のために「歩かない万博」を計画。その中で見えてきた、シニア世代のための万博計画の3カ条を紹介します。
今回は、15時半~16時半の屋内イベントが事前に予約できたので、それにあわせて11時半に東ゲート到着、18時半には夢洲駅から帰宅の途に着きました。その間、万博内で両親が歩いたのは約4500歩! その方法とは?
<目次>
【シニア万博3カ条】その1. できるだけ歩かない&疲れさせない
万博は想像以上に歩く場所で、筆者は普段6時間の滞在で平均2万歩ほど歩きます。両親は日常生活は問題ないものの80代後半と高齢で、特に母は手術の後遺症で長い距離は歩けなくなっています。そのため、今回の計画では「できるだけ歩かない万博」が最大のポイントとなりました。東西ゲートの手前にはアクセシビリティセンターがあります(※ゲートに入る前です)。ここでは、車いす、つえ、歩行補助器具(シルバーカー)、補聴器などが無料で借りられます。また、ユニバーサル情報が掲載された地図も配布されています(地図はこちらで閲覧も可能)。 ただし、注意点があります。筆者が両親と訪れた5月平日の11時半には、東ゲートのアクセシビリティセンターに20組以上の列ができており、シルバーカーも在庫待ちの状態でした。レンタルを希望する場合は、朝の早い時間帯か、皆が帰宅する夕方以降でないと難しいようです。
なお、万博は専用口から途中退出・再入場が可能です。そのため、もし必要であれば、夕方に改めてレンタルしに行くこともできます。

歩行を助け、荷物が入れられ、疲れたら椅子にもなるシルバーカー。4月末に筆者が確認した時には「車いすは出払うこともあるが、シルバーカーは大丈夫」とのことでしたが来場者急増に伴いレンタルも間に合っていないよう(大阪・関西万博)
- 始点と終点はつながっておらず、離れている(ぐるぐる回っているわけではなく始点と終点がある)
- 時計回りのルートは、西ゲート、東ゲート、フューチャーライフゾーンのエリア間移動用で、途中の停留所は通過する(各停に乗車するには反時計回りのルートに乗る必要あり)
筆者の家族は東ゲートから入場し、ゲートのすぐそばにある「東ゲート北停留所」から乗車。まずは「e Mover」の始点(リング西ターミナル)へ向かいました。そこで近くの雰囲気を楽しんだ後、再び始点(リング西ターミナル)から終点(西ゲート北ターミナル)まで乗車し、バスから会場全体を見学することにしました。 残念ながら、「e Mover」は大屋根リングの外側(パビリオンの裏導線)を通るため、景色はあまりよくありません(スタッフの休憩風景やバックヤードが見えるなど、ある意味でレアな光景に出くわすことも!)。
しかし、海上部分を走行する際には、歩行者が入れない大屋根リングの下を通り、海やウォータープラザなどを眺めることができるので、特別な気分を味わえます。何よりも、車内は冷房が効いていて快適。両親にも非常に好評でした。 終点となる西ゲート北ターミナルがあるフューチャーライフゾーンは、大屋根リングから離れているためか、日中も混雑が少なく、飲食店も比較的空いています。
ここには海を望む休憩所があり、「EXPOアリーナ」が「EXPOピクニック」として開放されている日もあります。気候のよい日には、人工芝でのんびりランチをしたり、昼寝をしている人も見かけました。 「e Mover」のデメリットは、大屋根リングの中央部分、シグネチャーゾーン、ウォータープラザへは、どの停留所で下車してもそれなりに距離がある点です。
そのため、夜の水と空気のスペクタクルショー『アオと夜の虹のパレード』を鑑賞するなら、人によってはやはりシニアカーや車いすでの移動が必要になるかもしれません。 また、当初高齢者向けに優先利用が案内されていた「パーソナルモビリティ」は、現在は福祉器具ではないという理由から、優先制度はなくなっています。
現在(2025年5月時点)は、決まった時間にその場へ行き、抽選に参加する方式です。体験としては面白いですが、移動手段としてアテにするのは難しいので注意しましょう。
【シニア万博3カ条】その2. 事前予約が鍵。高齢者におすすめは?
さて、「どこを事前予約するか」ですが、筆者のおすすめは約1900人収容のEXPOホールのイベントです。EXPOホールは、座席のブロックごとに申し込みができるため、ブロックを変えて第5希望まですべてイベントを設定し、抽選に参加できます。「1時間屋内で座って鑑賞できるイベント」が確保できるだけで、当日の不安がぐっと減るはずです。

訪れた日はイギリスのナショナルデー。EXPOホールでは「プラネット・アースIII ライブ・イン・コンサート」という、イギリスBBCの大自然を舞台にした映像にオーケストラの生演奏という本当に素晴らしいプログラムが開催された。イベント内容を見て訪問日を決めるのもいい
そこでおすすめなのは、30分程度でコンパクトに見学できるパビリオン、あるいは座って鑑賞できるパビリオンです。抽選や先着予約の対象となっている中で、筆者がシニアにおすすめだと感じるのは以下の3つです。
オーストラリア
熱帯雨林を再現した部屋を抜けるとダイナミックな迫力ある映像が楽しめるオーストラリアパビリオン。外のステージではさまざまなイベントも開催。 タイ
鏡で立体的に見せる建物に感動するタイパリビオン。ホスピタリティあふれる陽気なスタッフに元気をもらい、最後にテイクアウト専門のレストランも。ここは提供が早く昼食兼ねてもおすすめ。天気のいい日ならパビリオン沿いに多数のベンチあり。 ブルーオーシャン・ドーム
建築家、坂茂氏設計の3つのドームのパビリオンが見事! 映像は座って鑑賞できる。環境や海洋汚染問題を考えるきっかけに。 ほかにも、比較的並ぶ時間が短く、無理なく高齢者も楽しめるパビリオンとして、筆者がおすすめするのはマレーシア、アラブ首長国連邦、インドネシアなどです。ステージがある海外パビリオンは、中に入らずとも雰囲気を楽しむことができ、こちらもおすすめです。
【シニア万博3カ条】その3. 疲れや天候で臨機応変に。熱中症に注意を
筆者が訪れた日は5月にもかかわらず蒸し暑く、最高気温は29度! 熱中症の心配があったため、定期的に水分補給とトイレ休憩を取りながら見学しました。それでも、夕方には風が強まり肌寒く感じるほどでした。万博会場では、体温調整がしやすい重ね着スタイルがおすすめです。ウィンドブレーカーなど、上着を一枚持っていくとより安心でしょう。 筆者はリュックに、両親の分と合わせて3人分のペットボトルや塩飴、昼食、おやつなどを入れました。さらに、余分な荷物は会場内の東西ゲート近くにあるヤマト運輸に預け、両親のサポートができるよう身軽になって臨みました。
ヤマト運輸のサービスは、夜9時までに引き取る必要がありますが、コインロッカーとは違い、例えば「寒くなったら途中で上着だけ取り出す」といった使い方もできて非常に便利です。 シニアカーのレンタルを断念するなど想定外のこともありましたが、結果として「e Mover」で歩数を抑えつつ万博会場をぐるっと巡り、事前予約していた素晴らしいイベントを鑑賞できました。さらに、人の少ないフューチャーライフゾーンでゆっくりランチも楽しめました。
両親の希望だった「海外の雰囲気を感じたい」や「大屋根リングに登ってみたい」という願いもかなえることができ、少しは親孝行ができたかなと思っています。 今回は暑さで大変でしたが、雨の日の万博も注意が必要です。屋根のある場所に人が集中するため、体感の混雑度や不快指数が上がり、できれば避けたいところです。
事前予約状況にもよりますが、別の日程への変更も検討するといいでしょう(予約日を過ぎた後でも3回まで変更可能です)。もし日程がずらせない場合は、休憩を兼ねられる屋内のイベントやパビリオンを事前に予約したり、予約制の食事会場を利用するなど、屋内で座って過ごせる時間を確保しておくと、同行者も気持ちが楽になります。
シニアの方の中には、身体障害者手帳をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。その場合、ご本人と同行者1名を含めて2名まで、特別割引券(大人3700円)を購入できます。
東西のゲートには優先入場レーンが設けられていますが、予約した時間以降に入場可能となるルールは一般の方と同じです(常識的な範囲で、特別割引券以外の同行者も一緒に入場できます。5月末現在)
海外パビリオンの中には優先レーンを設けているところもありますが、対応はそれぞれ異なり、混雑状況によっても変わるようです。希望の際はスタッフに確認するといいでしょう。 チケットの手配については、万博IDが1つあれば、チケット購入や事前の抽選・先着予約なども複数名分行えます。そのため、高齢の方を連れて行く場合は、慣れた方(お子さんなど)がゲート入場やパビリオン予約などを済ませておくとスムーズです。QRコードを印刷して持参するとよいでしょう。
予約手続きの詳細は以下の記事も参考になさってください。ただし、3日前先着予約の際には、現在(2025年5月時点)サイトへの接続に1時間前後待つことが多いようです。万博の状況は日々変わる点にご留意ください。
※混雑回避・パビリオン予約のポイント