
電車内で大きなスピーカーから大音量で音楽を流すせんぷうさん(画像中央)。動画は現在は削除済み ※画像出典:せんぷうさんのTikTok(senpu__chan)より(All About編集部で一部加工)
この動画に対してSNSのユーザーから「迷惑」「見てて腹が立ちます」「マナー違反では?」「大きな音でパニックになってしまう人もいそう」など、さまざまな声が寄せられています。
電車内で大音量で音楽を流す行為がどのような罪に問われるのか、法的観点から弁護士である筆者が解説します。
電車内で音楽を流したり、音楽を流しながら駅構内を歩いたり……
動画を投稿したのはせんぷう(senpu__chan)さん。TikTokのフォロワー数は8万人を超えています。物議をかもしているのは2025年5月8日(木)に投稿された動画(現在は削除済み)。電車内でキャスター付きの大きなスピーカーからアップテンポの音楽を流してダンスしたり、駅構内を音楽を流しながら歩いたりする動画は計3本投稿されていました。
迷惑行為にあたるかどうか
迷惑行為を規定するものとしては、都道府県が定める「迷惑行為防止条例」があります。しかし、迷惑行為防止条例で規制されている行為は主に、痴漢、盗撮、ダフヤ行為、暴走族、つきまといなどで、電車内で騒音を出す行為は、本条例上の「迷惑行為」には含まれないと考えられます。しかしながら、条例上の迷惑行為にあたらないとはいえ、電車内で大音量で音楽を流す行為が迷惑であることは間違いありません。
どのような罰則があるか
電車内で許可なく大きな音を流す行為の罰則について考えられるものは、軽犯罪法第1条5号、または同条31号、刑法234条の威力業務妨害罪です。軽犯罪法第1条5号では公共の乗り物の中で乗客に対して著しく粗野、または乱暴な言動で迷惑をかけた者とあります。スピーカーから大音量で音楽を流す行為が、「著しく粗野」にあたる可能性があります。
また、同条31号では他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者としています。いずれかの場合が該当すると判断された場合には拘留や科料(またはその両方)の罰則があります。しかし、軽犯罪法で立件される事例は極めて少ないというのが実情です。
さらに刑法234条の威力業務妨害罪が考えられます。
「威力」とは、人の意思を制圧する勢力のことをいいますが、電車内で大音量で音楽を流す行為は、よほど閑散としていたなどの事情がない限り「威力」にあたるといえるでしょう。また、大音量で音楽を流して電車の運行に支障が出なかったとしても、運行を妨害するおそれが生じたので、「妨害」にあたります。
威力業務妨害罪となった場合の罰則は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
電車内で迷惑行為を目撃したときは
もしもこのような電車内での迷惑行為を目撃した場合には、自身で注意する方法も考えられますが、さらなるトラブルに発展する可能性も考慮する必要があります。迷惑行為をしている本人に加え、撮影者などの協力者がいることも考えられるからです。電車内であれば、鉄道会社の従業員、場合によっては警察への通報など、第三者の協力を得る方法で対応することをおすすめします。