脳科学・脳の健康

脳科学で解説! 仕事帰りに「牛丼が無性に食べたくなる」理由とドーパミンの関係

【脳科学者が解説】食べ物のおいしさの感じ方は、本来の味だけでなく「脳内でのドーパミン分泌」によって大きく変わります。仕事帰りに、なぜ無性に牛丼やラーメンが食べたくなるのか、脳科学の視点から分かりやすく解説します。

阿部 和穂

阿部 和穂

脳科学・医薬 ガイド

東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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Q. 仕事帰りの「牛丼」の誘惑に勝てません。夜は空腹感が強くなるのでしょうか?

牛丼

仕事帰り、「牛丼」の誘惑に勝てない……実はドーパミンも関係?


Q. 「仕事帰り、無性に牛丼やラーメンが食べたくなって、いつも寄り道してしまいます。ランチで食べるとき以上に、格別においしく感じて、どうしても誘惑に勝てません。昼間と夜とで空腹感が変わるのでしょうか?」
 

A. 仕事から解放された後の「ドーパミン」が影響しています

食べ物の「おいしさ」は、食材そのものの「味」だけでなく、環境や気分などさまざまなプラスまたはマイナスの要素が加わって、脳が総合的に判断します。ですから、自分がおいしいと思うものを他の人も同じようにおいしく感じるとは限りませんし、同じ人でも状況によっておいしさの感じ方は変わります。

「おいしさ」のカギを握るのは、脳内の神経伝達物質の一つである「ドーパミン」です。脳内でドーパミンが多く分泌されると、快感の一種として「おいしい」という気持ちが生まれます。みなさんが何かを食べておいしいと感じているときは、脳内でドーパミンがたくさん分泌されていますし、逆に言えば、ドーパミンがたくさん分泌されるほど、おいしさは増すのです。

多くの人は、仕事をしているときはさまざまな形で気を遣っていると思います。仕事相手や職場の人間関係で失礼がないよう注意し、理性的に振る舞うものです。これは、理性をつかさどる脳領域の「前頭前野」がはたらき、本能的な感情を担う「大脳辺縁系」にブレーキをかけている状態です。大脳辺縁系がブレーキをかけられているときは、ドーパミンの分泌や反応も抑えられます。そのため、忙しい仕事中の食事では、あまりおいしさを感じにくいものです。

一方、仕事帰りは、1日の業務のストレスから解放され、前頭前野のブレーキが外れている状態です。このタイミングで好きなものを食べることを考えたり、実際に食べたりすると、ドーパミンはフルに分泌されます。

また、多くの人と関わった後、一人で気軽にサッと食べられる牛丼は、人に気を遣った後の食事にぴったりとも言えます。誰に気を遣うこともなく、自分が食べたいものを食べに行こうと思った時点で、入店前から期待感がドーパミンを分泌します。気を遣わない環境で牛丼を食べ、入店前の期待が満たされれば、さらに多くのドーパミンが分泌されます。

牛丼に限らず、ラーメンやカレー、ビールなど「自分にとっての気軽なお気に入りメニュー」は誰にでもあるでしょう。誰にも気を遣わずに楽しむ安くておいしいものは、脳にとっても最高のごほうびなのです。
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