
医療で使われる「ショック状態」が意味することは?
連日の猛暑で「熱中症による死亡」、夏のレジャーで「ハチに刺され死亡」といった報道を目にすることがあります。これらの多くは、心停止の前に「ショック状態」に陥っていた可能性が考えられます。事件・事故のニュースでも「出血によるショック」という言葉を聞くことがあるでしょう。「ショック状態」とは単なる驚きではなく、命に直結する危険な全身反応のことです。一般的な意味と、医療現場での意味が異なるため、戸惑う方もいらっしゃるようですので、ここでは医療現場で使われる「ショック」という言葉の正しい意味と、その仕組みを解説します。
意味が異なる? 一般的な「ショック」と医学的な意味の「ショック」
一般的に使われる「ショック」という言葉は、英語のshockに由来し、激しい物理的衝撃や精神的な打撃を意味します。例えば、自動車事故でぶつかった衝撃や、予期していなかった悪いことが起きたときの驚きや動揺です。また、個人のレベルではなく、社会的な打撃や突然の変化に対しても、「オイルショック」「リーマンショック」といった表現が使われることがあります。一方で、医学的な場面で「ショック」という言葉が使われるときは、意味が異なります。病院などで「ショック状態」という場合、漠然とした衝撃や打撃ではなく、血液循環が不十分になり、さまざまな臓器が酸素不足に陥っている危険な状態を指します。
医学的な「ショック状態」の原因と危険性
医学的ショックが起こる原因は、具体的には、低血圧、急性心不全、外傷による大量出血、敗血症などの重い感染症などです。ショック状態になると血液が全身に十分行き渡らなくなるため、放置すれば死亡リスクがある危険な状態です。
「ショックの5P」とは……顔面蒼白・虚脱・冷汗・無脈・呼吸不全
ショックに伴う症状は多くありますが、特徴的な5つの症状をまとめて「ショックの5P」と呼ぶこともあります。- 顔面蒼白(pallor)
- 虚脱(prostration)
- 冷汗(perspiration)
- 無脈または脈拍不触(pulseless)
- 呼吸不全(pulmonary insufficiency)