新しい組織・キャリア論を探求する、安斎勇樹さんの著書「冒険する組織のつくりかた──「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法」では、形骸化した会議の問題点と、チームを活性化させるミーティングのデザイン方法を解説しています。
今回は本書から一部抜粋し、定例ミーティングの質を劇的に改善する「2つの流れ」の見直し方と、「流れのいいミーティング」を実現するための具体的な7つのコツについて紹介します。
<目次>
会議のムダは「2つの流れ」の見直しで解消!
定例ミーティングの質が低い企業には共通点があります。それは会議の「流れ」がよくないということです。
ここで言う「流れ」には、「1つのミーティング内における時間の使い方(ミクロな流れ)」と、1週間・1カ月・1年など一定サイクルにおける「複数のミーティング同士の配置 (マクロな流れ)」という両方の意味があります。
この「2つの流れ」を整えることが、定例ミーティングの質を高めるときの基本です。
まずは1つの会議における「ミクロな流れ」について解説していきましょう。
たとえば、1時間のミーティングの冒頭にアジェンダを提示し、あとは成り行き任せで議論するだけだと、どうしても会議の流れが安定しません。
ガチガチに枠を決める必要はありませんが、なにについてどんな順序でどれくらい議論するのかの「大まかな時間割」を決めておけば、だれがファシリテーションを担当しても、ミーティングの質を一定以上に保つことができます。
「流れのいい会議」を作る7つの秘訣
次の7つのコツを意識しながら、「流れのいいミーティング」を設計していきましょう。①開始時に目的をしっかり共有する
前回に話し合った内容やその目的が曖昧なまま開始してしまうと、参加メンバーもどんな意識で臨めばいいのか迷ってしまいます。前回の議論やミーティングの狙いを冒頭で確認して、「なんのための会議なのか?」「共通のゴールはどこにあるのか?」のすり合わせを行います。
②ちょっとしたアイスブレイクを入れる
ミーティングの開始直後は、参加者の意識モードがまだ切り替わっておらず、直前までの作業や打ち合わせをつい気にしてしまうものです。いきなり本題に入るのではなく、軽いアイスブレイクを挟むようにしましょう。
週初めの定例などでは、ちょっとした近況報告やその日の気分などを全員にひと言ずつ話してもらう「チェックイン」もおすすめです。
これだけで発言のハードルが下がり、自由に意見が出しやすくなります。
③問いかけを工夫して意見を引き出す
ファシリテーターから「なにか意見ありますか?」「自由に話してください」などと曖昧な問いかけをされると、参加メンバーはなにを言えばいいのか迷ってしまいます。人はある程度の「制約」があるほうが考えたり、話したりしやすいものです。
「このアイデア、どうですか?」ではなく「このアイデアは100点満点中だと何点ですか?」とするなど、みんなの答えが出やすい問いかけを意識してみましょう。
④インプットでアイデアを刺激する
ミーティングの冒頭でアジェンダに関連した事例(自社・他社・海外など)を手短に提示するなど、ある程度のインプット刺激があったほうが、メンバーからは創造的なアイデアが活発に出やすくなります。インプットが長くなりすぎるのは避けたほうがいいので、分量があまりに多いときには、会議前に資料を共有するなどしておくこと。
⑤議事録の工夫で、場を活性化する
議事録にも工夫の余地があります。オンライン会議であれば議事録をリアルタイムで画面共有しながら、話し合いをするようにしましょう(リアル会議の場合は、ホワイトボードで代替)。
自分の意見が共通の場に可視化されることで、会議へのコミット感が高まりますし、論点もズレにくくなる効果が期待できます。
もしイラストや図解が得意なメンバーがいる場合は、グラフィックレコーディングなどを使って議事録をビジュアル化するのもおすすめです。
⑥あらかじめ役割・期待を付与する
とくに役割を決めないまま会議に臨むと、どうしても年長者や社歴の長い人、役職者などに発言が偏りがちになります。幅広いメンバーにもミーティングに積極的に関わってもらうためには、たとえば若手にファシリテーター役をお願いするなどの工夫が必要になります。
また、ふだんあまり発言しない人に対しては、「◯◯業界を経験してきた立場から、この件について意見を聞いてみたいです」などと事前にリクエストを伝えておき、話す内容をじっくりと考えてもらうようにします。
⑦終了時に「まとめ」をしっかり確認する
決まったこと、決められなかったこと、次回に向けてどうするのかなどを最後にしっかりと確認します。会議→仕事の流れもよくなり、次のミーティングの質向上にもつながります。
安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)プロフィール
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO。1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。