特に入院や手術が必要になったり、治療期間が長引いたりした場合、思った以上に負担が大きくなり、家計を圧迫することもあります。そんなときに役立つのが「高額療養費制度」。
今回は、高額療養費制度の仕組みや申請方法について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
高額療養費制度とは?
医療費が高額になったときに、自己負担額を一定限度に抑えるための制度が「高額療養費制度」です。通常、健康保険に加入していれば、医療機関の窓口で支払う医療費は「3割負担(69歳以下の場合)」ですが、大きな病気や手術などで医療費が高額になった場合、その負担はとても大きくなります。そこで、高額療養費制度を使うと、あらかじめ決められた「自己負担限度額」を超えた分が、後から戻ってくる仕組みになっています。
自己負担限度額ってどれくらい?
自己負担限度額は、年齢と年収によって異なります。以下は、69歳以下の場合の例です。<69歳以下の高額療養費の自己負担上限額> 例えば年収500万円の人が大きな手術を受けて100万円かかった場合の窓口負担は30万円です。しかし、高額療養費を利用すれば、負担する医療費は自己負担限度額の約8万円だけ。後日、窓口負担の30万円から自己負担の上限額を差し引いた約22万円が、高額療養費として払い戻されます。
高額療養費制度の払い戻しには手続きが必要?
高額療養費制度の払い戻しの手続きは、以下のとおりとても簡単です。【手続きの流れ】
・手続き1:病院の窓口で医療費を支払う
・手続き2:後日、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・国民健康保険など)に申請
例えば、加入している健康保険が協会けんぽの場合は、「健康保険高額療養費支給申請書」と本人確認書類などを協会けんぽ支部に提出します。
・手続き3:審査後、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます
一般的に、申請後、払い戻しまで3カ月ほどかかります。
高額な医療費がかかると分かっているときは「限度額適用認定証」の手続きを
病気やケガで医療費がたくさんかかると分かっているとき、最初から支払う金額を自己負担限度額までに抑えるには次の2つの方法があります。①マイナ保険証を使う方法
マイナンバーカードを保険証として登録している方は、医療機関の窓口でマイナ保険証を出して、「限度額情報を確認します」と同意すればOKです。
※この方法を使うには、病院側が「オンライン資格確認」という仕組みを導入している必要があります。
②限度額適用認定証を使う方法
もし病院側がオンライン資格確認に対応していなかったり、医療費負担者のマイナンバーの登録が済んでいなかったりする場合は、「限度額適用認定証」を発行してもらいましょう。
この認定証を、健康保険証と一緒に医療機関の窓口で提出すれば、最初から支払う医療費を抑えられます。
限度額適用認定証の申請方法は加入する健康保険によって違います。健康保険組合はその窓口、協会けんぽは各都道府県支部、国民健康保険は市区町村窓口に確認してみましょう。
参照:健康保険限度額適用認定申請書 | 申請書 | 全国健康保険協会
高額療養費制度を利用するときの注意点
高額療養費制度を利用するときは、以下の点に注意しましょう。●注意点1:対象外の治療がある
入院時の食事代、差額ベッド代(個室料金)、または自由診療(先進医療など)は対象外です。
●注意点2:1カ月単位(1日~末日)で計算される
高額療養費制度では、「カレンダーの1日~末日まで」の医療費をまとめて1カ月単位で計算します。例えば、3月1日~3月31日の間にかかった医療費を合計して、その月の自己負担限度額と比べます。
別の月(例えば4月)の医療費とは合算できないので注意しましょう。
●注意点3:家族の医療費も合算できる場合がある(世帯合算)
同じ健康保険に加入している家族(例えば夫婦や親子)が同じ月にそれぞれ病院にかかった場合、窓口で支払った医療費の自己負担額を「合算」して、まとめて高額療養費制度の対象にできます。その合算した額が自己負担限度額を超えた場合に、超えた額が払い戻されます。
つまり、高額療養費制度は、一人ひとりの医療費はそこまで高くなくても、家族全体で見たときに自己負担限度額を超える場合、家計を助ける効果もあります。
高額療養費制度は知っているだけで安心できる制度
高額療養費制度は、万が一の高額医療費にも備えられる、大切な公的サポート制度です。いざというときに慌てないためにも、制度の存在だけでも頭に入れておきましょう。参照:高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会