人間関係

脳が半世紀アップデートされない母との確執。「親子なら分かり合える」という親戚にもイラッ

12年ぶりに実家に戻り、母と暮らし始めた40歳女性。部屋は散らかし放題、事あるごとに説教を始める母との生活は驚くことばかりだ。だが、友人や親戚に愚痴っても理解してもらえない。「親子だから大丈夫」なんてことがあるわけがないのに。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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親子にだって分かり合えないことがあるのは当然だ

親子にだって分かり合えないことがあるのは当然だ

人は気軽に言う。「親子なんだから分かり合えるわよ」「大丈夫よ」と。だが、親子だからこそ分かり合えないこともあるし、分かりたくないこともある。場合によっては親子ほど、「近くて遠すぎる関係」だったりもする。

頑固さと口うるささが加速していく母

「母の場合、前から頑固だし、私を支配したがっているところはありました。それが老化もあってか加速している。正直な話、介護が必要になったのならまだ対処できるような気がするんです。軽度認知症ではないかと疑っているんですが、病院に連れていこうとすると激怒して拒否。『あんたは私をボケ老人扱いする』と言っています」

困ったようにそう言うサイコさん(40歳)。母親は70歳になったばかり。もともとの性格がより強化されただけで、認知症っぽさはない。記憶もきちんとしているし、何かができなくなったわけでもない。

「もともと人を悪く言うことが多い人ですが、最近は近所の人に会っても『あの人、一気に老けたわね』って。いや、自分だって老けてるだろと思うわけです。自分のことを棚に上げて他人の悪口を言うのが、私としては我慢できなくて」

3年前に父が亡くなったため、1人暮らししていたサイコさんが実家に戻った。母と暮らすのは12年ぶりだった。20代後半から1人で暮らし、仕事をしながら自分らしく生活してきたサイコさんにとって、母との生活は驚くことばかりだった。

母の散らかし方にうんざり

「父は家事を積極的にやる人で、母は父に頼り切っていたんですね。私が家を出て、その後、弟が独立して夫婦2人暮らしになったら、母はさらに家事をしなくなり、定年になった父がほとんどしていたようです。料理くらいはしていたと言うけど、母は今も、自分ではほとんどしませんから、父が生きている時もしていなかったんじゃないかと思います」

介護が必要なわけではないのに家事もサイコさんに任せきり。サイコさんはもともときれい好きで、1人暮らしの部屋でも頻繁に掃除をしていた。実家に戻ってからは、母の散らかし方にうんざりしている。

「ゴミの日にゴミを捨てないからたまっていく。分別ができない。ほこりも気にしない。出したものは片づけない。ないない尽くしです。よくこんな部屋で暮らしていられるねというと、あんたは神経質すぎる。だから結婚できないと言い始める」

そこで言い争いが勃発するのが日常となっている。

半世紀前の感覚で説教しないで

「母は私の仕事の話も聞きたがる。どうせ分からないだろうから、かいつまんで話しながらうっかり愚痴めいたことを言おうものなら、急に『仕事というのはね』と説教を始める。でも母が仕事をしていたのは50年も前の話。10年前とだってコンプラが今とはまったく異なるのに半世紀前のことを言われても聞く気にはなれません。今とは違うの一言で片づけるしかないんです。聞いても無駄だから」

そうすると母は、「人の根っこは変わらない」と言う。単なる自己正当化でしょとサイコさんが言うと「あんたは後輩に慕われないだろうね」と決めつける。サイコさんは会話を辞めたいだけなのだ。

「半世紀、まったくアップデートされていない脳なんだろうと思うんです。それを言うと母は激怒するけど……。私も意地の悪いことを言っているのは分かっているけど、認知症ではないと本人が言うなら、少しは世間を勉強してほしい。それもせずに今の時代に生きている私を否定しないでほしいということなんですよね」

友人や親戚に愚痴っても

たまに友人や親戚に会って愚痴ると、みんなは言うのだ。「大丈夫、親子なんだから」と。「親子だから大丈夫ではない」とサイコさんは思っているのだが、誰も真剣には受け止めてくれない。

「私がイラついているのは、この年で1人でいるからなんじゃないのと言った親戚もいます。一緒に暮らしていない人は母の実態が分からないから、私が独身でいることや夫に先立たれた母の心理などに、親子関係の溝の原因を見出そうとする。そういう短絡的な見方についても腹が立つんですよね」

誰も私のことを分かってくれないなどと甘えたことを言うつもりはないと、サイコさんは言う。それでも、このままだと母と自分の関係はもっと悲惨なことになりそうだという不安はある。

「このままじゃいけないんだけど、何からどう手をつけたらいいかも分からない。単なる母子不和だと客観的には思われるでしょうしね」

そう言って、サイコさんは深いため息をついた。

「こんなことなら1人暮らしを続ければよかった。なんとなく情にほだされて実家に戻ったのが運の尽きなのかもしれません」

親が元気なうちは同居しないほうがいい。彼女は悟ったようにそう言った。
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