なぜ『イカゲーム』シーズン2は賛否両論なのか。映画ライターがシーズン1と徹底比較して“理由”を探る

Netflixにて2021年9月から配信がスタートした韓国ドラマ『イカゲーム』は、世界中で大ヒット！ シーズン2も配信され、2025年6月27日からはシーズン3が世界独占配信されます。ただ、シーズン2は賛否両論が巻き起こっているようで……。映画ライターの筆者がシーズン1と比較しながらその理由を探ってみます。
   

韓国ドラマ『イカゲーム』シーズン1が大ヒットした理由 

2021年9月から配信スタートした『イカゲーム』（シーズン1）はNetflix史上最大のヒットシリーズ。
 
借金まみれでお金の必要な人たちが集められ、賞金を賭けてデスゲームに挑む物語で、ゲームは子どもの遊びをもとに作られています。タイトルにもなっている “イカゲーム”は、イカの形をしたフィールドの中で行われる陣地取りゲーム。シーズン1では最終ゲームとして登場します。
 
そのほかに「だるまさんがころんだ」（動いたら射殺）「型抜き」（お菓子に描かれた模様の型抜きに失敗したら射殺）「綱引き」（団体戦。負けチームは即死）など、素朴なゲームが残酷な殺人ゲームに変わってしまうというアイデアとスリルが世界中の人々を惹きつけました。
 
ちなみに、シーズン1は、アメリカの第74回エミー賞で監督賞（ファン・ドンヒョク）、主演男優賞（イ・ジョンジェ）などを受賞。韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が第92回アカデミー賞で作品賞など4冠に輝きましたが、配信ドラマでも、韓国エンターテインメントのパワーをこれでもかと見せつけました。

※参考記事
世界を席巻する『イカゲーム』はなぜヒットしたのか。紐解くカギはゲーム参加者の“人間ドラマ”にあり！
 

『イカゲーム』シーズン2とは

そして満を持して登場した『イカゲーム』シーズン2。シーズン1を見た人ならば分かるはずですが、シーズン1はシーズン2を示唆する終わり方をしており、予想通り、デスゲームを生き延びたソン・ギフン（イ・ジョンジェ）が再びゲームに挑みます。
 
ただ参加する理由がシーズン1とは大きく異なります。シーズン1では病気の母のために高額賞金を求めてゲームに参加しますが、シーズン2では、このゲームのフロントマンを突き止めるという目的に変わるのです。　
 
では『イカゲーム』シーズン2のストーリーをご紹介しましょう。
 

『イカゲーム』シーズン2のストーリー

3年前、死のゲームで優勝したソン・ギフン（イ・ジョンジェ）は、まだ残酷なゲームが続いていることを知り「終わらせなければ」と、ゲーム参加者をスカウトするめんこ男（コン・ユ）を見つけ出し、再びゲームに参加することに。
 
高額賞金を狙っている参加者たちは、失敗したら即死のデスゲームであることを知らず、知っているのは経験者のギフンだけ。彼は死のゲームだと叫ぶけれど、第1ゲームは始まってしまい、再び犠牲者が……。
 

『イカゲーム』シーズン2の主な登場人物 

ソン・ギフン（イ・ジョンジェ） 『イカゲーム』の主人公。デスゲームを生き抜いた唯一の体験者として参戦。ゲームの実行者を追いつめて死のゲームを終わらせようとする。

ジュニ（チョ・ユリ） だまされてゲームに参加することになった女性。体にある秘密を抱えたまま参加している。

ミョンギ（イム・シワン） ジュニの元恋人。暗号通貨投資に失敗した元インフルエンサー。彼のせいで損害を負った人たちを無視して逃亡し、ゲームに参加した。

ヨンシク（ヤン・ドングン）
ギャンブル依存症で、多額の借金で首が回らなくなり、ゲームに参加することに。 クムジャ（カン・エシム）
ヨンシクの借金を返すためにゲームに参加したヨンシクの母。母と子、それぞれ同じゲームに参加していることを知らず会場で会い、協力することに。

チョンベ（イ・ソファン） ギフンの友人であり、かつてのギャンブル仲間。友達思いの優しい性格。

サノス（チェ・スンヒョン） 人気ラッパー。ミョンギの暗号通貨投資の犠牲になり、財産を失ったと彼を憎んでいる。知名度を武器に仲間を増やしていくずる賢い性格。

チョ・ヒョンジュ（パク・ソンフン） 体は男性だけれど心は女性のトランスジェンダー。タイで性別適合手術を受けるために大金が必要になり、ゲームに参加した。ギフンやチョンベと交流を持つようになる。
 
フロントマン／イノ（イ・ビョンホン） シーズン1では、運営側のボスとして仮面をつけて登場し、最後に正体を明かしたが、シーズン2では序盤から素顔で登場。シーズン1の最後「観戦するより参加したほうが面白い」と語りながら息を引き取ったゲームのオーナー、オ・イルナムと同じように、シーズン2では偽名でゲームに参戦。

ジュノ（ウィ・ハジュン） 失踪した兄（イノ）を探す弟。ギフンと協力してゲームの開催地を見つけ出そうとする。

めんこ男／スカウトマン（コン・ユ） シーズン1から登場。ゲームに参加する人物をスカウトする謎の男。シーズン2ではギフンと命懸けの対決をする。
 

シーズン2でギフンたちが挑むゲーム 

第1ゲーム：「だるまさんがころんだ」 シーズン1でも最初に登場したゲーム。鬼（巨大なヨンヒ人形）が「だるまさんがころんだ」と言っている間に移動し言い終わるころを見計らって止まる。鬼が振り向いたときに動いていると射殺されてしまいます。
 
第2ゲーム：「5人6脚 近代五種ゲーム」
5人が1組になり足首をしばってつないで5人6脚で進み、韓国の子どもの遊び5つを制限時間内にすべてクリアしてゴールすればOK。ゴールできないと射殺されます。
 
5つのゲームは「めんこ」「碑石打ち（ある一定の距離から石を投げて相手の碑石を倒すゲーム）」「コンギ遊び（おはじきを投げて手の甲に乗せるゲーム）」「コマ回し」「チェギ蹴り（羽のオモチャをリフティングするゲーム）」。チーム内の1人が挑戦。クリアすれば次のゲームのポジションに5人6脚で進むというルール。
 
第3ゲーム：「マッチゲーム」
回転木馬がセットされた巨大な円の台座上に全員が乗り、スタートともに台座が回転。制限時間内に指示された人数の仲間と一緒に会場内の小部屋に隠れてドアを閉めたらOK。制限時間が来ても小部屋に入れなかった人は射殺されます。
 
シーズン2のゲームはこの3つ。それ以外にゲームを続けるか否かを参加者それぞれが〇と×で決める投票制を導入。×が過半数に達すればデスゲームから逃れられるのですが、参加者はほとんど多額の借金を負っているので戻っても地獄……。一か八か死のゲームに賭けようとする人が意外と多いのです。
 

賛否両論の理由とは？

『イカゲーム』はシーズン1も人気がありますが、シーズン1ほどの熱狂はなく、賛否両論あるようです。そこでシーズン1にあってシーズン2にないものとその逆を考察してみました。
 
【シーズン1にあってシーズン2にないもの：ゲームの面白さを堪能できない】
シーズン1はゲームが6つあったのですが、シーズン2は3つ。しかも「だるまさんがころんだ」はシーズン1と同じゲームです。つまり新しいゲームは2つしかなく、子ども遊びを残酷な死のゲームにしてしまう『イカゲーム』の斬新なアイデアを期待していた視聴者はがっかりしたのでは？ 筆者も同じ気持ちになりました。 【シーズン1にあってシーズン2にないもの：ギフンの変化が見られない】
シーズン1のギフンは家族思いの一面はあるものの最初はダメ男だったのですが、ゲームに参加し、生死の境目で生きるうちに、これまでの自分の甘さに気付き、人との交流で情を強く持つようになるなど、心に大きな変化が見られるようになります。

しかし、シーズン2では「ゲームの実行者を探し、終わらせる」という使命感から変化することはありません。もう少し信念が揺らぐなど、アップダウンがあれば……と個人的には思いました。
 
ただ、シーズン2にあって、シーズン1にない面白さもあるのです！
 
【シーズン2にあってシーズン1にないもの：めんこ男との対決】
シーズン2は、シーズン1よりもめんこ男がクローズアップされています。彼が参加者を募るゲームがいくつか描かれ、めんこ男の残酷さをこれでもかと見せてくれるのです。その姿はまさに狂気！

ギフンはめんこ男を突き止めて対決することになるのですが、ギフンVSめんこ男はシーズン2前半の見せ場です！ 【シーズン2にあってシーズン1にないもの：フロントマンがゲームに参加している】
ギフンが突き止めようとしているフロントマンがゲームに参加し、ギフンたちと仲間になるというのがこのドラマをより面白くしています。シーズン1でフロントマンとギフンは対峙（たいじ）していますが、顔バレしないようにしていたので、ギフンは目の前の男が自分の探している人物だと気付かないのです。
 
ただシーズン1で、ギフンはフロントマンの肉声は聞いているんですよね。少しでも「この声、聞いたことがある」と気付いてくれたら、もっと面白くなったのではないかと思いました。
 

シーズン2はシーズン3への序章？ 

Netflixは『イカゲーム』シーズン3を2025年6月27日（金）より世界配信をすると発表しています。
 
シーズン2、全7話を見ると分かるのですが、ラストは完全に「シーズン3、あります！」という終わり方なので、2025年にシーズン3が配信されるのはありがたい！ しかもシーズン3は『イカゲーム』ファイナルとなります。

つまり、シーズン2は、シーズン3へのつなぎであるということ。シーズン1はさまざまな残酷なゲームで視聴者にスリルを体感させ、シーズン2では主人公のギフンを運営側により近づけることで、最終シーズンの戦いへとつなげようとしていたことが分かります。シーズン2でゲームを物語のメインに据えなかったのは、フロントマンVSギフンの戦いを強化させる目的があったのかなと。
 
ちなみにシーズン2のサイドストーリーとして、フロントマンであるイノの弟ジュノが、イカゲームの開催場所を探すというエピソードがあります。協力者のギフンを見失ったり、裏切り者が現れたりして、突き止めるのに苦労しますが、シーズン3ではジュノが大きく動いてくる可能性も！
 
というわけで、『イカゲーム』シーズン3を楽しむためにも、シーズン1、2はぜひ見ていただきたい！ 『イカゲーム』の世界観と物語を把握しておけばシーズン3への準備はOK。きっとシーズン3も堪能できるはず。楽しみに待ちましょう！
 

『イカゲーム』シーズン1、シーズン2

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1～2：独占配信中、シーズン3：2025年6月27日（金）世界独占配信

監督・脚本・製作総指揮：ファン・ドンヒョク
出演：イ・ジョンジェ、イ・ビョンホン、イム・シワン、カン・ハヌル、ウィ・ハジュン、パク・ギュヨン、イ・ジヌク、パク・ソンフン、ヤン・ドングン、カン・エシム、イ・デヴィッド、チェ・スンヒョン、ノ・ジェウォン、チョ・ユリ、 ウォン・ジアン、イ・ソファン、コン・ユ
作品：Netflix『イカゲーム』公式Webサイト