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レッドオーシャンと化した午後入試
男子校では、2月1日午後の巣鴨中の算数選抜、世田谷学園中の算数特選、2月2日午後の高輪中の算数午後など、算数選抜入試が増加。女子校では、2月1日午後の品川女子学院中の算数1教科午後、普連土学園中の1日午後算数、山脇学園中の国・算1科午後、2月2日午後の香蘭女学校中の第2回などの入試が導入されました。
そして共学校では、広尾学園中、広尾学園小石川中、東京農大一中、三田国際学園中、安田学園中などが2月1日午後、2月2日午後入試を設置したことで、2月1日と2月2日の午後入試が一気に充実したわけです。
歴史をひも解けば、都内私立中学の入試解禁日は2月1日という取り決めがありました。そのため、筑波大附属中や東京学芸大附属中など国立中学校の入試は2月3日に行われています。そこに小石川中、桜修館中、白鷗中などの都立中受検が加わり、2月3日は私立中受験生と国公立中受験生が入り交じる入試日へと変化しました。
すると従来、2月に第2回入試、第3回入試を設置していた私立中の中から、入試問題を公立中受検タイプに変更して公立中受検生を取り込む入試を設置する学校(共立女子中の2月3日午後合科型入試など)も出現。
残っていた“ブルーオーシャン”ともいえる2月1日午後と2月2日午後を、新興共学校の広尾学園中や広尾学園小石川中、三田国際学園中などが埋める形となり、中学入試日程そのものも2月6日まで設定されるようになりました。
神奈川、千葉、埼玉の私立中入試もひしめき合う
この都内中学受験ムーブメントと連動する形で神奈川の私立中受験も存在しています。男子校では2月2日に聖光学院中、栄光学園中、2月3日に浅野中が、女子校では2月1日にフェリス女学院中、共学校では2月2日に慶應義塾湘南藤沢中、2月3日に横浜市立横浜サイエンスフロンティア中、県立相模原中などが入試を行います。
さらに、これに加えて1月入試を行う千葉御三家(渋谷幕張中・市川中・東邦大東邦中)と浦和明の星中のリベンジ入試が2月2~4日に設置されているのですから、昔では考えられないほどの混雑ぶりです。
英語力による加点方式を採用する学校も
そこに近年、看過できなくなっているのが英語力による加点方式です。特に注目度が高いのは、今年度から豊島岡女子学園中で導入された算数・英語資格入試。2022年度第1回以降の英検CSEスコアと英検級に応じて、英語のみなし得点(100~50点)と算数の得点の合計得点で合否を判定するという入試方式が始まりました。募集人員は若干名ですから、本当に英語力と算数力のある受験生のみを選抜する方針です。
このように見ていくと分かるように、まさに2月1~3日入試は血で血を洗うレッドオーシャンであることは間違いありません。
「二月の勝者」になるための必勝併願パターンとは
では、はたしてこのレッドオーシャンを乗り切る併願パターンはあるのか。筆者の経営する塾は千葉県柏市にあるため、生徒や保護者には「1月の第一志望校と2月の第一志望校の2つを選んでください」とセミナーや父母面談でお伝えしています。つまり、1月5日~の茨城入試、1月10日~の埼玉入試、1月20日~の千葉入試の学校から「1月の第一志望校」を、2月の東京入試から「2月の第一志望校」を選ぶように指導しているわけです。
筆者は毎年自塾のセミナーで、通学距離75分以内の志望校を日程別に、進学校か付属校か、入試問題の形式が記述式か短答式か、受験生の性格が強気か弱気か、そして志望校の偏差値帯が60・55・50のどれなのかによって48の併願パターンに類別した資料を配布しています。
これをもとに保護者や生徒本人がアレンジを加えた基本併願パターンを作ってもらい、さらに筆者が修正を加えて併願校を決定していきます。
しかし、横浜・川崎や東京都下にお住まいの方にとっては1月校が通学エリア外となるため、2月校のみで実質的な併願パターンを作る必要があり、これがすごく悩ましいわけです。
それに加えて今年はプチサンデーショックと呼ばれる特異年。2月2日が日曜日にあたるため、通常年ならば2月2日に入試を行う青山学院中などのミッション校が2月3日に入試を行うなどの変動が出る年なので、それも考慮しなければなりません。
偏差値に「10ポイント」の幅を持たせて
2月のダブルヘッダー受験では実質的なロスタイムとなる移動時間が体力と集中力を奪います。そのため、試験以外の時間では受験生をできるだけうまく弛緩(しかん)させて気分転換を図ること、親子ともども午前中の出来を午後に引きずらないようにすることを心がけましょう。また、2月の受験校の中だけで偏差値で10ポイントのアップダウンをつけた併願パターンを組んでおくことが大切です。
偏差値で10ポイントというとかなり差があると思われがちですが、四谷大塚の合不合判定テストの4科目の合計素点に換算すれば、65点程度の差にすぎません。つまり、500点満点のテストの65点ですから12%程度の差です。
大人であっても10%程度の得点のブレはありますから、緊張状態にある12歳の子どもがそれ以上にブレることはよくあります。だから偏差値差10ポイントを考慮した併願パターンが必要不可欠なのです。
模試の偏差値データ、模試の問題と答案、過去問の得点データと答案、最寄りの駅名、通学塾歴、得意分野・不得意分野などの情報があれば、かなり精緻な併願パターンが作成できます。
併願校を決定する際、模試の偏差値や合格可能性を最大の目安にする方は多いと思いますが、難関校に近づけば近づくほどかえって偏差値が当てにならなくなる例がありますので、偏差値だけを過信するのは禁物です。必ず過去問を解いてみて出題傾向との相性と得点率を確認してください。
ライバル校の過去問チェックも忘れずに
併願パターンの話ではありませんが、都内難関校を受験する場合は、そのライバル校の昨年度の過去問はチェックしておくことをおすすめします。なぜなら、入試問題の作成者はライバル校がどんな問題を出題しているのかをチェックしてから作問するからです。都内男子御三家を受験する生徒ならば、筑波大附属駒場中、開成中、麻布中、早稲田中、海城中、駒場東邦中、渋谷教育学園幕張中、渋谷教育学園渋谷中、聖光学院中、栄光学園中、灘中、甲陽学院中、東大寺学園中、ラ・サール学園中などの入試問題は要チェック。
女子御三家を受験する生徒ならば、桜蔭学園中、女子学院中、雙葉中、豊島岡女子学園中、吉祥女子中、鷗友学園女子中、渋谷教育学園幕張中、渋谷教育学園渋谷中、早稲田実業中(早実中)、早稲田大高等学院中(早高院中)、慶應義塾中等部、フェリス女学院中、神戸女学院中などの出題は見ておきましょう。
翌年の入試問題で類似した問題が出題される可能性があるのはオリジナリティの高い問題だけですから、これらの入試問題を全て解くわけではありません。あくまでも目新しい問題だけ(特に算数と理科)をチェックして、気になる問題だけを解いておきましょう。
その際に活躍するのが「銀本」ですので、最後の詰めに利用するのがおすすめです。「銀本」は日能研で使われている教材で、書店では『中学入試試験問題集』(みくに出版)として販売されています。算数編、国語編、社会編、理科編と科目別に分冊されていて、国語編は「女子・共学校 国語編」と「男子・共学校 国語編」の2種類があります。
最後になりますが、全ての受験生にとって悔いのない中学受験になるよう、心より祈念いたします!
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