「木を伐ること=環境破壊」は誤解
住友林業は木を専門に扱う企業として、地球環境や人々の暮らしに貢献するため、さまざまな課題に取り組んでいます。特に大きな問題となっている地球温暖化を抑えるための一つである「脱炭素」について、営業推進部の岡本陽一(オカモトヨウイチ)と、ソリューション営業部の鈴木俊一郎(スズキシュンイチロウ)がご説明します。
岡本「木はCO2を吸収して、炭素として内側に閉じ込める性質があり、炭素の固定化と呼ばれています。“木を伐って家を建てたら、環境破壊になるのでは?”という質問をよくいただきますが、必ずしもそうではありません。木は高齢化するとCO2の吸収量が落ちてしまうため、適切なタイミングで木を伐って活用し、新しい木を植えて、森を若返らせることが必要なのです」
日本の人工林は高齢化の傾向があり、CO2吸収量の低下を心配されているのが現状です。
岡本「住友林業はハウスメーカーとして家を建てるだけでなく、森林経営から木材建材の製造・流通、木質バイオマス発電まで木に関する事業をグローバルに展開しています。ウッドサイクルと名付けたこの事業活動によって、社会全体の脱炭素化を目指しています」
木造のCO2排出量は、鉄骨と比べて96%減に
世界の産業別のCO2排出量を比べてみると、建築に関わるものが非常に多く、全体の37%を占めているというデータが出ています。その中でも2つのシーンに分けられ、ひとつは「人が暮らすときに出されるもの」、そしてもうひとつは「建物を建てるときに排出されるもの」です。
鈴木「他の産業と比べても最大の比率であり、脱炭素のために建築業界の責任は非常に重いものと考えています。CO2排出の内訳は、暮らすときが全体の約70%、建てるときが約30%となっています」
岡本「暮らすときのCO2排出は、世間的にも関心が高いのではないでしょうか。ZEHや省エネ機器などが国から推奨され多くの補助金を受給できるため、各メーカーも努力してCO2の削減が可能な機器の採用に取り組んでいます」
一方で、建てるときのCO2排出は、木造を選択することで大きく減らすことができます。
岡本「例として、木造と鉄筋の住宅を比較してみましょう。
- 鉄骨造より木造の方が、建てるときのCO2排出量は60%削減となる。(※1)
- 木造住宅1戸を建てた場合、炭素固定量は杉の木に換算すると102本分で、36%のCO2削減効果がある。(※2・※3)
この2つの効果により、木造住宅は鉄骨住宅に比べ大幅にCO2を削減できることがわかります。実際に、この木造住宅のメリットは浸透しつつあり、ハウスメーカーが手掛ける住宅も徐々に木造のシェアが増えています」
鈴木「建てるときのCO2は、資材調達から輸送、施工、メンテナンス、解体、廃棄、リサイクルまで、建物の一生涯に関わるもの。炭素を固定できる木造住宅ならではの効果は、ぜひ注目していただきたいポイントです」
※1 延床262.70 ㎡で比較しOne Click LCAにより算出/60%削減の算定範囲:基礎・構造材/鉄骨住宅:重量鉄骨造
※2 樹木の伐採後に再植林をして、建物解体後には木材を焼却しない場合
※3 杉の木約102本分は、林野庁「森林資源現況調査」(令和4年)の全国累計を用いて算出
建築業界の責任を担うため、新しい事業にも着手
建てるときのCO2削減は、建てる方が木造住宅を選ぶことに加えて、ハウスメーカーや建設業界全体の努力と工夫なくして実現することはできません。
鈴木「脱炭素化に欠かせないのが、建物のCO2排出量を精緻に「見える化」するという作業です。住友林業では、新しい試みとして『One Click LCA』というソフトウェアを、日本単独代理店契約を締結し販売しています。
もともとはフィンランドの企業が開発したソフトで、建てるときのCO2を算定することができます。住友林業の事業としてはこれまでとはだいぶジャンルが違いますが、いずれ日本でも絶対に必要とされると確信し契約を結びました」
次のページでは、『One Click LCA』について詳しく見ていきましょう >>
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